■人の造りし乱数

この原稿は極少数の人たちとの約束を守るためと、
本人の好奇心を満たした上で、その考えをまとめるために書かれている。
つまり、完全に個人の自己満足ための記事である。

よって、万人にわかりやすい内容となるべく可能な限り努力する、
というこれまで密かに維持し続けて来た基本方針を今回は適用しない。
この点はご容赦願いたい。

そんな妙な記事の内容は、人間の作り出す“乱数のようなもの”についてである。



乱数は規則性の無い、よって未来予測が全く成立しない数の列、
といったものを指すのが普通だが、実は数学的な定義は簡単ではなく、
私の知る限りでは、未だに厳密な定義と判別法は成立していない。

例えば規則性のない数字が1000桁並んでいたとしても、
それだけで乱数と断定することは難しい。

実は1000桁ごとに同じ数字が並ぶ周期性を持った数列となっており、
その次の1000桁を見てみたら、まったく同じ数字が同じように並んでいた、
という可能性を誰も否定できないからだ。
1000桁ごととはいえ、同じ並びが繰り返される以上、
明らかな規則性を持ち、未来予測は成立する。
よって1000個目までの数字の列に規則性が無くても、これを乱数とする事はできない。

このように大きな量を伴う数の規則性を判断するのは極めて困難だ。
そんな大きな規則性は例外中の例外、と思うかもしれないが、
数学では無限という概念を取り込んでしまっているので、1000桁なんて問題にならないのだ。

ヘタをすると100万桁の周期性という可能性だってあるわけで、
そうなると周期性を確認するだけでも大仕事となってくる。
困ったことに、こういった事例は人間が扱うのが難しいだけで、理論的には十分ありえてしまう。

さらに「乱数のようなもの」が人為的に作れるか、という問題点もある。
デジタルコンピュータのプログラム上で造られた乱数は
ブラウン運動などの天然の乱数とは違い、妙に行儀がいい、という特徴がある。
とはいえ、その両者の違いを厳密に定義する事はこれまた困難だ。
なので、ある程度の定義を決めてそこで妥協するほか無い。
この点は後でまた述べる事になる。

で、そんな“乱数のようなもの”は、意外なところにも存在し、
意外に興味深い一面を見せたりする。
今回の話で触れる市場価格の変動率などもその一例であり、
それこそがこの原稿の主題となる。


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