■あたらなくても愛
というわけで、目標点である敵艦に向けて
キチンと砲弾が飛んでゆけば、ある程度の命中確率が期待できるわけだ。
「歯切れが悪いな。命中する、とは言えないの?」
言えないんザマス(笑)。
主砲の散布界については、演習などの理想的な射撃状態でも、
左右で60m、奥行きで260mくらいにはなる。
実はAの図の楕円はほぼこの大きさなんだ。
そんな「理想的な射撃」でも明らかに当たらない方の面積の方が広かったでしょ。
「実際どの程度の確率になるんだよ、じゃあ」
その点は実は簡単に計算できる。楕円の面積は
縦方向の半径×横方向の半径×円周率
そして、戦艦の全幅はだいたい35mあたりと考えていいから、
楕円の横幅60mで切り取られた長方形と見なしてしまえばいい。
多少の誤差はあるだろうけど、船体の中心部分だからほぼ同じ幅だろう。
となると楕円の面積は12246平方メートル、その内、船体が占めるのは2100平方メートル。
つまり約17%でしかなく、これがほぼ命中確率と見ていいはずだ。
理想的な射撃で、理想的な散布界に着弾して、こんなところなんだね。
「17%?そんなに低いの?」
まあ実際には砲弾は放物線状に飛んでくるので、
船体に命中しなくても艦橋などの構造物にブツかって吹っ飛ばして行くという可能性はある。
が、遠距離射撃の場合、砲弾は飛行中の空気抵抗で
完全にエネルギーを失ってる状態だから、かなりの急角度で落ちてくる。
よって、この可能性もそんなには高くないんだよ。
「あ、でも8発とか同時に撃つわけだから、8倍して…100%を軽く超えるじゃん」
いや、その考えは正しくないでござる。
それぞれの砲弾は別々の砲門から独立した軌道で飛んできて、バラバラに着弾する。
それぞれ独立した系だから、これは各砲弾の命中率が常に17%という話であって、
全体的にどれだけ、とはならないんだ。サイコロと同じ話だね。
1が出る可能性は常に1/6だが、6回ふれば必ず1回1の目が出る、という意味ではない。
一度も出ないこともあるし、何度も出ることがあるわけだ。
ただサイコロをふる回数を増やせば「チャンスが増える」というだけに過ぎない。
「そんなものかね」
そんなものなんだ。
今回、実際に表計算ソフトでx軸、y軸の一組の数字を
乱数で8回ほど発生させて、その座標に点を打って見たのがコレ。
ちなみに、こんな感じで目標の周りに砲弾が落ちることを挟叉(きょうさ)する、といい、
この状態を得れば命中弾はほどなく出る、とされるが…。
「一発もあたってない!」
当たってないねえ…。
ただし、これは両者横向きに撃ちあった場合だから、
もし敵が逃げ出してる、あるいはこちらを追いかけて来てる、
という状況で船体が縦方向を向いていればハナシは違ってくる。
こん感じだ。少なくとも確率50%くらいにはなっているはず。
「正確には?」
あー、これはもう船体を長方形と見なせないので、
えー、計算がその、結構面倒でありまして…まあ、なんというか、
なんでもかんでも正解まで書いてしまってはつまらないよね、
あとは自分でなんとかしてね!という感じ?
「手抜き?」
…はい。
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