■だってあなたは遠すぎて
「なんだこりゃ?」
着弾観測記入シートだ。
機上から着弾の水柱を確認したらこれに記入して、
母艦にマス目のナンバーで通報するんだ。
中心にいるのが目標艦で、アメリカ海軍の場合、
一マスは100ヤード(約91.5m)のものを使った。
基本的に上が目標艦の進行方向で、これで砲弾が
敵艦の位置から見てどの方向にずれたのか、を判断するのさ。
目標艦を基準にしてしまえば、観測機と母艦の座標の差、
まあ位置の違いはチャラになるからね。
ここら辺、日本海軍もシステムごとパクッたので、同じようなやり方をした。
もっともマス目はメートル単位だったんじゃないかと思うが…。
ちなみに、アメリカ海軍で砲撃を行う場合、その距離単位は一般にヤードだ。
そのくせ、なぜか高度や艦船の大きさなどはインチとフィート表示なので、
ここら辺は要注意なんだよ。
よく換算を間違えてる資料を見かけるので気をつけよう。
「さいですか。で?」
まあとりあえず、これを正確に記入する必要がある。
「正確ってどのくらい?」
実は書いた本人も忘れかけてるが、この連載の最初の方でやったろ。
照準に使うデータなんだから、その許容誤差は100mが限度だ。
それ以上だと、せっかく観測してもさほど意味がなくなる。
「結構キビシイ数字?」
それを経済性に優れた汎用電子計装置を使い、
擬似立体座標プログラムによって確かめてみよう。
「…安物パソコンで3Dソフト使って見てみるって事ね?」
…はい。
まずは距離約1200m、高度1000m前後で見てみよう。
当然、実戦では既に3回は死んでる接近ぶりだが(笑)、
最初は比較的理想的な環境でどう見えるか、を確認したいのだ。
これ、座標シートでどこら辺に水柱が立ってる状態だと思う?
このシートではわかりやすくするため、目標艦の大きさを200mとし、
各マス目のサイズも200mにしてある。
「えーと、目標から見て、
進行方向の左前方なのは間違いないよね?」
だね。
「うーん、ここら辺かね」
了解。
底辺が400m、高さが200mの三角形を考えると、距離が計算できる位置だ。
艦の中心から、ざっと447m左前方、というところだね。
では今度はもっと近づいた位置から見てみよう。
距離約600m、高度1000m。
ほぼ真上と言っていい絶好の観察ポイントから。
これまた実戦では絶対にありえないポジションだけど(笑)。
「あれ?思ったよりも、もっと前方か?」
なんかそんな感じだよね。
では、次のページで正解を見てみよう。
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