■後ろから見る
主翼を後部から。
後縁部にも強い角度がついていて、台形翼になってるのが見て取れます。主翼後端部の動翼はF-22と同じ2枚、その部分も見えてます。外側、通常ならエルロンに当たる部分のが方がやや狭く、内側、通常ならフラップの部分の方がやや広い、という特徴があります。当然、単純なフラップ、エルロンではなく、F-22と同じように両者が複雑に動いて機体の動きを制御します。
真後ろから。
ジェットエンジンの収納部も単純な円筒形では無い、ヌメッとした形状なのに注意してください。さらに両エンジンの間に空間を造る事で操縦席からの後部視界を確保してるのが見て取れます。ジェット排気口が四角いのは推力偏向ノズルだからですが、ステルス性を重視して機体上面のみに置かれており、YF-22のように機体下面側にまで排気を向けられるようにはなっていません。この辺りがYF-22に比べて機動性が落ちる、とされた一因かもしれません。
ちなみにYF-22とYF-23の試作はそれぞれ2機が造られてますが、どちらも1号機と2号機では搭載エンジンが異なります。これはエンジンも競作だったためで、写真のYF-23 1号機では最終的に不採用になった方のエンジン、GE社のYF-120を積んでいました。このため同じYF-23でも排気口の形状がちょっと異なっています(YF-22も同様)。
■Photo
NASA
奥がこの博物館で展示されてる一号機、ブラックウィドーII(Black Widow
II)、手前が2号機のグレーゴースト(Gray Ghost
)。ちなみに、この愛称はノースロップによる命名で空軍による正式命名では無いようです。手前のグレイゴーストは後にF-22にも搭載されたP&W F-119エンジンを搭載しており、このため排気口の形状がちょっと異なります。とりあえずギザギザのあるなしで識別は可能です。
ついでに撮影年が1994年というこの数字が本当なら、最後のフライトでエドワーズ空軍基地まで飛んだ時の写真だと思われます。
少し下側から。機体下面がキレイに平面になってるのが見て取れます。この尾翼から主翼に繋がるラインがかなり独特なんですが、この博物館の展示では残念ながらその部分が見えません…
尾翼は全面が動く全動翼タイプで、その構造からすると垂直尾翼と言うより、水平尾翼と昇降舵に近いものがあります(垂直尾翼では後部だけが動いて舵となるのが普通)。なので単なる安定板ではなく、より積極的に機体の姿勢制御をやっていたと思われます。
排気口周辺には耐熱タイルのようなモノが。排気の赤外線対策かと思われますが詳細は不明。
でもって、この機体を見て最も驚いたのが、排気口横のパネルの固定法。どうもネジらしきものの頭が飛び出たままになっており、これ、盛大にレーダー波を弾きそうなんですが…。位置的に空力的な抵抗はほとんど無視できると思うのですが、それでも超音速巡行可能なステルス機でこんな適当な構造部があるとは思わず、かなり驚きました。
博物館でレストアした時に勝手につけたもののようには見えないので、特殊な素材でレーダー波を弾かないネジ、とかの可能性もありますが詳細不明です。一番怖い胴体後部で盛大にレーダー反射を生じさせるようなことは普通しないはずですが…。
この機体も未だ謎だらけだよな、と改めて思ったのでした。
さらに下側から。下から見ると排気口が完全に隠れて地上から赤外線誘導で狙うのが困難なのがよく判ります。
後部がギザギザになってるのは直線にしてしまうと素直に来た方向に向けてレーダー波を反射してしまうから。この後部ギザギザ構造はノースロップが得意とするところの一つで、B-2爆撃機の後部もこういった構造になってます。
もうちょっと別の角度からの写真も載せて、今回はこれまでとしましょう。
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