■いろんな事実



さらにはこんなデータの展示もあって驚きました。
これ、アイオワ級の速度とその時必要とされる馬力のグラフなんですよ。
ただし、展示の解説はややピント外れなので、
少しキチンと見ておきましょう。

グラフの横軸が速度で、縦軸が必要な軸馬力(Shaft house power)。
軸馬力とは回転軸で実際に計測される実測値馬力のことで、
エンジン馬力からギアなどの摩擦で損失した分を除いた正味の数字です。
船舶なら実際にスクリューシャフトの持つ仕事量(=馬力)を示します。
単純にエンジン馬力で示される車などとは異なるわけです。
横軸の速度は上がノット単位で下の赤文字がマイル時速単位。

まず注目は馬力の数字で、5万3000〜21万2000hp と、
航空機や自動車ばかり見てきた人間には衝撃的な数字が並んでます(笑)。
まあ4万トンを超える船体を動かす仕事をするのですから、
仕事率=馬力も相当なものが要求されるのは当然ですが。

ついでにグラフの二本線は何の説明もないため
赤が速度の線なのはわかるものの、青線がよくわからず(笑)。
水の抵抗が無いと仮定した場合の理論値ですかね。

注目は25ノット(約46q/h)辺りから急激に必要な馬力が増えてる点です。
そこから先は横軸、速度がほとんど伸びないのに、
縦軸、必要な馬力だけはガンガン上昇してるのがわかるかと。

それでも時速32ノット(約60km/h)辺りまでは馬力が上がれば
ある程度、比例して速度も上がってますが、
そこから先は馬力が倍になっても、速度は10%前後しか上がらない、
という悪夢のような状態になってるのが読み取れるでしょう。

アイオワ級の最大速度33ノットは、
この速度の壁ギリギリのところでにあるのです。
それ以上はどんなに馬力を出しても、ほとんど速度が変わらないので、
単なる燃料のムダになってしまいますから。

すなわち最大速度は、燃費と出力がギリギリ引き合うところで
決められているのだ、というのがこのグラフからわかるわけで、
これ見れただけでも、入場料は安かったと思いました(笑)。

それでも16万馬力近い出力が必要になっており、
33ノットという速度は、当時の戦艦の中でズバ抜けた出力(馬力)を持っていた
アイオワ級だからこそ出来た力技、とも言えます。

逆に言えば、戦艦の最大速度運行は盛大に燃料を消費します。
なので、戦闘機のアフターバーナーのようなもので、
一定の時間以上は使えなかったんじゃないでしょうか。
ここら辺りの資料を見た事がないので断言はしませんが…。

ついでに、なんで突然速度が上昇しなくなるか、
というと造波抵抗が大きくなってくるからでしょう。
船が水から受ける抵抗は3つあって、
摩擦、粘性圧力抵抗、そして造波抵抗です。

摩擦は普通に水と船体表面の抵抗、粘性圧力抵抗は
船体が造る渦によって船体後部に低圧部が生じて後方に引っ張られる抵抗です。
この二つは低速時の主要抵抗なのですが、
高速になってくると、残りの造波抵抗の方が大きく効いてきます。

これはその名の通り、波を造る事で生じるもので、
やや乱暴に言ってしまうと波を造る仕事によって、
スクリューで船に与えられた運動エネルギーが消費されて、
速度に変換されなくなってしまうのです。

高速になればなるほど盛大に波が出ますから、
これはかなり大きな抵抗となり、その結果が上のグラフとなります。

ちなみに、空気抵抗にも造波抵抗があるのですが、
水の約1/800の密度しかないため極めて小さく、
時速800q以上とかにならないと問題になりません。
でもって、さらにその先、超音速になると同じ造波抵抗でも、
衝撃波によるものに変わってしまうわけです。



こちらは、各国の戦艦の性能比較表。

各国を代表する戦艦の名前をあげて、
上から総排水量(基準&満載)、全長、速度、軸馬力、後続距離を比較しています。
記載されてる戦艦は、左からアメリカのアイオワ級、同サウスダコタ級、
イギリスのキング ジョージ級、日本の大和級、
アメリカ戦艦USSマサチューセッツと砲撃戦をやってしまったためか(笑)
枢軸国の中に入れられてしまってるフランスのリシュリュー級、
そしてイタリアのヴィットリオ級、最後はドイツのビスマルク級です。

まあ確かにこうして見るとアイオワ級は
高速戦艦なのだと改めて理解できますが、
やはり、その速度を産み出している
21万2000軸馬力というエンジンパワーが圧巻ですね。
他の艦は15万馬力が限界ですから、圧倒的と言っていいでしょう。

で、一番下にアイオワ級と比べた場合の速度比があり、
当然左端のアイオワが基準値で100となります。
他の戦艦は全て100以下で、おおアイオワって速ええやんけ、
というのを来場者に印象付けています。

…が、アイオワが最速という事実は動きませんが、
その他の点では、この採点表、要注意です(笑)。

問題になるのは大和が82点で最低点にされてる点。
確かにあの戦艦は重すぎて速度は出ないのですが、それでも
サウスダコタ級だってそんなに速くなかったはず…
と思って上から3番目の速度を見たら、あれま27ノットで大和と同速度じゃないの(笑)。
ちょっと待て、だったらなんで大和級が82点でサウスダコタ級が85点なのよ。
あ、よく見たらより高速なキング ジョージV級もサウスダコタ級と同点にされてるジャン。
…どうも開催国に有利になるような採点疑惑ありですぜ、これ(笑)。

ついでに書くと、この表の大和の数字はさらなるズルがありにけり。
表の航続距離はマイル表示なんですが、大和の数字
7200はマイルではなく、ノーティカルマイル(海里)が正解。
よって、マイル表示なら約8300マイルが正しい数字です。
つまり、この表示では本来より短い数字になってしまってます。
単なるミスか、狙ってやったのかはわかりませんが。
まあ、それでもアメリカ戦艦に比べると、
大和の航続距離は極めて短いんですけどね…。

ただし、それ以外の点では、各国の戦艦を大筋で比較するには
いい表なので、興味のある人はざっと見ておいてください。



こちらは僚艦との通信用の信号灯。
モールス信号なんかは極めて短時間で光を発する必要がるため、
素早く閉じる事が可能なシャッターが正面についており、
これの開閉で点滅信号を送ってました。

敵に傍受されて見つからないようにするため、無線を封鎖した後は、
艦隊間の連絡はこの信号灯と信号旗で行なわれてたわけです。



その先で大和の46センチ主砲弾がありました。
91式徹甲弾のようですが、レプリカだとか。

先に見た16インチ(40.6cm)砲弾よりはるかに巨大でして、
1460kgの重量に全長も1953.5mmあったとされますから、
砲弾なんてやってないで、相撲界に身を投じていれば、
綱を取れたでしょうに。

ちなみにこれだけ巨大だと発射のための火薬、装薬は
アイオワ級よりさらに多く、330kgが必要でした。
大和級の場合、6袋の装薬袋を使っていたはずですから、
1個あたり55kgで、アメリカのより重いのです…。
やはり戦艦砲撃戦は重労働ですね。

ちなみに、日本の戦艦主砲弾は着水後、
水面下を走って敵艦の喫水線下の薄い装甲を撃ちぬく、
というビックリドッキリメカ型のものがあり、
この大和の91式徹甲弾もそれでした。

ここの解説では、この点もキチンと説明されており、
アメリカ側としても、興味を引かれる兵器だったのかもしれません。

ただし個人的には水流がメチャクチャな船体周辺を通過して、
砲弾が船体に理想の角度でぶつかるなんて、
とてもじゃないが信じられんと思ってますが(笑)。

この砲弾が開発されるきっかけになった戦艦(船体のみ)土佐に対する実験は、
停止した艦に対する射撃でしたから、
周囲の渦の抵抗は計算に入ってない気がするんですよねえ。

時速40q以上出る軍艦周辺の強烈な渦を、
水中で大きく運動エネルギーを消耗した砲弾が
十分な威力を持って通過できるのか。
とても計算できる世界ではないので、実験で確かめるしかありませんが、
航海中の艦に対しての実験、やったのか、どうもよくわからない。
実際、この徹甲弾、実戦での成果はほとんど無いですし。


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