■海戦前夜
さて、MO作戦におけるX-3日、5月7日から珊瑚海海戦は始まるのですが、
最初に7日の夜明け前、現地時間で深夜午前3時ごろの状況を確認しておきます。
この状況から海戦は始まる、と考えていいでしょう。
下の地図中で一番南にいるアメリカの給油艦ネオショーと駆逐艦USSシムスは
前日夕方に分離された部隊ですが、当然、ほとんど戦力になってません。
よって本来なら海戦の蚊帳の外なんですが、日本側の大チョンボによって、
思わぬ形でこの日の主役になる部隊なので、ここに書き込んであります。
アメリカ側の打撃部隊はTF17ただ一つであり、極めてシンプルです。
対して日本側の打撃力はMO主隊とMO機動部隊に分離してました。
さらに戦闘には参加しないものの、本来のこの作戦の主役、
ポートモレスビー攻略部隊(軽巡 夕張などが居る)や、地図には出してませんが、
水上機基地建設のための援護部隊(軽巡 天竜 龍田などが居た)なども活動中でした。
もう慣れたとはいえ、ホンマにもう少しシンプルにできないもんなんでしょうか、この作戦…
とりあえず決戦直前、7日の夜明け前の状況を確認しておくと、
●日本側
●自軍の行動予定 ポートモレスビー攻略部隊はこの日(7日)の夕方に
デボイネ東側のジョマード水道を通過、ニューギニア島南岸側に抜け、
そのまま西に進んでポートモレスビーを目指す。
MO主隊はそれに付き添う形で護衛を続行する。
はるか東南方向にいたMO機動部隊は、アメリカの空母機動部隊を見つけ、
これを攻撃し、無力化する事が求められた。
●敵の情報 ツラギ空襲によりアメリカ空母機動隊の存在は
既に知っていたが空母の数などは全く判らない。
さらに敵の現在位置はソロモン諸島南方の珊瑚海のどこか、としか判ってない。
さらに、この段階でアメリカ側の索敵機の目撃、その通信の傍受から、
MO機動部隊以外の日本艦隊は全て発見された、と判断していた。
(この判断は正しかった)
ただしデボイネの北東にあるウッドラーク島を日本が襲撃するだろう、
と予想しているアメリカ側の電文をこの日、MO主隊では受信していた。
(当然、誤情報で日本側にその予定は無い)
このため、これを妨害するためアメリカの空母機動部部隊は
デボイネ方面に向かってくるだろう、という予測がなされる。
つまり、ポートモレスビー攻略部隊の針路の前に
アメリカ空母機動部隊が立ちふさがる形になる、と予測でき、
MO主隊などはこの推測を元に行動してる。
が、なぜかMO機動部隊側は、この情報を軽視し、
前日の情報、敵機動部隊は南に向かって全力退避中に影響されて、
艦隊の西側、デボイネ方面の索敵を軽視した。
これが翌朝の索敵の錯綜の一因となり、混乱と悲劇を呼び込む結果を招く。
●アメリカ側
●自軍の行動予定 日本のポートモレスビー攻略部隊が南下するのを
妨害、撃破するため、北西に向け全力で進行中。
さらにこの後、部隊を二つに分割する予定だった。
一つは北上してポートモレスビー攻略部隊を迎え撃つ空母機動部隊。
もう一つはさらに南側で待ち伏せするため、西のジョマード水道の出口に向う巡洋艦部隊。
これによって空母機動部隊が北側で撃ち漏らした日本艦を
南側で巡洋艦隊が待ち伏せ、襲撃するつもりだったと思われる。
●敵の情報 多少の時間のズレがあったが、それでも日本側の主力艦の数、
その行動予定まですでに把握していた。
さらにこの段階だとアメリカ陸軍の偵察情報も入ってきており、
機動部隊以外のすべての日本の部隊、さらにはデボイネの水上基地まで発見済みだった。
ただし、MO機動部隊の所在は全く判っておらず、
日本側が二手に分かれて行動してるとは思ってなかったフシがある。
このため東側にいたMO機動部隊については、
完全に無警戒だったし、そもそもそんな方向にいるとは思ってなかったようだ。
一方、MO主隊と行動を共にしている祥鳳は既に発見されてるので、
おそらく空母機動部隊もそこにいる、と思っていたのかもしれない。
そういった意味では、アメリカ軍の索敵機をさけるため、
ソロモン諸島を北側から回り込んだMO機動部隊の作戦は上手くいっていた、と言える。
これで途中の余計なゼロ戦空輸で時間を浪費せず、
アメリカ空母機動部隊がポートモレスビー攻略部隊に接近するのを許さなかったら、
100点満点だったのだが(涙)…。
ちなみに、この所在不明の優位は、この日の最後まで維持された。
すなわちMO機動部隊は日没直前まで、
その接近をアメリカ空母機動部隊に知られる事はなかった。
このため日没直前に意外な形で、MO機動部隊の接近を
アメリカ空母機動部隊は知る事になる。
おそらく太平洋戦争の海戦でも最大の大混乱、
突然出現しながら全く攻撃してこない日本の艦載機の集団と、
アメリカ空母に着艦アプローチしてくるそれらによって
アメリカ側は何がなんだかよくわからないまま、
日本の空母機動部隊が至近距離に居ることを知るのだ。
そして、それは日本側の大失敗でもあり、それまでの行動秘匿を
一気に無意味にしてしまうものだった。
まとめると日本側はアメリカの部隊が何処にいるかは全くわかっていないが、
南東からデボイネに向かってくるとは知っていた。
ただし、MO機動部隊はこの情報を軽視した。
対するアメリカはMO機動部隊以外のすべての部隊を発見、
その位置をおおよそ把握しており、ポートモレスビー攻略部隊が
間もなくデボイネの東、ジョマード水道を通過する事まで知っていた。
ただし、MO機動部隊の所在は把握しておらず、
そもそも本隊とは別行動で東側にいるとは思ってなかった。
よって両軍とも敵空母機動部隊の位置を把握しておらず、
これの発見と攻撃が第一目的となります。
日本側にすれば、これを排除すれば、少なくともニューギニア南岸の
アメリカ陸軍攻撃圏内に入るまで、航空優勢を取れます。
対してアメリカ側は、まず空母機動部隊を排除しないと、
それ以外の上陸部隊を攻撃中に、空襲を受ける恐れがありましたから、
最初にこれを叩き潰す必要があるわけです。
よって夜明けと共にその捜索のため、
索敵機を飛ばす、が両軍ともに最初の行動となり、実際、
この海戦は7日の朝、両軍の索敵機発進から始まる事になります。
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