■まだまだ延びる子
さて、今回はいろいろ込みいった話になるので、
ペロ君に記事をてつだってもらおうか。
「さいですか」
というわけで、酸素魚雷の照準の問題について考えようか。
「いや、その前に結局酸素魚雷ってなに?酸素が燃料って事はエコなの?」
エコだろうね。
世界的に見ても非常に珍しい、敵にも地球環境にもやさしい、
人間が中心に居る軍隊だから、日本海軍は。
でも、それだけじゃない。
本格配備が始まった1935年ごろにおいては
確かにちょっと驚異的な性能を誇っていた魚雷なのさ。
高速度、長射程距離、多量の炸薬搭載量、そしてエンジンから水中に排気をしないため、
航跡が見えにくいなど、かなり優秀な兵器だった。
最初に採用された酸素魚雷、93式酸素魚雷だと、射程は最大40km、
実に戦艦の主砲並で、その時の速度が時速約66.7km。
炸薬は490kg積めたんだが、魚雷で400kgを超える炸薬を積めるのはあまりないぜ。
「へー、すごいんだ」
維持管理が大変で、いろいろと扱いにくい兵器ではあったんだけどね。
なのでドイツなんかは同じく航跡を残さない魚雷としては、
結局電気モーター魚雷に行き着いた。
ただし最初は時速約55.6km、射程3000m(G7e/T2型)程度の性能しかなく、
戦争がそれなりに進んだ1942年の段階でも
時速約は55.6kmのまま、射程が5000m(G7e/T3型)に延びた程度だったらしい。
「かなりイマイチでは?酸素魚雷の技術、ケチケチしないで提供してあげればいいのに」
いや、提供してるんだ。
「じゃあ、なんで?」
事実上、シカトされた(笑)。
「あれま。なんでまた」
アメリカ海軍の湿式過熱装置(wet heat
method)とかいうタイプのエンジン積んだ魚雷。
何度説明を読んでもよくわからないんですが、一種の蒸気タービン?
酸素魚雷に比べると、確かにゴチャゴチャとパーツが多いような気も。
が、アメリカ海軍は、後にドイツからパクッた電気モーター魚雷に移行して行き、
このタイプのエンジンはあまり使われなくなるようです。
実は、英米も最終的には電気モーター魚雷に行き着く。
もっとも、イギリス、アメリカ共に電気モーター魚雷の開発には手こずっていて
1941年8月、ドイツのUボートU-507をイギリスが鹵獲した際、
まんまと数本のドイツの電気モーター魚雷の回収に成功、
こりゃシメタと、さっそくこれの設計をパクッたんだよ(笑)。
もっとも、米海軍のMk.18は時速74km程度出たから、より高性能になっていた。
「酸素魚雷は研究してなかったの?」
酸素魚雷はそもそもイギリスが元祖だ。で、連中はこんなのいらねー、と放棄した。
「あれま。アメリカは?」
実はよく知らない(笑)。
が、ガダルカナル島で無傷のまま漂着した93式酸素魚雷を回収してるようで、
少なくとも、その構造は研究したはずだ。
「で?」
事実上、シカトされた(笑)。
「すごい兵器だったんじゃないのか、酸素魚雷…」
一つには、ドイツ、アメリカともに魚雷を主要兵装としたのは
潜水艦だった、というのがあると思う。
酸素魚雷はその維持管理が非常に面倒で、潜水艦にはあまり向かない。
そして、潜水艦が長距離の魚雷攻撃をすることはまず無いんだ。
そもそも潜望鏡の高さじゃ、最初に見たように5q先までしか見えないんだから。
それに対して、日本海軍は駆逐艦はおろか巡洋艦にまで魚雷を積んで
戦争やるつもりだったから、長距離、高速の魚雷が必要だったんだろう。
もっとも、日本海軍、潜水艦にまで酸素魚雷、積んでたようなんだが…
それと、まあ、結局“割に合わない兵器”だったんじゃないかと思うんだ。
「だって、高速で無航跡で長距離射程距離を誇ったんでしょ?」
高速は確かにメリットだが、無航跡は電気モーターでも同じだよ。
そして、電気モーター式は酸素魚雷に比べ、取り扱いは簡単で維持管理が容易。
そうなると酸素魚雷と電気モーターのメリットは1対1。
残るは長射程距離、という事になる。これがどの程度必要なのか。
「どうなのよ、そこは?」
フフフ、それをこれから見て行くわけさ。
ドイツがUボートで使ってた魚雷。
電気モーターのG7e(T2?)だったと思いますが、説明板の撮影に失敗しおり、
もしかしたら湿式過熱装置(wet
heat
method)のG7aかも知れません。
その場合、そのパーツの一部はロータリーエンジンでおなじみヴァンケル博士の作品です。
ちなみに「取り扱いが容易」というのはあくまで酸素魚雷と比べた場合。
少なくとも、家電製品感覚で取り扱うことはできないシロモノだったようです。
まあ、どっちにしろ、私たちの人生には大きな影響はないので気にしない、気にしない。
周りの人と比べて結構デカイのがわかればOKです。
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