■円周怪獣ラジアン

(2014.1改訂版)

ラジアン(rad)は量の単位としてはやや特殊なものです。
これは、同じ中心角の円弧(円の一部)の長さと半径の長さの比率は
常に一定である、という原理に基づいた単位だったりします。
何のこっちゃ、という感じですね(笑)

ここら辺り、妙に理屈っぽくて理解に時間がかかる単位なので
少し詳しく説明しておきましょう。
理解してしまえば、なるほど、便利な単位だ、
というのが分かると思います。

まず、前提条件その1。
円周の全長を1とした場合、特定の中心角に対応する弧の長さは一つしかない。




この場合、円周1が360度なので、半円の弧の長さ=0.5の時、中心各は180度だし、
1/4の弧の長さ=0.25ならば90度になります。
つまり円弧の長さがわかれば、中心角の角度も決まるのです。
だったら、これを角度の変わりに使えるのでは?という気がします。

ところが、現実には円周の長さは1に限らないため、
円の大きさによって円弧の長さが異なってしまい、実用になりません。

が、ここで円周の長さを求める計算式を思い出してみましょう。

2×円周率(π)×半径(r)=円周の長さ

でしたね。
でもって、この式の両辺を半径で割り算して、
を円周と半径の比を取る式(割り算)に変形してみます。

2π=弧の長さ÷半径(r)

おお、この式によると、どんな大きさの円でも、半径で割り算すれば、
円周率の2倍、2π=約6.28…になってしまう、という事です。
これは、あらゆる円、ノートに書いた円も、銀河を超えるようなサイズの円も、
すべてその円周を半径で割ると、2πになる、という事を意味します。

次に、半円だとどうなるかを考えて見ましょう。
半円の円弧の長さは、円の半分ですから、この長さを求める式は、

2×円周率(π)×半径(r)÷2=半円の弧の長さ

これをまた弧の長さと半径の比を求める式にすると、

2π÷2=π=半円の弧の長さ÷半径(r)

半円の弧の長さと半径の比はπという事になります。
すなわち円周と半径の比、2πの1/2であり
これは円の中心角360度、半円の中心角180度の関係と同じです。
そして計算式からわかるように、この関係は
弧の長さが1/4、1/8と変化しても常に両者が同じように変化します。

すなわち弧の長さと半径の比率(割り算)の数字は、常に一定であり、
その比の数字は、常に特定の中心角に対応する、という事になります。

360度=2π
180度=π
90度=1/2π

といった感じですね。
ならば、これを角度の数字の変わりに使えば、度数などという
360度で終わる妙な単位体系を使わなくて済むぜ、という事になるわけです。
これがラジアンでして、その角度はすでに見たように、以下の計算で求められます。

ラジアン(rad)=弧の長さ÷半径(r)

単位としてのラジアンはこの計算で求められます。
そして角度からの換算は

360度=2π(6.28…)rad
と覚えてまえば、求める角度、n度は

2π ×(n度÷360)

で常に計算できる、という事です。

またメソポタミア人(多分…)の知恵のおかげで
360度は1、2、3、4、5、6、8、9、10と、10までの数字のうち、
7以外の全ての数字で割り切れますから、
おおよその角度を計算するのも簡単です。

1π(3.14…)rad=180度
1/2πrad=90度
1/3πrad=60度
1/4πrad=45度
1/5πrad=36度

といった感じになって行くわけです。

ちなみに、どうでもいい話ですが、旧約聖書における7へのこだわりは、
メソポタミア文明の末裔であるユダヤ人が、
この360を割れない神秘的な数字、7にこだわったからだ、
と個人的に思ってるんですが、どうでしょう(笑)?

が、そんな面倒な計算までして、なんでラジアンを角度に使うの?
というと、先にも書いたように、角度に関する計算がとても楽だからです。
というか「度」を使うと、計算結果の単位に「度」の次元が入り込んでしまい、
45度/秒(s)とか、45度/ssとか、どう扱ったらいいんだこれ、
という変な単位で溢れかえる事になってしまうのです。
45度/秒(s)と1m/秒(s)はどっちが速いの?と聞かれても、
困ってしまうわけで。

ところがラジアンの場合、この問題が生じません。
理由は簡単で、上の式を単位で見ると、

ラジアン(rad)=円周の長さ(m)÷半径(m)

であり、前回説明した次元の割り算のルールによって、
長さの次元単位、メートルが消えてしまい、
これは無次元の数、単位なしのただの倍数となるのです。
よって、あらゆる量を単位を変えずに計算し放題、となります。

さて、最後にラジアンの実力を知るのに一番わかりやすい、
角速度の問題を見ておきましょう。

円軌道の運動をする物体の速度はm/秒(s)ではなく、
角速度と呼ばれるものを使います。
これは1秒間に中心角にしてどれだけ進んだか、
を見るものでして、通常、ラジアン単位で表記され
1秒間にθ(シータ)ラジアン分の角度を進んだなら
この時の角速度はθrad(ラジアン)/s(秒)と表記されます。

この時、物体が進んだ円弧の長さを求める計算を考えてみましょう。
ここでは話を簡単にするため、単位円、半径が1mの円で考えます。
ラジアンを求める式は

θラジアン(rad)=円弧の長さ÷半径(r)

これを円弧の長さを求める式に変形するため両辺に半径を掛け算して

θrad×半径(r)=円弧の長さ

となります。
図にして見ると、




このようにラジアンで角速度を求めると、
角速度と半径から、通常の単位の速度m/秒(s)までが
あっさりと求められてしまいます。
これは度の単位では簡単には計算できませんから、
ラジアンの大きなメリットです。

ちなみに角速度はω(オメガ)というギリシャ文字で
表される事が多いので、この記事でもそれに従います。
理由は知りません(笑)。

上の単位円の円弧上で仮に秒間45度、π/2進んだなら、円弧の長さはπ÷2=1.57…
であり、その速度は秒速約1.57m/sに等しい、とわかります。
よって上でみた質問、1m/sとどっちが早いの?と聞かれたら、
半径1m以上の円なら、間違いなく角速度が上、と答えられるのです。

とはいえ、どうにも理屈っぽくて、よくわからん、という
印象がある単位がラジアンなのも事実で(笑)、
これは実際に計算に適用してみないと、なかなか理解できません。
そこらあたりも含めて、次ページからは円運動を少し考えてみましょう。


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