■原点回帰2024

さて、年に一度のお絵かき絵のお話、すなわち原点回帰大作戦が誰に頼まれたワケでもないのに、今年もやって参りました。今回は絵の描き方についてちょっと触れて置こうかと思います。まあいろいろ思うところがあってなんですが、まずは「筆者はこうやって絵を描いている」というお話をしたいと思います。



昭和の時代、すなわちサムライが皆チョンマゲをしていた時代の子供向け雑誌には、漫画の登場人物の描き方講座がよく出ており、その内容は判で押したように皆同じでした。すなわち丸描いて十字を入れて、それを目安に目と鼻を書き込めば出来上がり、というもの。当時、穢れを知らぬ美少年(美の少ない年齢の男)だった筆者はこれを見て衝撃を受け、さっそく言われた通りに描いて見たのです。すると確かにそれっぽいものが描けました。おお、これは凄い、これでオレも明日から小学生漫画家だと思ったんですが、三日すると飽きてしまい、さらに致命的な欠陥に気がつきます。



すなわち正面から見たら確かにそれっぽい絵になるけど、横や下から見たら人外のステキ生命体になっちゃうじゃん、人間じゃない主人公は当時すでに居たけど、さすがにこれはダメだろう、と。ですが幾ら探してもそれに対する解決策を述べた漫画の登場人物の描き方は見つけることが出来ず、そして未だ見つけられないまま40年を超える月日が過ぎました。

まあ、そもそも「漫画の描き方」であって「絵の描き方」では無い、というのは確かなのです。漫画と言うのは「魅力的な登場人物=良くも悪くもこの先どうなるのか見届けたいと思わせる人物」、そして「この後どうなるのか気になってしかたねえ」という好奇心を刺激するお話があれば成立します(おススメは魅力的な謎を用意すること)。それ以外はオマケみたいなモノです(ただし成立はするけど完成はしない。魅力的な出だしだけで尻すぼみになる話は星の数だ。個人的には江戸川乱歩現象と呼んでいる)。とりあえずその二つさえあれば勝ったも同然であり、後は物語を伝える手段が絵だろうと記号だろうと、それこそアルファベット文字だろうとなんでも成立します(漫画では無いが同じような条件で成立させたのがビデオゲームのローグ)。

この点、文句を言う気はないのですが、以後、あまりにも長い間、同じような「漫画の登場人物の描き方」を見て来て、さらにこれを「絵の描き方」に置き換えちゃった例すら見かけて、既に20世紀末の段階で筆者はウンザリしておりました。当時はちょうどニンジャが日本から消えてしまった頃で、この絵の描き方もいいかげん終わりにしないのか、と思っていたのです。まあ、さすがに21世紀の令和の時代に丸に十文字で人物の絵を描かせようって人は居ないでしょうが。



だって人間の頭ってこういうモノが中に入ってるのよ。どうやったって丸に十字じゃ対応できるわけないじゃん。と気がついたのが筆者が高校生の頃。ちなみに今回はデッサンの練習でも生物学の授業でも無いので、一部適当な絵なのはご容赦。



こうして小学生時代の絶望から約5年掛かってようやく人の顔をそれっぽく描く方法を思いついたのでした。すなわち最初から立体的に破綻しない形状にまとめればいいのよ。ただし人体デッサンでも白骨化した被害者の似顔絵でもないのだから、頭蓋骨に肉付けする必要はない。土台になる構造物はもっと単純で可だ。すなわち円筒の上にフタを付け、目の辺りに少しヒサシを付け、さらに下部を斜めに切断すればいい。これを基に後はそれっぽい位置に目と鼻と口と毛髪を付けときゃ勝ちなのよ。厳密には頭部側面は円柱型ではなくやや平面にするけど、基本的な考え方はこれでよしでしょう。

まあ、当時はここまでキチンとは考えてませんし、今よりさらに下手ですが、とりあえず理屈的には今と同じ考え方で絵を描いてたわけです。ただし実際に描く場合はさすがに3の辺りから開始しますけどね。

ここでちょっと脱線。頭蓋骨を見るとこれがお面みたいな人間の顔になるとは思えん、と感じてしまいます。ところが実際は 眼窩(がんか)部、すなわち目玉が入っている部分と頬骨が正面方向に比較的広い平面部を作り出します(ただしアゴ周りは別。ここは上から見て逆コの字型になる)。この位置に目や鼻、そして口を詰め込むようにすれば、漫画っぽいながらそれなりに現実味のある顔が造れます。取り外しが可能な人は自分の頭蓋骨で確認してみると良く判るはず。それがダメでも今の時代、Webで3Dモデルの頭蓋骨をブン回す位はできますから、気になる人は探してみて下さい。

この辺り、天才級の絵の才能を持つ人は無意識にやってますが、私のような凡俗にそこまでは無理なのです。

さらに余談ですが、ゲームで3Dモデルのキャラクターを組む人たちはかなり早くから頭蓋骨が頭部構造描写の破綻防止に使えると気づいてました。私が知る限り最古の例としてナムコの格闘ゲーム、1994年発売の「鉄拳」があります。当時、開発者の皆さんにインタビューした時、モデル担当の人(ただし本人は出席して無かった)は頭蓋骨を造ってから人の顔を組み立てていた、と聞いてます。ああ、そういった使い方もあるのかと思った記憶が。この点、確か記事にも書いたはずですが、自分で編集した本を持っていないので確認できず。



当然、下から見るとこんな感じに。少なくとも人外の謎生命体の絵にはなりませぬ。ちなみにバイクのヘルメットでも土台になるかと思った事があるんですが、根本的に形状が異なり使い物になりませんでした。面倒でもそれっぽい形を中に入れて考えるのが吉。ついにで今回の絵を描いていて初めて気づいたんですが、エヴァンゲリオンの頭部、あれ中に頭蓋骨入ってる形状ですよね。そこにガンダムとツタンカーメンが来世で合体したみたいなヒゲ付けてるけど。



ただし私が絵を描く目的は「自分の中にある心地よい輝きに形を与え人に見せる」事なので、実際に絵にする場合、現実と見た目の良さを天秤に掛け、心地良いと感じられる方を優先します。それでもあらゆる角度からみて人外生命体にならない基本構造にはなっているはずです(鼻とか一部明らかにウソついてますけどね)。

後、人体の描写で一番難しいのが首から肩と脇の下というか腕の繋がりだと思うんですが、今回はお絵かき講座では無いので端折らせてもらいます。正直、私も人に説明できるほど、そこら辺をキチンと法則化出来てませんし。

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