■回って回って回るから しかも球体だから



さて、とりあえず地球大閣下は私に無断で勝手に自転してる。
つまり地軸を中心に24時間で1回転してる。毎日、飽きもせずによくやると思う。

その結果、コリオリの力と遠心力と言う力が発生する。
厳密には「見せ掛けの力」だったりするので、
「二つの現象が発生する」と言う方が正確かもしれない。

が、どちらにしろ、現実にこの「見せかけの力」によって、
高緯度での遠距離射撃では砲弾が曲がって飛んでゆく事になり、無視できないのだ。
とりあえず、もう一つの遠心力も砲撃に影響なくはないんだが、
照準に補正をかけるほどの差異を生じさせることはない(ハズ)ので、
ここではコリオリの力を中心に見てゆこう。

「…ギー」

かわったイビキだな、ペロ君。
君が言い出したんだぞ、ちゃんと聞け。

「…あ、で、コリオリってどこの魚?」

フランス人のおっさんの名だよ。当然、この現象の発見者。

「この現象って?」

回転してる地面上の物体の運動は、同じ地面の上で一緒に回転してる見るのと、
回転体の外から見るのでは、その移動の軌跡が異なって見える、という話。

「…はあ、さいで」

本来は回転する円盤上で考えられた、純粋に数学的な話だったんだが、
よく考えたらこれって地球にもあてはまるじゃん、ということに気が付いた。
で、実際問題、軍隊では必要ありまくりな概念だった、というものだ。

特に人類は誕生59万8569年目あたりから、ヨーロッパ周辺の高緯度地方で
やたらめったら戦争ばかりしてたから、20世紀突入以降は結構切実な問題だった。
もし文明が低緯度地方、つまり赤道付近で高度に進化してたら、
そんなに注目されなかったかもしれん。
コリオリの力は、赤道上では0となり、
緯度10度くらいまでならほとんど無視できる現象なんだ。

ちなみに台風やハリケーンの渦巻きの原因でもあるんだけど、
軍と気象台、どっちが先に、この理屈を地球に適用したのかは、よく知らん。
この理論の発見は1835年だそうだから、坂本竜馬の生まれる前の年だね。
ちなみに一切の細かい説明を省いて、数式だけ見ると、その力の大きさは

(見かけ上の)力の大きさ=
-2×物体の質量×移動速度×その緯度での自転速度(角速度)×sin(その位置の緯度角度)

(-2は単純に2で計算してもかまわない。というか、そっちが普通)


であって、計算そのものは別段難しくない。

「…えー、つまり、どういうこと?」

これは実際の結果から見たほうがわかりやすいだろうね。
まずは地球上での現象。

「物体が自転してる地球上を移動する時、同じ地球上から見る限りでは、
必ず進行方向と直角な方向に曲がるように見える」


この現象は本来、円盤を基本とするので、球体である地球の場合、
赤道を境に裏表の関係となって、曲がる方向が逆転するんだ。
ちなみに北半球が常に右に曲がるように見え、南半球では左に曲がってゆくように見える。




「そんなバカな話あるかい。オレはまっすぐ歩けるぜ。
車だって、自転車だってアメンボだってみんなみんな生きているんだまっすぐなんだ」

ごもっとも。
実はこの現象は、ある程度の規模が必要なんだ。
この点は後で簡単に説明しよう。
少なくとも、かなりの高緯度地域だとしても10km四方以下の範囲では
人間が体感できるような現象にはならない。

なので、台風やハリケーンといった大規模な気象現象の
渦巻きはこの現象で説明できるが、
鳴門の渦潮や、局地的な竜巻、果ては洗面所の栓を抜いた時の水の渦
などは、コリオリの力とは全く関係ない。

ここら辺、1960年代から70年代くらいに、あのアーサー C.クラーク閣下をはじめ、
何人もの「いわゆるサイエンス ライター」の皆さんがいろいろホラ話を書いた結果、
世界中で今でも誤解がはびこっているので、それなりに注意がいる。
まあ、さすがに最近は風呂の水を抜くのにコリオリの話をする
理科教師は絶滅したんじゃないかと思いますが…。

本来、そう簡単に目で見たり、体で感じられる現象ではないんだよ。

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