■ものには限度がある

測距儀の基本的な問題は、測定する距離が伸びるほど、
わずかな誤差しか許されなくなる、という点です。

例えば1mの基線長は短すぎる、
という事で日本海軍のような10mの測距儀を用意しても、
その50倍の500mの距離ですら、読み取りには極めて小さな誤差しか許されません。
この場合、読み取る必要がある角度は以下のように1.146度という
もはや角度として認識でにきない、ただの点じゃないの、という世界になります。





ちなみに数字がわずか0.2度ずれて1.126度と読み取ってしまうだけで、
距離は510mと10mもの誤差が生じてしまいます。
これでは20q、30qの距離の測定には使い物になりません。

ただし、ある程度まではこの点を補完する方法があります。
それが望遠機能です。

これまでの記事にさりげなく(?)書かれていた
対物レンズ&接眼レンズの搭載、これが測距儀に望遠機能を与えます。
3倍、4倍といった望遠レンズですね。
するとどうなるか。

実は基線長さというのは、レンズの倍率に比例する、という特徴があります。
なので10m長の基線長の測距儀でも、2倍望遠のレンズを積んでる場合、
10×2=20で、その基線長は20mと同じとみなされます。
望遠なしの20m測距儀と同じ精度、すなわち性能が倍、という事になるのです。
(厳密にはレンズの誤差が出るので、実際に長い方が正確ではある)



筒幅に倍の差があっても、短い方に2倍の望遠レンズが入っていれば、
基線長は同じという扱いになるので、その測量精度は互角という事になってしまう。
(ただしレンズの誤差があるので完全に対等ではない)

この倍率によって引き延ばされた基線長のことを「有効基線長」と呼びます。
で、この手を使わなければ損ですから、
通常の測距儀にはほぼ必ず望遠レンズが入ってます。

なので、測距儀の距離測定を求める数式は以下が一般的、となります。



とりえず望遠倍率が加わっただけですが、これで測距儀は随分と
実用的にはなりました。
が、それでもやはり20q以上先はキツイだろう、という話を
次のページからいたしましょう。


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