さて、人の顔の描き方は昨年も説明したので、今回はざっと見て行くだけにします。とりあえず筆者は人体を描くにも立体を基本としている、というのを理解してもらえればよしです。

最初は顔と言うか頭部の描き方。

まずは円筒形に丸帽子を被せた形状を用意します(上図中1&2)。そこから頭蓋骨の形に合わせて下側を削って(上図中3)そこに顔を描きこんでいます。この描き方ならあらゆる角度から破綻なく誰でも「ハラショーにさえないオッチャン」の絵が描けます。世の中のお絵かき教室が丸と球とか立方体で人の顔を描かせようとするのはなんなんでしょうね。角度を変えれば簡単に破綻しますよ、それ。

ただし人体はほぼ全て「像」として頭の中に取り込んであるので、実際に描く時はこんな面倒な事はやらず、5番辺りからいきなり「描写」に入ります。ちなみにかつて友人の娘さんから「ステキなイケメンなキャラがラブフォーエヴァーな絵が描きたいので教えろ(意訳)」と言われて、円柱が描ければ描けるよ、と教えたことがあります。その時は説明に入る前に「人が真剣に相談しているのに、適当な事言いやがって地獄に堕ちろ(意訳)」というお返事を頂いて終わりとなったのですが、ね、Rちゃん、円柱で人の顔、描けるでしょ。さえないオッチャンとラブリーイケメンは生物学的にはほぼ同じ存在だから、これで行けると思うよ。



当然、体も同じ。これも頭の中にあるので実際はこんな作業しませんが。とりあえず全身の説明をすると終わらないので上半身だけ見ときましょう。

ちなみに上半身も単純は長方体ではなく、ひし形に近い断面の立体になるのに注意。これは正面の鎖骨と背面の肩甲骨がその形になっているから。そこからお腹に向けては単純な楕円形になって行きますが、全部ひし形としてアタリを取って、仕上げてお腹の部分だけ楕円形にした方が筆者の場合は描きやすいです。

ちなみに人体はほぼ「像」として頭に入ってるとかぬかしてましたが、実は一部嘘で、肩回り、とくに上半身の背面は未だに完全には形状的に理解できていません。理由は簡単、神様の気まぐれ、肩甲骨があるから。

この上半身背面にある骨は複雑怪奇と言う他無い形状で、筆者は何度写真を見ても形状が理解できず、近年、ネット上で3D人体骨格がブン回せるようになって、ようやく理解できたのでした。それでも未だに完全には消化できていません。これ、矛盾なく絵に描ける人、居るんでしょうかね。まあ天才なら何とかしちゃうかなあ。

とりあえず対策としてはひし形断面の人体とする、その正面は肩甲骨による逆凸型の凹みを造る、背面は背骨部分が凹部、左右の肩甲骨の内側が凸部になる、単純な直線系にしない、といった所でしょうか。この辺り、さらに面倒な事に人間の首の筋肉はこれまた面倒な構造だったりするのです。この結果、頭から胸と肩にかけての形状は人体で最も難しい形状となっています。この辺りは未だに苦手です。世の中には人物の上半身だけの絵が溢れてますが、皆さん、よくそんなもの描く勇気があるなあ、と思っております。

では実際に筆者が人体を描くとどうなるか、まあ何とか大筋で人体の形状は頭の中で「像」になっているので、一見しただけでは矛盾に気づかないであろう絵ならいきなり描けます。よって下絵はこんな感じで図形の下絵無しで描けます。この辺り、どれだけ頭の中に「像」があるのかが描き手の画力の基準の一つだと考えていいと思われます(ちょっと脱線するとこれはジョン・ボイドの言う所の概念化である)。

それを仕上げるとこんな感じ。なんか下絵と全然違う部分がありますが、筆者としてはいつもの事なので気にしない。とりあえず長方体と円筒から始まった絵の描き方で、この程度は普通に描けるようになるよ、という作例だと思ってください。

でもってこれで終わりにしようかと思ったんですが、何か後で怒られそうなので筆者の考える「ステキなイケメンなキャラがラブフォーエヴァーな絵」を最後に描いておきます。どうかね、Rちゃん。

といった感じで本年の原点回帰大作戦は終了です。本当ならはここに「陰影表現」と「空間把握」が加わるんですが、その辺りはまた来年以降にしましょう。もはや限界ですので。では、また来年。


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