■歴史ある機体アル



お次はあまりにも有名な戦前の傑作旅客機、ダグラスDC-3。
こちらもモノコック全金属製であり、主脚も引き込み式で、
さらにはフラップまでついています。

1936年運用開始ですが、これのルーツとなったDC-1は
先に見たボーイングの247と同年、1933年にデビューしています。
そしてボーイング247に対抗するため、機能拡張版のDC-2、
そしてこのDC-3が開発される事になったようです。

ちなみにDC-3は当初、ニューヨーク〜ロサンジェルスを夜間に飛ぶ
寝台航空機として開発されたものらしいです。
当時の時速300q前後の飛行機ではアメリカ大陸横断も1日がかりだったわけですが、
鉄道で数日かかった距離を1日で飛んじゃうわけですから、
驚異的な進化であり、以後、アメリカは旅客機時代に突入します。
ただし、この時代はアメリカ横断でも何度も給油のために着陸の必要があり、
少なくとも10箇所以上、給油のための飛行場が西海岸と東海岸の間にありました。

でもって、後の全翼機大好きオヤジ、ジャック・ノースロップ率いるノースロップ社は
当時、ダグラスの系列会社となっており(株式の51%をダグラスが保有)、
このため、ノースロップが主翼を中心にDC-1旅客機の基本設計をやってます。
ノースロップ、全翼機以外でも航空機の歴史において、
結構、いい仕事をしてるのです。
ただし、その後のDC-2、DC-3への機体拡張の設計に
彼が関わっていたかはよくわかりません。

でもって、この機体のデビューのタイミングは第二次大戦直前であり、
このため、C-47という名前で軍用輸送機としても大量採用されました。
アメリカ軍の場合、スカイトレインというニックネームの方が有名かも。
(イギリスではダコタと呼ばれた。)
ちなみにDC-3は日本も1937年からライセンス生産したため、
これを基に零式輸送機という軍用輸送機が造られています。
なので、アメリカ、イギリス、ソ連はもちろん、日本でまで使われた、
という変わった機体になっているのでした。

ついでに旅客機としては大ヒットといえるDC-3ですが、
それでも600機前後造られただけなのに対し、
軍用のC-47は軽く1万機以上造られています。
現在でも可動状態とされるDC-3は世界中にありますが、
ほとんどはオリジナルのDC-3ではなく、
戦後、大量に払い下げられた軍用のC-47からの改造機です。

展示の機体も民間旅客機であるイースタン航空の塗装がされていますが、
機体の来歴の説明がないので、
どちらなのかは私には見分けがつきませぬ。



そのノースロップが1930年に初飛行させた高速機、ノースロップ アルファ。
ちなみに表記はギリシャ文字ではなく、Alphaと英語で書くようです。

パイロットの位置から、一人乗りの大型機、と思ってしまうかもしれませんが、
よく見ると主翼の上に窓があるのに気が付きます。
実はこれは高速旅客機でして(笑)、1931年に運用開始された当時は
ニューヨークとサンフランシスコの間を13回の給油を行ないながら23時間で結び、
当時としては驚異的な短時間での飛行とされていたようです。

とはいえ、6名しか乗客は乗れず、主脚も出しっぱなしの固定式ですから、
最高速度は300q/hにすら達していませんでした。
よって間もなくボーイングの247やダグラスのDC-1が登場すると
一気に旧式になってしまい、最終的には17機だけ造られて終わります。

逆に言えば、この機体も極めて貴重なもので、多分、唯一の現存機です。
ただし、当初の旅客機型ではなく、乗客は2名だけとし、
残りのスペースは郵便を主とした貨物室に改造した4型というタイプだとか。

ちなみに、その高速性に注目した軍は3機を購入、C-19と命名して、
要人輸送用に1939年まで使っていたようです。



お次はちょっと時代がもどって1927年から運用されていた複葉機、
ピットキャーン(Pitcairn)社のPA-5メイルウィング(Mailwing)。

正直、聞いたこともないメーカーの聞いたこともない機体なんですが、
当時としてはかなりの数といっていい100機を越える生産数を誇る機体。
どうもアメリカの郵便事業の航空輸送専用機として開発されたものらしく、
アメリカ中で郵便の航空輸送に使われていた、との事。

ちなみに、民間用の機体もあったらしいんですが、ようわかりませんし、
正直、調べるのも面倒なので、知らなかった事にします。



こちらもやや古い1926年に初飛行したフェアチャイルド FC-2。

現在の民間用小型機にまで通じる、
高い位置の主翼、密閉型の操縦室と客室というスタイルを
最初に造った機体だそうな。
確かにほぼ同時期の機体、上のPA-5メイルウィングと比べ、
はるかに近代的な印象があります。

ついでに航空機メーカーのフェアチャイルド(A-10はここの製品)が
最初に本格量産した機体でもあるそうな。
ちなみに、そもそもフェアチャイルドは航空写真の会社で、
写真が取りやすい機体を探していたのに、ろくなものが無く、
アタマに来た当時の社長が、自分で造る事にしたものらしいです(笑)。

このため、下をさえぎる主翼を上に持ってきて視界を確保し、
天候や気温に関わらず長時間飛行できる密閉コクピットにしたのだとか。
それがFC-1と呼ばれる機体で、その量産型がこのFC-2になるようです。



いきなり近代的な機体になりますが、どうもこれも他に展示場所が無く、
ここに持ってこられたような印象が…。

ドイツ製のエクストラ(Extra)260というアクロバティック用の小型機です。
聞いたことの無い機体だな、と思ったんですが、
どうも個人が1機ごとに受注生産してる特別機のようで、
エクストラというのは、その設計&製造を行なったドイツ人の名前だとか。
…員数外、特別扱い、という意味のExtraはドイツ語でも同じ意味ですから、
変わった名字があるものですね…。

機体そのものはモノコックではなく、鋼管による骨組み構造、
主翼は木製とやや古臭い設計ですが、
尾翼や主翼のエルロンなどに剛性の高い複合素材を使ってるんだとか。

これは1991年、女性として最初にアクロバティック飛行選手権で優勝した
アメリカの飛行家、パティ ワグスタッフ(Patty Wagstaff)が
乗っていた機体だそうで、彼女は1992年も連続優勝してるそうな。
(さらに1993年は別の機体で優勝)

1986年に初飛行したそうですが、アクロバティック用らしく、
極めて運動性がよく、高度、速度のデータが不明ながら、
最大で秒間360度のロール(プロペラから尾翼までの線を軸に1回転)、
さらに1200m/分の上昇力を持つそうな。

ちなみにこのロール速度は、第二次大戦時のあらゆる戦闘機より早く、
上昇力も当時の戦闘機にほぼ匹敵します。
まあ、武装も積んで、長距離飛ぶための燃料も積んでる
戦闘機とは単純比較できませんが、相当な性能ではあるようです。

ちなみに、ご覧のようにガラス越しの青空をバックに
完全な逆光写真となってしまったのですが、きっちり写っておりました。
ジャケットのポケットに入ってしまう5万円切る小型カメラで
コレだけの写真が撮れてしまうのですから、
LX-7すげえと改めて思いました。


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