■暁以前の出撃

最初に断っておくと、計画は完璧だった。
完璧だったのである。
ワシントンの地下鉄にやる気さえあれば(涙)…

今回の旅行にフィラデルフィア訪問を組み込むのは当初から決めていた。
アメリカの東海岸はイギリス並みに
鉄道が発達してるので、移動は楽だと聞いていたからだ。
でもって、調べて見るとアメリカの長距離鉄道も、イギリス式であり、
曜日や時間でかなり料金が変わると知る。

で、さらにいろいろ調べてみた結果、
土曜の早朝、6:20にワシントンD.C.を出て、
フィラデルフィアからは夕方5:35の列車で帰ってくれば、
なんと往復76ドル、ざっと7800円で済んでしまうと気が付いた。
気が付いちゃったのだ。

片道200q、東京〜浜松、大阪〜尾道に近い距離がある移動で、
これは長距離バスなみにお得な値段である。
これを2時間弱で移動なら、新幹線こだま並の速度は出てる。
さらに週末なら博物館も確実に開いてるはずだし、
後で見る、最後まで情報が全くなかった渡し舟も動いてるに違いない。

が、イチマツの不安があった。
北へ向う長距離鉄道アムトラックはワシントンD.C.の北部、
つまり宿のあるアレクサンドリアとは正反対に位置するユニオン駅から出るのだ。
朝の電車で30分近くかかるが…と思って時刻表を確認すると、
5時半から地下鉄の始発はあり、どうやら余裕だと思われる。

完璧じゃないか、すばらいしいじゃないか、神様ありがとう、と
日本からネット経由でアムトラックのキップを購入、
必要なものは印刷して現地に乗り込んだ。

だが、敵の魔の手は、思わぬ方向からやって来たのだ!
顔と頭はあまりに良くないが、妙にカンがいいと誉められる私は、
現地到着二日目に(スミソニアン航空宇宙本館見学の日)
なんとなく地下鉄の時刻表を確認して驚愕する事になる。

電車ないじゃん!
何度見ても9月22日の始発は朝7時過ぎなのだ!
始発が朝7時ってなんだそりゃ!と思ったら、
週末はキリスト教徒らしく休めこの愚民ども、というのが
ワシントンD.C.の交通機関の基本方針らしく、
バスだろうが地下鉄だろうが
土日は朝7時まで動かないのだと気が付いた。
これは仏教徒に対する宣戦布告ではないかと思うと同時に、
自分はそういや仏教徒だったっけ?とイマイチ自身も無かったりした。
そもそも神との契約、洗礼を受けない仏教は、
その教徒たる証明は存在しないのだ…いや、それは今はいい。
とりあえず日本で見たのは普通の日の時刻表だったのである。

なんじゃそりゃ!
アレクサンドリアからタクシーだと幾らかかるんだ、
というか、そんな中途半端な時間に
安宿のフロントでタクシー呼んでもらえるだろうか…。
一瞬絶望的な気持ちになるも、
今度は土曜日だけは終電が異常に遅い事に気が付いた(笑)。
なんと夜中の3時過ぎまで動いてるのだ。

調べて見るとユニオン駅からフィラデルフィア行きが出るのが
朝の6時20分、終電でユニオン駅で入ると3時15分。
…駅で3時間潰せば、なんとかなるか。

という感じで、夜中の2時から行動開始、
という異常な観光活動が始まったのでございます。



もはや通いなれた駅への道ですが、
なんぼ土曜の夜(実際は既に日曜だが)とはいえ、
郊外の住宅地、夜中の2時過ぎには人っ子一人おりませぬ。



実は結構不安だったのですが、駅まで来てちゃんと開いてるのでほっとする。
意外に人がいましたが、基本的に出迎えの人ばかりで、
ここから電車に乗ったのは私以外は2〜3人だけでした。



ホームはこんな感じ。

映画だったら、ここで絶対殺されるってな感じの人気のなさ。
ちなみに、本人は妙に用心深い性格のため、
これは終電より1本前の電車だったりします。



車内は完全に貸切状態。
とりあえず、治安の不安はないものの、
なんとなく落ち着かない感じですね。


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