■それでもオレは垂直離着陸で行くぜ



LTV(チャンス・ヴォート) XC-142A。

こちらは1964年9月に初飛行した多発エンジン式のティルトローター機。
エンジンは4発、各ローターごとにあり、それらが主翼ごと上に向く、という一風変わったティルトローター機で、
開発には陸軍、空軍、海軍、さらにはNASAまで関わっていたようです。

当初は輸送用ティルトローター機として大きく期待されたみたいですが、
結局、性能的に各軍の要求には届かず、実験機段階で終わってしまってます。

ちなみに5機も造られたらしいのですが、現存するのはこの展示の機体のみだとか。
ただし他の4機は事故損失とかでは無く、単に不要となってスクラップにされたみたいです。



ホーカーシドレーXV-6Aケストレル。

世界初の実用垂直離着陸戦闘機、ハリアーの最終実験機です。
ハリアーは最初の実験機がP.1127で、その次の段階の試作機がこのXV-6Aと、
二段階の先行開発機がある、という変な機体なのでした。

機体そのものは英国による開発ですが、予算などはアメリカ、西ドイツも一部負担しており、
それらの国に評価用に配られれたのがこのケストレルでした。
9機造られた内、6機がアメリカへ送られ、他に少なくとも1機が西ドイツに渡ってます。
ちなみに西ドイツでこの機体をテストしたパイロットの一人に、
あの第二次世界大戦時の大エース、バルクホルンが居ます。

展示の機体はアメリカ空軍が受け取ったものですが、最終的に空軍は採用を見送り、
アメリカでは海兵隊のみがこれを採用する事になるわけです。



これまた一部で大人気の地を這う円盤(笑)、アヴロカナダ VZ-9AV アヴロカー。
これも一応(笑)垂直離着陸機であり、戦闘爆撃機(限りなく自称)でもあったビックリドッキリメカです。
あらゆる面で無茶苦茶で、説明するのはかなり面倒なのですが、ざっとやっておきましょう。

基本的な設計は、ジェットエンジンの噴射を下向きに送り出して浮上してから
(これを博物館の解説では地面効果によるとするが、完全な離陸までやる気だったから作用反作用の方だろう)
後部のジェット噴流で前進、その後は円盤状の胴体のコアンダ効果で揚力を得る、というものでした。
なんで円盤状の胴体にコアンダ効果が出るのか、そしてそもそもなんでコアンダ効果で揚力が得られるのか、
この辺りの説明は見つけられなかったので、全くの謎です。
個人的にはそれで飛べるとはとても思えないのですが…

当初はカナダ軍の垂直離着陸機計画だったのですが、速攻でサジを投げられ、
これをアヴロカナダ社がアメリカ国防省に売り込み、陸軍、空軍が興味を示し、実験機まで造られたもの。
ただし陸軍は歩兵運搬用の空飛ぶジープ、兵員輸送を主とした汎用航空兵器として、
対して空軍は既に見たように戦闘爆撃機(しかも音速超える気だったらしい)として発注という、
どんだけ無茶な事言ってるのあんたら、という展開でした。
ただし両者とも、低空飛行で敵のレーダーを避けて飛ぶ、という点だけは同じでしたが、
共通点はそれだけなのです。

が、この無茶な注文をアヴロ カナダは平然と受けてしまうのでした(笑)。
こうなるとどっちもどっちだなあ、という感じですね…。
陸軍、空軍共に試作までは行くのですが、当然、どちらも大失敗に終わったのでした。
そりゃそうだろう、としか言いようがありませぬ。

展示のは2機造られた試作機の内の一機で、もう一機は陸軍の別の博物館で展示されてます。
ちなみに最終的には1mも浮くことができず、最高時速は35マイル(56q/h)で終わったそうな…
ここまで計画と結果が乖離してる機体は、ある意味貴重かもしれませぬ…



コンヴェアー NC-131H TIFS。
TIFSはTotal In-Flight Simulator 、総合機内シミュレーターの事ですが、
この機体に関しては驚くほど資料が少なく、その実態はイマイチよく判りませぬ。
この変なスタイルはあまりに強烈なんですけどね。

コンベア社の双発機、C-131の機首部に取り外し可能な実験部を取りつけたもので、
レーダーやらの電子装置をここに取り付けて実験できた他、
展示のように全く別の機体のコクピットを搭載し、そちらからも機体の操縦が可能だったとか。
これによって実際の試作機を作る前にコクピットの操縦系統がキチンと動くか確認できた、
という事ですが、そもそも全く構造が異なる機体のコクピットだけを搭載したところで、
それが実機で上手く働くかどうかは確認できるとは思えないんですが…

このあたり、 現役時代の写真もほとんど残ってない上に、資料もほとんど無く、
どうもよく判らぬ部分が多い機体でして、詳細は謎としておきます、はい(手抜き)。



ロングEZ ボレアリス。
ボレアリス(Borealis)はオーロラのような天文現象を指すらしいです。

その名の通り、鬼才、バート・ルタン閣下設計による小型機、ロングEZを改造した
パルス式爆発燃焼エンジン(Pulsed Detonation Engine /PDE)の実験機で、
2008年1月に飛行に成功した機体。

パルス式爆発燃焼エンジン(PDE)は例のV-1飛行爆弾で使われいたパルスジェットの発展型で、
燃焼用の空気を単純に外部から取り入れるのではなく、
より細かく制御して燃料と混合させ燃焼させるらものらしいです。
ただし、説明を見る限りでは詳細はよく理解できず。

この機体では謎のシャークマウスが書き込まれた胴体下の箱状のものがそれで、
後部に突き出した排気管のようなものがジェット排気口。



ちなみにエンジン単体の展示もありました。
昭和のヤンキー車のマフラーみたいですが、あの4本の筒がジェット排気口。

…どうもこの構造からすると、燃焼室内で爆発的な燃焼を発生させて衝撃波を起こし、
それを背後に噴き出して推力としてるような気がしますが、断言はできず。
ついでに空気取り入れ口が見つからないので、ひょっとしてロケットエンジンでもあるのか?

ただし、どうもよく判らない部分が多いので、とりあえず詳細は謎としておきます(手抜き)。


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