■次なる美術館へ



では、行ってみましょう、フリーア美術館(freer gallery)。

ここは小さいながらも、アジア美術を専門に扱う美術館で、
1923年に開館しています。
規模が小さいのでそれほど有名ではありませんが、
これは先に見た国立美術館よりも早い設立で、
スミソニアンにおける専門展示の分館としても
おそらく自然科学館の次あたりに古い施設でしょう。

この施設の名は寄贈者のフリーア(Charles Lang Freer)を冠したもので、
美術品ごと、この展示施設まで寄贈しちゃったそうですから、
20世紀初頭のアメリカのお金持ちは半端じゃありませんね(笑)。

そのフリーアは鉄道車両の製造で一財産を稼いだ人ですが、
後に神経衰弱にかかって仕事から引退、美術品のコレクションに精を出し、
当時のアメリカの画家の絵を片っ端から購入してます。

それはそれで見事なコレクションなのですが、
当時彼が贔屓にしていた画家、ホイスラーのアドバイスから、
アジアの美術品のコレクションも開始したのだとか。
それらを展示するのがこの美術館なのですが、コレクションの数に比べて
建物があまりに狭いので、その展示が
極めて限られたものになってるのが残念なところ。

ちなみにホイスラーは、国立美術館で見た、
オオカミの毛皮を踏んづけてる白い少女の絵を描いた人ですね。
さらに余談ながら、Whistler というのも変な名前でして、
これはヒューヒューといった感じの音を出すもの、という意味の名詞です。

なので、口笛を吹く人、汽笛を鳴らす人、
あるいは喘息の馬(笑)といった名詞なのです。
日本語だと隙間風さん、とでもいったような名前となります。
まあ、HOPE、希望という名前があるくらいですから、
隙間風さんが居てもおかしくないでしょうが…。

ちなみに私の好きな、そしてアメリカで人気の高い
川瀬巴水の版画コレクションも持ってるはずなんですが、
残念、今回は展示されておらず。
…と思ってたら、帰国後に実家のある千葉市立美術館で
川瀬巴水の展示会が行われており、
ワシントンでの仇を千葉で取る、という形になったのでした(笑)。

ついでに、戦前のアメリカで何度も個展を開いて人気が高かった
吉田博の版画もここは持ってるはずなのに、展示なし。
トホホ…。
この人の作品も個人的には大好きなんですが。

ついでに脱線しておくと、1970〜2005年ごろまでの、
アメコミ、特にマーベル社のコミック本を大量に読んだ事あるぜ、という人が、
上の二人の版画を見れば、漫画よりもはるかに以前から、
いかにアメコミが日本の絵の影響を受けていたか、がよくわかるかと思いまする。



中に入るとこんな感じです。
受けつけの警備員も一人だけ、軽くバッグを開けて見せたらチェックはおしまいでした。

モール一帯の施設を見た後だと、えらく小さいな、と思ってしまいますが、
それでも普通の地方美術館並みの展示スペースを持ち、
そのコレクションは相当なものがあったりするので、油断がなりません(笑)。

ついでに今回初めて知ったのですが、スミソニアンにはもう一つ、
サックラー美術館(Sackler Gallery)という東洋美術系の美術館が1987年に設立され、
このフリーア美術館からは地下通路で繋がっているのだとか。
ただし、今回は時間切れでそちらは見ておりませぬ。

ほんとにスミソニアンの施設はどこにどれだけあるのだか、
底が知れないなあ、と思ったり。
(ただし念のため繰り返しますが、国立美術館はスミソニアンの運営ではありませぬ)



さて入り口を入ると左右に通路が分かれるのですが、
なんだか奥のほうに日本のものらしき仁王像が見えてます。

とりあえずそっちから行って見るか。



が、最初は古代中国関係の展示でした(笑)。



ここらは紀元前1000年〜250年ごろまで続いた周王朝の出土品。
周は中国では2番目に古い王朝とされます。
(ただし夏王朝が実在したなら3番目)

でもって、この王朝は中国と聞いて我々が想像するのとは、
かなり印象が異なる文化を持っており、
その出土品にはなんとも味があって個人的には結構好きだったりします。



まあ、こんなのとか。
作った本人に確認しないと、何なのかをウカツに特定できない動物像軍団(笑)


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