■ステキなエネルギー

さて、このニュートン力学入門編も、ようやく最終段階です。
ここからは、ニュートン力学の外に出てゆき、
後に追加された概念であるエネルギー(E)と仕事(W)、
そして熱(Q)を見ておきましょう。

さて、エネルギー、仕事、熱、これらも全て日常用語ですが、
力学的な意味とは微妙に異なる部分があるので、
それをキチンと確認しておきましょう。

とりあえずは、エネルギー(E)から。

これは物体を動かすのに消費される「量」の総称であり、
これと引き換えに仕事(W)を行なう、と考えられる「量」です。
つまりエネルギーが無いと、運動はできません。
略号はエネルギーの頭文字からEが使われます。



世の中にエネルギーという明確な単一の物体、存在ががあるわけではなく、
力を発生させ、運動(仕事)を引き起こす「量」は全てエネルギーです。

よって内燃機関、エンジンを動かすガソリンもエネルギーですし、
人間を動かす糖分もエネルギーです。
それどころか、そこに置いてるだけで落下という運動を引き起こす
重力すらもエネルギーとなります。



実は数式で考えるなら、エネルギーは単純明快です。

物体を動かすには力(F)が必要ですが、その力は蓄積される、
というのは既に何度も説明しました。
力を時間で積分したもの、時間による蓄積が運動量(mv)でしたね。

で、時間による積分があるのなら、距離(L)による力の積分もあるのでは、
という考え方も当然ありで、それこそがエネルギーです。

つまり、どれだけの時間、力を使い続けたか、が運動量(mv)で、
どれだけの距離で力を使い続けたか、を見るのがエネルギー(E)です。

よって、それを求める式は

力(F)×距離(L)=エネルギー(E)

単位は、

力: kg m/ss × 距離 m =エネルギー kg mm/ss

となります。
まあ、単純明快ですね。

ついでながら、スルドイ読者の方が複数いるのを
最近痛感したので、念のため書いておくと、
この単位は、質量×速度の2乗 を意味してます。
(kg×m/s×m/s=エネルギー)

だったら、その計算式でもエネルギーは求められるのでは?
と思いついた方、お見事です。
その考えは文字通り(笑)半分だけ正解で、
残念ながら、それは光速運動でのみ成立する数式なのです。
この点はまた、後で考えましょう。

ちなみにエネルギーはSI系の単位だとジュール(J)が使われ、

1J=1kg mm/ss

となり、昔ながらのカロリー(cal)単位だと、

1cal =4.184kg mm/ss=4.184J

という感じになります。
カロリー単位はやたらと計算が面倒になるので、
基本的には使わない方がいいでしょうね。

さて、事実関係はこんなとこですが、
数式だけじゃイマイチわからないと思います。

ニュートンがその存在に気が付かなかった
(いいとこまでは行ってた)
エネルギーとは何か、というのを、
もう少し具体的に見ておきましょう。

とりあえずエネルギーは大筋で3つに分けることが可能で、
位置エネルギー、運動エネルギー、熱エネルギーといった
だいたいの住み分けがあります。

この中で位置エネルギーだけはちょっと特殊なものです。
運動エネルギーと熱エネルギーは、
その供給源は原子レベルの内部エネルギーに帰結しますが、
位置エネルギーは通常、重力や物体の弾性に由来します。
特に重力エネルギーの場合、話が簡単になりやすいので、
とりあえず、そこから見て行きましょう。
(あくまでニュートン力学では。その先では重力は悪夢だ)

その前に、確認することが一つだけ。

重力による、という事は重力加速度が絡みます。
重力は物体に常にかかり続ける力であり、
常に力がかかってる以上、その速度はどんどん上昇し続ける、
つまり加速度運動になります。

これまで説明が簡…否、読者の皆さんに理解しやすい
常に同じ速度の等速運動ばかりを見てきました。

が、ここからは加速度による速度の変化がある運動、
加速度運動が問題になってきます。
ただし、説明が楽…否、理解が簡単な一定の加速度による運動、
等加速度運動で、この記事では見て行きますよ。

そうなると、加速度運動における移動距離というのが
重要な要素になってきます。
加速度(a)が分かる以上、後は時間(t)によって
速度は簡単に求められるのですが(速度=加速度×時間)、
今度はその間の移動距離が問題になってくるのです。

従来の等速運動の場合、単純に等速の速度(v)×時間(t)で移動距離が
求められましたが、加速度のある運動ではどうなるのか。
つまり、加速度から、各瞬間までの移動距離を知るにはどうすりゃいいのか。
速度が秒単位で変化してる以上、単純な掛け算は無理そうです。

そんなわけで、ここで再び積分(蓄積)の考え方が登場です。

Y(縦)軸を速度、X(横)軸を経過時間としたグラフで
等速運動で進んだ距離は、グラフから以下のように
考える事が可能でしたね。





速度(v)×時間(t)=距離 ですから、
グラフの線とX(横)軸の成す面積が進んだ距離となったのでした。

では、加速度運動では、どうなるのか。
まずは地球上の重力加速度における落下で考えてみましょう。
重力加速度は9.86m/ss、1秒ごとに9.86m/sずつ
速度が上昇する、というものでした。
面倒なので(手抜き)、ここでは10m/ss、秒間10mの加速で
考えてしまいましょう。

まず、加速度運動における時間ごとの速度を求める式は、

加速度(a)×時間(t)=速度(v)

ですから、普通の一次関数となります。
グラフはこんな感じですね。
上のグラフと同じように、Y軸が速度、X軸が時間です。



さて、では積分(総計)した距離はどう読み取るのか。
先に見たように、速度と距離の関数のグラフでは、
グラフの線とX軸の成す面積が
その時間までに進んだ距離ですから、こうなります。



普通の一次関数のグラフの積分=距離の面積は
三角形の面積になるわけです。
となると、一定時間内に進んだ距離は
三角形の面積を求める式にすれば求められます。

1/2×速度(v)×時間(t)=進んだ距離(L)
(1/2vt=L)

ですね。
これが加速度運動における進んだ距離の求め方となります。

ただし、加速度はわかっても速度がわからん、
というケースも多いので、上の式を加速度から
求める形に変形してしまうのが普通です。

まず、

速度(v)=加速度(a)×時間(t)

でしたから、

1/2×速度(v)×時間(t)=進んだ距離

この距離を求める式の速度部分を上の式で置き換えてしまい、

1/2×加速度×時間×時間=進んだ距離
(1/2att=L)

とするわけです。

さて、これで等加速度運動における
進んだ距離の計算が可能になりました。

ここからさっそく、位置エネルギーについて見て行きましょう。


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