■アメリカの博物館

さて、艦内後部に入ったのですが、ここは後部第三砲塔より前部であり、
すなわち装甲板で囲まれた艦内心臓部(Vital part/ヴァイタルパート)となります。
ただし、船体内第一階層のここはまだ装甲の外でして、
この下の階から装甲板に囲まれた区画です。
なので、この階の床が装甲甲版(121mm)のはずなんですが、
さすがに上を歩いてるだけじゃ判らず…

ついでに艦首部と船体後半では艦内甲半の構造、階層の数が異なるようで、
この甲板はブルズ アイズの表示で1になってました。
艦首部は最初の甲板が2からで、1はありませんでしたからね。



さて、船体後半は本来、一般水兵の生活空間だったようですが、
現状は各種展示が並ぶ博物館のような展示コーナーになってます。
ここらあたりも、ロンドンのHMSベルファストの展示の影響を感じます。



展示コーナーはこんな感じ。
結構、興味深い内容が多かったので、見て損はありませぬ。



最初は戦艦の砲弾から。
でかいなあ、という感じですが、先に書いたように
発射の火薬、装薬はさらに別で、発射ごとに300g近い重量(40.8〜50×6個)の
それが加わるわけですから戦艦の主砲戦は、まさに重労働射撃戦となるのです。
戦争なんてやるもんじゃないですよ。

展示は左から12インチ(約30.5cm)50口径用、14インチ(約35.6cm)45口径用、
そして右端がすでに何度か見てるアイオワ級で使われた
16インチ(約40.6cm)50口径用の主砲弾。

右端の16インチのは榴弾(HE弾)で、1900ポンド約862kgあるそうな。
ちなみにより大きな徹甲弾だと2700ポンド、約1.224トンあったとの事。

ちなみに左端のは、これまた貴重な現存戦艦、
USSテキサスの展示から借りてきてるものだとか。
これもUSSマサチューセッツとあわせて見ておきたい艦なんですが、
いつかは見に行く事が出来るかなあ…。



戦艦主砲が鋼鉄製の装甲板に防がれてしまった場合の写真。
細かいデータが不明ですが、12インチ(約30.5cm)砲で
13インチ(約33cm)厚の装甲板に阻まれた状態だとのこと。

砲弾の弾体が裂けてしまってるのもポイントだそうで、
こうなると貫通はもちろん、起爆も発生しにくくなってしまうそうな。

…この解説を見て、ここの展示、かなり濃厚なのでは?と感じたのですが、
実際、よく説明されており、
またもやアメリカの博物館、侮りがたしと思う事になります。



これもわかりやすかった戦艦の装甲の解説。
せっかくだから、これを使って戦艦の装甲について、ざっと解説しておきます。

まず上の図は距離によって主砲弾の軌道が変わるので、
それぞれに対応した装甲があるよ、という解説。
遠くからのは大きい山なりに飛んでくるから上方装甲で、
近距離からのは小さい山なりに飛んでくるから側面装甲で、
それぞれ防ぐんだよ、という説明。

当然、それぞれに安全圏距離があり、それより至近距離で撃たれると、
艦の装甲は撃ちぬかれてしまいます。
ついでにアイオワ級の場合、やや装甲が弱く、
安全圏距離は結構長め(遠距離)、つまりやや不利となってるようです。

下の図は典型的な戦艦の装甲構造の説明。
正面から見た図で、主砲砲塔とその後部に見えてる装甲司令塔、
さらに艦内各甲板(Deck)の装甲を示してます。

図にある甲板最上部のBomb deck と言う呼び方は初めて見ました。
この図だといかにも立派な装甲がありそうですが(笑)、
実際は37mmほどの甲板で、この上に例の木の板が貼られてます。

爆弾装甲というの名前からすると
航空爆弾はここで防ぐよ、という設計なのでしょうか?
しかし250kg爆弾爆弾ならともかく、500kg、1t爆弾クラスになると
37mmじゃあ、ちょっとムリだと思うんですが…。
まあ、幸い相手は日本海軍なので、500kgですらめったに降って来ませんから、
なんとかなっちゃったんでしょうかね…。

その下のArmor deck がいわゆる装甲甲板で、これがメインの装甲になり、
アイオワ級の場合121mm(船体左右の一部は147mm)となってます。
さらに図ではわかりませんが、
桁(支柱)を挟んだ直下に、もう一枚16mmの装甲があります。
(ウェハースサンドのような構造)

そして、その下にあるのがSplinter deck で、
ここは装甲といっても13mmですから、正直、気休めという感じではあります。
日本語にすると、破片防御甲板といった名称ですから、
どうも爆発で吹き飛ばされた破片をここで防ぐ、という考えみたいですね。

で、図だとその下に装甲部(Armored box)なるものがある事になってますが、
実際に、こういった構造があるわけではありません。

まず、上で見た121mmの装甲甲板の横から艦艇に向って側面の装甲板があり、
これの上部が最大307mm、下部が150mm前後となっています。
下に行くに連れて薄くなるのは、水面下では水が砲弾の運動エネルギーを奪うため、
水深が深くなるほど砲弾の破壊力も弱くなるからです。
さらに側面装甲の内側には、Splinter deck よりやや厚い16mmの装甲板がありました。

でもって上面13mmのSplinter deck と、側面16mmの装甲板に囲まれた区画が
機関やら弾薬庫やら、最重要の装備がある
艦の心臓部(Vital part/ヴァイタルパート)となります。
ここに被弾した場合、これにてオシマイ、という事になる場所であり、
よって厳重に守られてるわけです。
上の図のArmored boxはおそらくこの部分を指していると思われます。

逆に言えば、それ以外の部分、
主砲より外側の艦首と艦尾にはまともな装甲はなく、
それによって軽量化を測っているわけです。
(一番上、37mmの爆弾装甲部だけは艦全体に施されていた可能性アリ)

ただし艦尾まで続く細い装甲区間がアイオワ級の艦底中央部もあり、
どうもこれ、スクリューシャフトの防御じゃないかと思われます。


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