■次元と単位

さて今回は、次元と単位の説明から。
ただし、この場合の次元(Dimension)は
直線の1次元、平面の2次元、立体の3次元のことではなく、
質量、長さ、時間、といった「量の種類」を指します。

これまでに見てきた「量の種類」はニュートン力学の基本3要素、
質量(m)、長さ(L)、時間(t)
そしてそこから計算で求められる
速度(v)、運動量(pまたはmv)、力(F)、加速度(a)
の7つですが、これらがそれぞれ次元と呼ばれます。

当たり前ですが、次元が違えば種類が違う「量」であり、
その違いは単位から判断する事になります。
ここで、それぞれの次元の単位を確認して置きましょう、
まず基本3要素の質量はkg、長さはm、時間は秒(s)でした。
それぞれの量、すなわち次元は固有の単位を持ち、
3kgの時間、なんてものは存在しないわけです。

そこから計算で出てくる量に関しては、
速度がm/秒(s)、運動量がkg・m/s、
力がkg・m/ss(秒(s)の2乗)、そして加速度がm/ssですね。
ここで、計算で求められる量の単位は、
ほとんどが計算式そのまんまになってるのに注意してください。

これによって、その次元の持つルーツがわかり、
それがどんな種類の量なのか、の見当がつきます。
ただし、前にも書いたようにSI系の単位ではこれができませんから、
理論的に力学を理解しよう、というなら使わないほうがいいです(笑)。

他にも同じ次元でも異なる単位が用いられることは珍しくありません。
例えば質量にはt(トン)もあればg(グラム)もあり、
さらにアメリカなどで今でも使われるlb(ポンド)などの単位もあります。
(ここで質量と重量は混同しないこと。オンスなどは重量以外ではまず使わない)

ここら辺り、それぞれの次元でどの単位を使うのかを決めておかないと、
グダグダのゴチャゴチャになりますから、注意が要ります。



ニュートン力学は次元と呼ばれるさまざまな「量」の変化を扱うものです。
さらに数式を使ってそれらの「量」をあらかじめ計算で予測できる、というのが
最大の特徴で、利点でもあるわけです。
この起こりうる事象を予測できる、というのは極めて重要で、
これによって現代の機械文明は大発展した、と見ていいでしょう。

なにせ実際にやってみるまでわからない、ってんじゃ、
ほとんどの機械は設計不可能ですし、
宇宙空間まで飛んでゆくロケットなんかはほぼ開発不可能です。

一定確率以上の正確さで結果予想ができる、という理論体系の登場は、
人類にとって最大級のインパクトだったと考えるべきと言えます。

ここら辺り、最初は惑星の位置を正確に予測したい、といった要求から
産まれた理論体系が、意外な形で人類を進化させちゃった、
という見方もできますね。



そして、次元の量の計算にはいくつかのルールがあり、
これが極めて重要です。

まず当前ですが、次元の異なる量の足し算、引き算はできません。
距離と時間による4m+3秒(s)=なんて計算は不可能なのです。
もちろん同じ次元の量なら計算可能で、この結果、
計算の後も単位が変わらない、という事になります。
4m-2m=2m であり、単位は常にmのままです。
まあ、ここまでは当たり前といえば当たり前ですね。

が、実は次元で重要なのは、掛け算、割り算ならば、
異なる次元の量でも計算ができてしまう事、
そして計算によって単位が変化する点です。

例えば進んだ長さ・距離(L)とかかった時間(t)の足し算は無理でも、
割り算することは可能で、これは新しい次元の量、速度(V)になります。
これを次元の単位の計算で見ると

m÷(秒)s=m/s

といった速度の新しい単位が生まれるわけです。
つまり次元の割り算、掛け算は新しい次元の量と単位を産み出す、
という事にもなるのです。
ただし、当然、何でもかんでも成立するわけではなく、
例えば進んだ距離(L)とかかった時間(t)を掛け算したところで、
意味がないので、そんな次元は存在しません。
(そもそも運動における距離の変化は時間の経過を暗黙の内に含む)

さらに計算によって出てくる単位は常に新しいもの、とは限りません。
同じ次元の量での割り算となる場合、
その次元は消えてしまてしまうため、
既にある別の量に変化するだけ、という場合も多いのです。
例えば、速度 m/s に時間 秒(s)を掛け算すると
その次元の単位の計算は以下のようになります。



といったように、秒による秒の割り算となった結果、
両者が1となってしまい、この次元が消えて距離(長さ)のみが残り、
単位はmとなってしまうのです。
実際、速度に時間を掛け算すると、それは移動距離になりますから、
mが次元の単位として残るこの計算は正しい、という事になります。

この割り算の結果、次元の単位が消えてしまう、というのも注意が要ります。
ここでは距離が残ったため、単位はmになりましたが、
例えば、速度で速度を割り算すると、ただの数(倍数)のみが残ります。
こういった量を「無次元の量」と呼び、次元を失った単なる数字(倍数)として扱います。
この無次元の数は、掛け算、割り算を行なっても、
他の次元と単位に何も影響を与えません。
この「無次元」の存在もちょっと覚えておいてください。

さらに、計算で出てきた単位から次元を知ることで、
全く違ったと思っていた量が実は同じ次元だとわかったりします。

たとえば、連載当初、力(F)の量の計算は
運動量(mv)を時間で割り算(微分)したもの、としました。
が、後で見たように、質量(m)×加速度(a)でも全く同じ
単位の次元の量が求められると判明したのです。

単位の計算で見ると、こんな感じでしたね。



このように計算した次元の単位はこのように、同じものになるのでした。
単位が同じなら、実は両者は同じもの、力(F)を求めていたのだ、
というのがわかったわけです。

このように、計算して出てきた単位を見て同じ次元だったとわかる、
というケースは意外に多く、そしてこれによって
実にいろんな事がわかったりします。

特にこの後、仕事とエネルギーではとても重要な
考え方になるので、覚えておいてくださいませ。

さて、次元の話の最後に、ちょっとしたオマケとして、
ニュートン力学、仕事とエネルギーが無い力学における
各次元の関係をこんな格子図にできる、というのを載せておきます。

が、私以外でこんな図を作ってるのを見たこと無いので、
これで理解しやすいのは自分だけ、という可能性も有り(笑)、
まあ、参考程度に考えて置いてください。
私自身はこれによって、一気に理解が進んだのですが…



基本3要素のうち長さ(L)がありませんが、
これは速度に取り込まれてしまってると思ってください。

で、計算で求める4要素は、時間を縦方向に、質量を横方向に置き、
掛け算、割り算でこのような格子状の関係を作るのです。
計算は矢印の方向に対して行ないます。

当然ですが、掛け算、割り算の逆が常に成立すること、
それはすなわち微分と積分の関係にもなってるのだ、
という事に注意しておいてください。

で、お次はその微分(びぶん)と積分(せきぶん)の話を少しだけしましょう。


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