■アメリカ側も結構大変だった
さて、そんなわけで空母機動部隊と間違えて発見された
給油艦USSネオショーと、駆逐艦USSシムスでしたが、
こちらはこちらで、混乱の中にありました。
ちょっとその辺りも見て置きましょう。
■Image
credits:Official U.S. Navy Photograph, now in the collections of the U.S.
National Archives.
♯80-G-16444 Neosho
今後、掲載の機会が無いと思うので、ここで日付不明ながら珊瑚海海戦中とされる
USSネオショーの給油風景を載せておきます。
USSヨークタウン側から撮影されたもので、5/1〜5/2、あるいは5/5〜5/6のどちらの状況かわかりませんが、
相当過酷な状況下での給油作業の準備中なのがわかります。
こうして見ると、アメリカ側の補給にやけに時間がかかってるのは、やはり天候に恵まれなかった結果なのかも。
この時の空襲で、USSシムスはあっという間に轟沈してしまい、
生存者も少なかったため、その報告書はかなり簡潔なものとなってます。
対してUSSネオショーは空襲による沈没は免れ、それなりに生存者も救助されてるので、
ここではその行動報告書(Action
reoirt)を中心に見て置きましょう。
報告書によると、7日の朝、当初はTF-17と合流の予定だったとされますが、
TF-17はひたすら北西に、USSネオショーたちは南に向かって移動を行っており、
どう考えても合流の機会はなく、この辺りはちょっとよくわからない部分です。
そんなUSSネオショーが日本側の翔鶴の索敵機に気が付いたのは7時40分とされます。
すなわち翔鶴の索敵小隊が敵発見の第一報を打電してから20分近く経ってからで、
2機の偵察機が10海里(約18.5q)先に張り付いてるのを発見した事になってます。
このあたり、護衛の駆逐艦USSシムスは、既にに対空警戒レーダーを持っており、
もう少し速く発見していた可能性もありますが、記録が無いのでよくわかりませぬ。
(ちなみに日本側はようやくこの時期、戦艦の伊勢と日向に試験的にレーダーを搭載開始)
ただしUSSネオショーでは、当初これを友軍の艦載機だと考えていたようです。
で、ここまでは何の問題も無しで、日本側の記録とも一致するのですが、
8時59分、いきなり駆逐艦USSシムスが右舷100m前後に水平爆撃を受け、
両艦は爆撃回避のため、ジグザグ運動に入ります。
この後10分近く、この爆撃機による接触が続いたとされ、
どうもこの辺りから、話が複雑怪奇になって来ます(笑)…
実は、この爆撃機の正体がわからないのです。
アメリカ側は最後まで日本の攻撃と思ってたようですが、
そんな記録が日本側に見当たらないんですよ。
少なくとも翔鶴の索敵機がそんな事をするはずがなく、
(そもそも出撃記録によると武装は積んでない)
先にも書いたように、瑞鶴、翔鶴の五航戦の攻撃部隊が現場に着くのは
9時20分前後で、時間が合いません。
この爆撃は単機によるものとされてるのですが、日本側の記録が見つからないのです。
可能性としては、ツラギからの飛行艇か、という事になりますが、
ツラギから飛んだのは、通常の索敵機のはずで、
これも普通は爆弾を積んで無いはずです。
こうなると、どうもよく判らないのですが、状況からして、おそらくアメリカ陸軍か
オーストラリア海軍の機体による誤爆、というのが一番可能性としては高いと思われます。
お次は9時35分ごろ、15機前後の編隊が25度方向(北北東)から接近、
特に攻撃を加えないまま、しばらく並行して飛行、その後飛び去った、とあります。
これは、おそらく翔鶴の攻撃隊だと思われ、接近してみたら、輸送艦じゃん!
と気が付いて、空母を求めて周囲の索敵に飛び去ったのでしょう。
次は9時53分ごろ、7機前後の機体が現れ、これもしばらく周辺を飛んでから
飛び去ってしまった、とされます。
機数からすると翔鶴のゼロ戦隊でしょうかね。
(瑞鶴のゼロ戦隊はUSSシムスをまだ発見してないし、
先に書いたように艦爆と行動を共にしていたはず)
その次は10時3分ごろ、南東方向から10機前後の編隊が接近し、
その中の3機の双発爆撃機が編隊から分離、
両艦に対して水平爆撃を行って来ます。
これらは至近弾となったものの、命中はありませんでした。
で、USSネオショーの報告書によると、双発機による攻撃だった、とされますが、
これはもう、明らかにアメリカ陸軍の誤爆ですね(笑)。
これだけの数の双発機だとラバウルの一式陸攻撃しかありませんが、
こんな場所まで飛んでませんし、時間も全く一致しません。
となると、この時間のこの海域には日米双方の航空機部隊が入り乱れてたわけで、
双方ともこれに気が付いて無かった、という事になります。
ホントに日米ともに、錯誤の連鎖なんですよ、この海戦。
そして最後に11時31分ごろ、24機前後の編隊が接近してきて、
急降下爆撃が開始され、これが11時48分ごろまで続くのです。
これは正真正銘、五航戦の艦爆でして、ここから彼らの悲劇が始まる事になります。
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