■万物はニュートン力学を含めて流転する

さて今回の記事は、当サイトの航空機関連の記事を読むにあたり
必要最低限と思われるレベルの流体力学の基礎知識を説明しよう、というものです。

これらを理解するには、ニュートン力学と熱力学のエネルギーの概念を理解してる、
というのが大前提になるので、できれば こちらの記事を、
先に理解した上で読んでいただくと助かります。

そんな記事読んでないけど私はニュートン力学の黒帯を持ってます、
といった人ならば、当然、何の問題もありませぬ。
といっても最低限のフォローはするので、面倒だ、という人はそのまま読み進めてください。

最初にニュートン力学&エネルギー概念における、
力とエネルギーと運動(仕事)の関係を確認して置きます。
これが全ての基本なのです。



まず、最初は何の力もかかって無い物体を考えましょう。
当然、これは永久に静止したまま、何も起きません。
「何も力がかかってない」のですから、引力も無い無重力空間であるのに注意。
地球上ではこの条件を完全に満たす事はできません。

次に一瞬だけ、1秒とかだけ横向きに力を加え、以後、再び一切力を加えない場合、
物体は一度その方向に動き出したら、永久に同じ速度で直線運動を続けます。
これも「何も力がかかってない」のですから、空気抵抗力も、摩擦力の抵抗も無い、という条件です。

この二つの状態がいわゆる慣性状態で、

●物体は力を加えない限り、永久に静止したままか、
一度動き出した方向に永久に等速で直線運動を続ける


というものです。ニュートン力学においては、この「力が加わってない状態」
すなわち慣性状態から始めて、そこに色んな力を加える事で、加速する、減速する、曲がる、
さらには三回転半ウルトラジャンプを決めるといった、各種運動へ進んでゆく事になるのです。

例えば等速直線運動中の物体に対し、
進行方向と同じ向きに力を加えれば加速運動を始めますし、
逆方向に加えれば減速運動に入ります。
さらに進行方向と異なる向きに力を加えれば曲がりながら旋回運動を始めるでしょう。
これらの力が加わらなければ、永久に慣性状態は破れませんから、
あらゆる運動には必ず「力」が必要な訳で、ゆえに「力学」なのですね。

さて、ではその力をどこから持ってくるかと言えば、
力は必ずエネルギーの消費と引き換えに発生します。
エネルギー無しで生じる力は存在しません。

すなわち物体の運動(仕事)には「力」が必須であり、
その「力」の発生には「エネルギー」がこれまた必須なのです。

まず引力や磁力のように問答無用でこの世界に存在する「力」には位置エネルギーがあり、
これが続く限り「力」が物体を引っ張り続けます。
この場合、エネルギーの大小は距離(高度)で決まり、
高度10mからではあっという間に地面に激突して位置エネルギーはゼロになりますが
1000mからでは地面まで結構な時間が掛かりますから、
より長時間エネルギーが続く、すなわち力が掛かり続ける事になります。

それ以外のモノとしては、人間の体や航空機のエンジンのように
化学反応のエネルギーを力に変換して運動を行うものがあります。
人間の場合、食事をエネルギー源として、その養分を酸素と化学反応させる事で、
筋肉に力を生じさせ、これで運動を行っています。

航空機のエンジンなどではガソリンや灯油をエネルギー源として、
これと酸素に急速な化学反応を起こさせる、つまり爆発的燃焼をさせて、
その膨張力を回転という形で取り出して運動に繋げます。
これらの力はエネルギー源からのエネルギーの供給が続く限り維持される、
何らかの「燃料」が必要な「力」ですね。
ちなみに燃料はエネルギーを産み出す「エネルギー源」であって、
力の発生と運動(仕事)に必要なエネルギーそのものでは無いのに注意。

このようにエネルギーを消費することで「力」を出し、
その「力」で行われる運動を「仕事」と呼びます。
物を持ち上げるのも「仕事」ですし、人が歩くのも、飛行機が飛ぶのも全て「仕事」です。
ここで、エネルギー、力、運動(仕事)の変換関係をまとめると、以下のようになります。

エネルギー 力  運動(仕事)

であり、実はこれは逆にしても同じで、

エネルギー  力  運動(仕事)

ともなります。
エネルギーと仕事は同質の量が形を変えただけなので(単位&次元が等しい)、
それぞれは力を介して簡単に姿を変えます。
そして仕事をする、というのは別のエネルギーへの変換を意味しています。

例えば、人間が体内のエネルギーを使って「力」を出し、
10sの鉄球を1mの高さに持ち上げた場合を考えましょう。
体内のエネルギーはその「力」による「運動(仕事)」のために消費して失われます。
が、その仕事によって鉄球が1mの高さの位置エネルギーを得てますから、
エネルギーが消えたわけでは無く、形を変えて維持されてるわけです。
(厳密にはわずかに体温が上昇して、一部は熱エネルギーとして逃げてしまってるが)

これによってエネルギーの総量は常に一定に保たれており、
あるエネルギーが力に変換され、仕事を行って失われても、
力による仕事(運動)を通じて別の形のエネルギーとなります。
結局、同じ量のエネルギーが常に存在し続けることになるのです。
これが全ての物理学の根本を成すエネルギーの保存則となります。

といった辺りが、ニュートン力学と熱力学の基礎による、
エネルギーと、力と、運動(仕事)の関係です。
これが判らないと、以後の話は全く判らなくなりますから、皆さんの努力に期待します。


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