■市場価格の乱数

需給関係によってのみ価格が決まる自由取引の市場を考えよう。

古典的な経済理論によると、
自由市場に出てきたルート・ビア 500mlリットルペットボトルは、
欲しい人が少なければ安い値しか付かないし、
欲しい人が多ければ、どんどんその価格は上昇する事になる。

つまり欲しい側の需要量と、その供給量、
この二つが吊りあう地点で価格が決定されるという事だ。
そして実際、自由市場の価格決定システムは、
そういったように造られている。

これは極めて単純明快な論理的過程であり、ここまでわかってるなら、
なんの問題も無く市場価格の未来予測もできるように思う。

が、現実の市場の未来価格はまず予測できない。
理由は簡単で、その価格を吊りあわせるはずの
需要と供給の具体的な量が基本的に予測できないからだ。

例えば1本しかないルートビアを社内でオークションにかけるとしよう。
この時、果たして何人のルートビア愛飲家が
社内にいるかを予測するのは困難だし、
本部長、あなたものですか、という感じに、
意外なライバルが次々と出て来る可能性もある。

さらにそこから本部長にこれを贈れば
次の有給を取りやすいでゲス、という
本来の目的とは違う需要が生まれ始めると、
投機的な値上がりを生む可能性も出てきてしまう。

かてて加えて供給側にも変化が出て、
実は2本ありました、とかになると、もはや収拾がつかないだろう。

自由に価格決定がされる市場価格の予測には
需給の量の正確な予測が不可欠だが、基本的にそれは不可能に近い。

特に実際には商品を必要としないはずの人間が、
ただ値上がりを見込んで投機的な購入で参入すると、
もはや打つ手が無い混乱が待っている事になる。
金や石油の商品市場、得にその先物市場、さらに外貨市場では常にこの問題がついて回る。



そんなわけで、市場価格は需要と供給で決まるのは事実だが、
そもそも需要と供給の量がはっきり予測できない。よってその明確な未来予測は困難だ。

となると、どうなるか。

乱れ乱れて、乱数の世界が登場する事になる。お待たせ、ようやく本題だ。
以後、自由市場の価格決定における、乱数的な要素について、少しだけ見ておこう。

なんで、というとそこにはとても興味深い世界が展開するからだ。
理由は、それ以上でも、それ以下でもない。


NEXT