■それでも海軍は考えた



「えーと、じゃあ航空機による着弾観測は、デビュー直後に絶望された?」

それに近い状況になるんだが、この段階では他に手がない。
そこで、アメリカ海軍も必死で考えた。
でもって、とりあえず解決策として、2機による観測にたどり着く。

「2機で観測すればどっちかは正解だろうって事?」

いや、測距儀と同じような原理で、目標艦と水柱の距離と方向を求める、ってやり方さ。
これなら、遠距離からでも、ある程度の観測ができる。
細かい計算や理屈は、これまで散々やってきたものの延長だから、
今回は、全体的な流れだけを見るよ。



ステップ1。
まず2機の観測機の距離を観測する。
各機が搭載してた1.5m測距儀を使ったと思うのだが、
正直、どうやってこの距離を出したかはよくわからん。
やり方はいくつかあるのだが、まあ、とりあえず距離がわかればいい。
で、以後はこの距離を常に維持するように飛行するのが理想。
が、そんなの現実的には不可能なので、とりあえず観測時に合ってればいい。

次に2機からの観測で目標艦の進路を測定する。
これは最低2回、目標の位置を観測すれば出る。
ここら辺は既にさんざん解説したから今回はパス。
で、以後、この進路の線が測定の基準となる。




ステップ2。
砲弾の着弾直前に、それぞれの目標方向の方位角を測る。
角度は目標の進路に対して出す。
方位の測定は比較的誤差が少ないから、航空機からの観測には向いていたろう。

この段階で実は両観測機から目標艦までの距離も出る。
計算方法は余弦定理を使うだけで簡単だから、各自がんばること。




着弾したら、今度は水柱の方位角を測る。
当然、これで水柱までの両機からの距離も出る。
この段階で2機を結ぶ線を基準に、目標艦、水柱の
それぞれの位置が特定でき、それを作図すれば、
目標艦と水柱の位置関係がわかるのだ。

ついでに、この方法だと、単純に着弾観測するだけでなく、
目標の進路、速度まで求めることが出来たので、
それなりにメリットはあったようだ。

ちなみに、観測機は戦艦などに比べるとはるかに高速で、
観測中の移動量も多いが、
直線飛行、さらに目標進路に平行に飛べば、
これを帳消しにする計算は、ある程度単純に出せた。



「そうは言っても、結構めんどくさね」

まあね。
さらに結局、この方法でも精度の限界はあまり高くはなかったらしい。
米海軍は長距離砲撃戦の演習時、
砲撃観測機の目標までの接近可能距離をルールで決めていたんだが、
結局、5000ヤード(4572m)以下には最後まで、できなかった。
これ以上離れてしまうと、どうもあまり正確ではなくなってしまい、
肝心の砲撃の練習にならなかったらしい。

「あれま。全然ダメじゃん」

なので、ここら辺から、観測機無用論が出てくることになるんだよ。


NEXT