■それは間違えるようなものなのか
さて、珊瑚海海戦初日、5月7日はコマッタナー、で錯誤の日、
といっていいほど、混乱と錯綜の戦いが日没まで続くのです。
その最初の山場、午前中における
日米双方の間違った総攻撃を平行時間表(命名:私)によって
確認したのが前回でした。
あれでおおよその戦いの流れは分かったと思うし、
思いいたいし、そうでなければ私があまりに、カワイソウ、
という感じなので、とりあえずその前提の元で、
今回からはもう少しそれぞれの行動の詳しい話を見てゆきます。
まずは、瑞鶴&翔鶴のツルツルコンビ、五航戦による錯誤の戦いから。
でもって最初に連中が全力で沈めてしまった給油艦艦隊について少しだけ見て置きましょう。
とりあえず護衛の駆逐艦はいいとして、給油艦てのはどんな船?
というと、その名の通り、艦隊に燃料を給油する艦で、
通常は艦隊とは別行動を取り、事前に取り決めてあった海域で
合流して給油を行います。
珊瑚海海戦中は日本側も給油艦は別行動で参加しており、
例えばMO機動部隊の場合、東邦丸という補給艦が配属されてました。
■Image credits: Official U.S. Navy
Photograph,
now in the collections of the National Archives.
Catalog #: 80-G-464653
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例によって海軍歴史資料センターからの画像を使用してますが、
これはアメリカ機動部隊の合流初日、5月1日の給油風景。
画面左が空母USSヨークタウン、右が今、当サイトで
話題沸騰中の給油艦(Tanker)、USSネオショーです。
全長約170mと比較的大型な船ですが、ご覧のようにどっから見ても輸送船。
双眼鏡で艦載機の発艦が見える位の距離に付ける索敵機から見て
どうしてこれが空母に見えるのだ、という疑問を皆さんも持っておいてください(笑)。
ちなみに我が国の事実上の公式戦記、戦史叢書では
“油槽船の比較的平板な船型を見て、直ちに空母と判断”したのだろう”
と推測してますが、どうでしょうねえ…。
この写真では切れてしまってますが、輸送艦らしく、
艦尾に大きな艦橋と煙突がありますから、
戦艦などから見れば凸凹は少ないものの空母とは似ても似つきませぬ。
少なくとも母艦である空母を上空から何度も見た経験がある人間が、
勘違いするような形状ではないと思われます。
ついでに、ちょっと脱線すると、海上補給では平行して航行しながら
給油ホース(画面中央下の黒い管)を両艦の間に渡して給油します。
でもって、このホースを維持するのにUSSネオショー側は
専用のクレーンを使ってるのですが、USSヨークタウン側が使ってるのは
これ、港などで機体などの上げ下ろしをする際に使う荷揚げクレーン(デリック)です。
こんな使い方があるとは知りませんでした。
となるとアメリカ空母のクレーンは給油口のそばにある、という事になるはずですが、
確認が面倒なのでこの話はここまで。
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とか言いながら、もうちょっとだけ脱線。
アメリカの最新戦艦、アイオワ級にの右舷後部には矢印で示した謎の塔がありにけり。
(戦後の改修で追加された)
現地で見た説明だと燃料補給のためのもの、とされてたのですが、
これでどうやって?と、どうもよく理解できませんでした。
が、今回、上の写真を見て、あ、これ給油管を上から保持するための
ロープをひっかける場所だ、と初めて理解できたのでした。
フフフ、また一つ賢くなってしまったぜ。こんな疑問の解決に2年もかかってしまったぜ。
さて、そんなUSSネオショーと、USSシムスは前日、
TF17から分離して、次の給油地点まで先回りする予定で、
南に向かっていたわけです。
本来なら、完全に安全圏に逃げたつもりでしたし、
どこの世界に給油艦を全力で攻撃する空母機動部隊が居るのよ、
という感じで、非戦闘艦として完全に安全圏に居たはずでした。
(状況によっては7日の朝にも給油が予定されてとする話もあるが確認できず。
TF17の進行方向からして考えにくいと思うのだが…)
ところが、居たんですね、これを全力攻撃してしまう空母機動部隊が(涙)。
日本のMO機動部隊は、前日の5月6日にツラギ発の索敵機から
アメリカ空母機動部隊は南に向けて逃走中、
という完全に間違った情報を受けていました。
さらにその後、自分たちは一切索敵機を飛ばさなかったので、
その情報が正確かどうかを全く確かめていませんでした。
この結果、とっくに北西に走り去ったアメリカの空母機動部隊、TF17を求めて、
全く見当違いの南西方向を中心に索敵してしまう事になったのは前回説明しました。
これが日本側の錯誤の始まりだった、と言っていいでしょう。
ちなみにこの南方向重視は五航戦の原司令官の独断で、
周囲は西方向の索敵を進言していた、という話(森 史郎さんの著作)
もあるのですが、少なくとも公式記録にそのような記述は一切なく、
事実かどうかはわかりませぬ。
ありえそうな話ではありますが。
そして当然、そこにTF17はおらず、不幸にしてその付近をうろうろしていた
USSネオショーと護衛駆逐艦のUSSシムスが
日本の空母機動部隊主力から襲われる事になるのです。
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