■角度を計算するために

さて、今回は直線運動以外の運動で、
もっとも単純で、基本となる正円運動について見ます。
ただし、これも本格的にやるとベクトルの積やトルク(回転力)という
意外に面倒な問題が出てくるので、
あくまで入り口まで、としておきます。

ちなみに、3Dのシミュレーション動画をキチンと
物理演算でやろうと思うと、
ここらから現実の模倣がかなり困難になってくる
という鬼門のスタート、という辺りでもあります(笑)。

もっとも家庭用のPCのソフトでできるリアルタイムの物理演算は、
それほど複雑なことはそもそもできませんから、
それで現実世界を模倣するぜ、と考えるのは、
50ccスクーターで鈴鹿8時間耐久レースに出るくらい無謀ですが…。

入り口のみ、とは言えそこにはさまざまな計算が登場します。
そして回転をともなう運動ですから、
当然、そこには角度の問題が出てくるのです。



とりあえず、直線運動以外の基本的な運動、
等速円運動を少しだけ見ておきましょう、というお話です。

ちなみに、慣性系のとこで説明したように、
あくまで外部から円運動を観察する、という条件となります。
回転体の内部から見るわけではない、ということです。

ついでに地球やコマの自転のように物体がその場で回転運動するものではなく、
飛行機や車のように、中心点に対して物体がグルグル回る運動の話です。
これを地上の別の視点から見る、という感じですね。
(つまり連続体、剛体ではなく、質点の円運動。質点については後でまた)

ここら辺り、人工衛星などは、どの視点から見るか、
衛星内部から見るか、地上から見るか、神様の視点(笑)から見るかで、
その運動の計算が全く変わってしまうので注意が要ります。

力学は数字と数式で世界を擬似的に模倣してるだけの
理論体系ですから(すなわちデジタル化、数値化だ)、
繰り返しますが、その限界は意外に低いのです。
ある程度、本気で現実を模倣しようと思ったら、
あっという間にカオスの世界に入ってゆくハメになりますし。



よって、ここで角度を測るのに使われる単位を確認しておきましょう。
角度の次元の単位としては「度」「 °」が使われる事が多いのですが、
これはいろいろと問題と多かったりします。
そもそも、何で360度が円なの?という理由は単に計算が楽だからで、
昔からそう決まっていたから、としか言いようがありません。
この結果、他の次元との計算が妙に面倒な事になりやすいのです。

例えば、円周の上を走るような運動の場合、通常は角速度を用います。
これは1秒間にどれだけの距離を移動したか、
ではなく、どれだけの角度分の円周を回ったか、という単位です。

この場合、角速度を度数で表示されているといろいろ面倒です。
例えば速度は、30度/秒(s)と書かれても、
それって10m/秒(s)とどっちが速いの?
と聞かれた場合、判断ができません。
というか、基本的に「30度」という量に距離(長さ)の
情報は含まれていないのです。

さらに加速度60度/ssとか、度をつかった運動量とか、
それぞれ独立した単位になってしまうと、
何がなんだかわからん、という事態がまっています。

そこで、通常、力学的な計算では、角度の次元の単位に
ラジアン(radian)を使います。表記はrad。
後で見るように、これなら長さの情報を取り出す事ができるわ、
無次元の単位だから、単位に変化が生じず、
計算が楽だわと利点が多い単位です。
ちなみにこれ、19世紀に英語のradialから造られた
造語だと言われてますが、詳細は不明。

この日常的にはまず使わないものの、力学的な計算には
必要不可欠であり、実際、便利な角度の単位、
ラジアンについて、ちょっと詳しく見て置きましょう。


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