■空の上の機関銃



さて、機体の紹介が終わったので、今回は意外に充実してる、
そしてご覧のように誰も見ていない(笑)、
スミソニアンの航空機関銃コレクションを見ておきましょう。

ただし私はこの方面は詳しくないので、ざっと流すだけになりますが。

で、最初にちょっとだけ機関銃の基礎知識を。
まずバンバン弾を連射する兵器には、大雑把に機関“銃”(Machine gun)と
機関“砲”(Autocannon/cannon)があります。
厳密な定義はありませんが口径20mm以上が機関砲、
それ未満が機関銃とされるのが普通です。
さらに機関銃にもいくつが口径があり、基本的に大口径になるほど
破壊力は上がると考えていいでしょう。
その代わり、銃は大きく重くなり、反動も強烈になって行きます。

機関銃の口径はフィート法のイギリス&アメリカ、
メートル法のフランス&ドイツでそれぞれ異なるのですが、
同じフィート法のイギリスとアメリカでも微妙に異なったりします。
ここら辺りを、最初に簡単に見ておきませう。

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■アメリカ式

・0.5インチ=2.54×0.5=12.7mm
・0.3インチ=2.54×0.3=約7.62mm

mm単位で呼ぶのはメートル法の国の軍隊の場合で
アメリカ本国では、普通はそれぞれ.50 &.30Caliber と呼びます。
それぞれヒフティー キャリバー、サーティーキャリバーと読みます。
ちなみに、なぜかソ連も基本的にはアメリカ式のようです。

■イギリス式

0.303インチ=2.54×0.303=約7.7mm

なんだよ0.303という数字、という感じですが、イギリスの小銃では
このタイプの口径が採用されます。
ちなみに日本も最初はこれだったのですが、
後にドイツ式に浮気した結果、その機銃ラインナップは
まあ、よくわからん状態に…。

■大陸(ドイツ&フランス)式

・6.5mm
・7.5mm
・8mm

フランスの小銃の規格がこれ。あまり統一感がありません。
なので、ああ、フランスの、ええ、フランスの、という感じで
世界中でシカトされたので、他の国ではほとんど見ないものです。
ええ、それだけです(笑)。

・7.92mm

ドイツの小銃はこれ。
なんでこんな半端な数字なのかは知りません(笑)。
大陸ヨーロッパ国家は基本的にメートル法ですから、
キリのいい数字になるはずなんですが…。
もしかしたら1905年ごろのドイツではまだメートル法以外の、
なにか特殊な長さの度量単位があったんでしょうかね。

で、先に書いたように第二次大戦直前くらいから急激にドイツ贔屓になった
日本の陸海軍でも採用を始めます。

・11mm
主に第一次大戦前後に造られたもので、それまでの小銃より
強力な破壊力を持つ重機関銃として開発されたようです。
普通に考えるとメートル法のフランスが発祥だと思うのですが、
イギリスが先に造っていた、という話もあり詳細は知りません(手抜き)。

・13mm
第一次大戦後、11mm口径をさらに強力にした.
50口径、12.7mm重機関銃がアメリカで開発されたので、
おそらくそれに対抗するためのものじゃないかと思われます。

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口径は他にもいくつかあったりしますが、代表的なのはこんなところでしょう。
当然、口径が違えば弾は別になりますし、
同じ口径でも弾の長さが異なってたりしてると使えません。
とりあえず機関銃にはいくつもの口径があるのだ、
と理解していただけたら、さっそく見て行きましょうか。

まずはイギリス&アメリカの第一次大戦前後の機関銃から。
一番上がヴィッカース 11mm 1918型機関銃。
中央がルイス30口径7.62mm1917年型。
写真一番下がマーリン.30口径(7.62mm) 1917型(.30 caliber marlin Model 1917)。



一番下から見て行きましょうか。
マーリンの.30口径7.62mmは、第一次大戦期のアメリカ製航空機関銃。
マーリンなんてメーカーの機関銃は初めて見ましたが、コルト・ブローニング1895型機関銃の
製造権を同社が購入、これを改良して航空機関銃にしたものだとか。
英語圏の解説を見ると単にコルト・ブローニング1895型の派生型という扱いになってますね。

でもって、この機関銃はプロペラ同調装置、すなわち機首に積んだ機関銃の弾が
プロペラに当たらないようにする装置と相性がよく、
このためアメリカ軍が使用した戦闘機、
スパッドXIII(13)の機首機銃はこれが使われたのだとか。
となるとフランスのスパッドとは機関銃が異なっていた事になりますね。知らなんだ…。

お次は真ん中、これは有名なルイス(Lewis).30口径(7.62mm)1917型。
ルイス7.62mmは1911年には完成してますから、これはその1917年改良型らしいです。
ちなみに、ルイスってイギリスの機関銃だと思ってたんですが、
アメリカ人の開発によるベルギーの会社のものだと初めて知りました(笑)。
で、これをライセンス生産してたのがイギリスの会社、BSAという事らしく、
イギリス用のは当然、.303口径、7.7mmになってます。

これの基本設計はマクリーンという人物によるらしいですが、
それをアメリカ陸軍のルイス大佐が改良(開発時は中佐だったらしい)、
非常に優れた機関銃となりました。
が、ルイス大佐は陸軍の兵器開発&管理部門のエライ人、
クロージャー(Crozier)将軍とウマが合わず、
アメリカ陸軍はこれを無視してしまったのだとか。あれま。

で、トサカに血が上ったルイスはやってられるかとアメリカ陸軍を退役、
ヨーロッパに渡ってベルギーで銃器製造の会社を設立、
それに目をつけたイギリスのBSAと開発、販売に取り組むことになったようです。
ただし、この機関銃はプロペラ同調機銃には向かず、
後部座席や主翼の上に載せて使ったとの事。

ちなみに筒状のカバーが銃身についてるので、水冷かと思ってしまいますが、
航空用機関銃は基本的に空冷ですから、
これは空気の流れを考慮して付けられた銃身カバーです。

**追記**

掲示板でいただいた情報だと、射撃時の銃口に生じる高圧空気を筒内に誘導、
その流速を利用して十分な冷却効果が出るようにされているらしいです。



写真が見えなくなってしまったので、同じものを再掲載。
最後は一番上、イギリスのヴィッカース 11mm 1918型機関銃。

ヴィッカースといえばこれまた.303口径(7.7mm)Mk.I 機関銃が有名ですが、
11mm口径の航空機関銃造ってたんですね。
これはその有名なヴィッカース Mk.I機関銃の拡大版で、
そもそもはドイツのツェッペリン飛行船迎撃用として開発されたらしいです。
よってバルーンガンなる愛称があったとか。
でもってアメリカのコルトがライセンス生産し、アメリカ軍でも使用したとのこと。

ちなみにこれも空冷です。


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