■なんたって君には当たらない
さて、「丸い地球で戦争する話」で、
戦艦の主砲照準に必要な重要ポイント、
距離の測定と、その光学的な限界については話をしたね。
「全力で忘れました」
…うん、そうだと思った。
まあ、知ってても、人生においては何の役にもたたないから、別にかまわない。
ただ、今回の記事を読むには一応必要な知識なので、
確認しておいてもらえると助かるのじゃ。
とりあえず、最低限の復讐をしておこう。
というわけで、吉良邸の方向はこっちでいいの?
「それは復讐。で、今回は復習」
回を追うごとにノリが悪くなってゆくなあ、ペロ君。
「いや、まだ連載第1回」
まあ、いいや。
とりあえず、お話に入る前に最低限の確認だけはしておこう。
まずお話の大前提その1。
艦隊戦における主砲射撃は、ほとんど当たらない、という事。
「そうなの?例の照準の限界を別にしても?」
別にしても、だ。
論語の「学而 第一」の中で
「顔淵問うて曰く “なぜパチンコ屋のテーマソングは軍艦マーチやの?”
子曰く“そらおまえ、なかなか当たらないからに決まっとるわ”」
というエピソードがあるくらい有名な話だよ。
「ねえよ、そんな論語」
…な、なぜわかった?さてはペロ君…
「いいから、話進めて。さっさと済ませてさっさと終わりにしようぜ」
それもそうだ。
とりあえず、戦艦でも巡洋艦でも、一隻ごとにたくさんの大砲がついていて、
気に入らない相手がいたら、これらを全部一斉に撃つ、というのが基本。
「まとめた方がお得だから?」
これは日本海軍の重巡洋艦。前も後ろも大砲だらけ。
皆、そんなに大砲好きなのか。
実はそんなところだ。
照準も、射撃の判断も各砲ごとにやってても、
しっちゃかめっちゃかになるだけ、なんだよね。
だから、射撃指揮を行う部署を作って、そこで一度にまとめてドカンとやる。
その結果、8発前後の砲弾が一度に目標に向かってすっ飛んで行くことになる。
「それで?」
でもって、当然、バラバラに着弾する。
上の写真でわかるように各砲塔、特に前後ではかなり離れてるから、
これで全く同じ場所に全弾が命中することはない。
おそらく人類誕生60万年となる今年になるまで、そんな事態は一度も起こってないだろう。
でもって、この砲弾が着弾する位置のバラつき、
つまり「散布」が主砲の命中率を考える場合、重要なポイントの一つになってゆくのさ。
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