■そこはミサイルの飛ぶ空で



ベトナムにおける事実上のアメリカ空軍主力機、リパブリックF-105Dサンダーチーフ。
これもサッド(サンダーチーフを縮めた呼び方)の非公式愛称の方が有名でしょう。
ついでにF-105もほとんどがD型で(笑)、全生産数833機の内、610機、約73%ほどをD型が占めてます。
P-47の時と言い、そんなにDの字が好きなんでしょうか、リパブリック社…。

ちなみに史上最悪のデブことF-35が登場するまでは、
単発エンジンのジェット機として最大重量記録保持者の機体でもありました。
(全長だけなら未だに単発エンジン機最長記録保持者である)

センチュリーシリーズ4番目の機体で(F-103は採用されなかった)
この機体も本来は超音速戦術核爆撃機でした。
すなわちF-101と同じF-84F(冷戦編で登場)の後継機であり、なんでそんなに
同じような機体を同時進行で開発する必要があったのかよく判らん部分があります。

そんな目的の機体のため胴体内に爆弾庫を持つ、という妙な戦闘爆撃機になってます。
戦闘機のFナンバーで目的が戦術核爆撃、しかも胴体内に爆弾庫あり、という辺りが、
この時代のアメリカ空軍のスカポンタンぶりをよく示してると言えますね。

第二次大戦時のアメリカ陸軍の主力機がB-17とするなら、ベトナムの主力機はこの機体でした。
北ベトナムへの戦略爆撃は1972年のラインバッカー作戦にB-52が参加するまで、
この機体が主に担当しており、さらには南ベトナムへの爆撃にも投入されてますから、
まさに馬車馬のごとく爆撃に使わた機体なのです。
さすがに戦争末期になると新鋭のF-4ファントムII、さらにはF-111と交代して行きますが、
それでも最後までベトナムにとどまっていた機体となっています。

よって一人で操縦するB-17みたいな機体、と思っておけばほぼ間違いありません。
これを戦闘機だと思ったら、アメリカ空軍の本質を見誤りますから注意。
(ちなみにF-105はB-17を超える爆弾搭載量を持つ)
実際、展示の機体の愛称はメンフスベル II で、これは第二次大戦期に
幸運な機体として知られたB-17のメンフスベル号にちなんだものとなってます。
よく見るとコクピット下に赤星二つがあり、これは両者ともMigの撃墜らしいですが、
相手が21なのか17なのかは不明です。

ちなみにF-105は最終的にベトナム戦争全期を通じて2万回を超える出撃(Sorties)を記録し、
約380機の損失を受けてます(60機前後は非戦闘損失)。
全生産数は833機ですから、約45.8%が失われた事になり、
世界最強の軍隊がアジアの田舎の軍隊相手にこれほどの損失を受けた、
という意味でも、ベトナム戦争を象徴する機体となっています。



こちらは複座のF-105G。
有名な対空ミサイル制圧部隊、ワイルドウィーゼル(Wild Weasel)の使用機で、
展示もその出撃風景を再現したものになってます。
もともとは複座の練習型、F-105Fだったのですが、後部座席に対空ミサイル制圧に必要な
電子機器などの操作員を載せる事ができるように改造されたのがこのG型で、
ワイルドウィーゼル専用機となります。

ワイルドウィーゼルは北ベトナムが運用していた
ソ連製地対空ミサイル(SAM)SA-2に対抗するために誕生した部隊です。
その任務の目的は爆撃部隊の安全確保であり、
最初に突入、最後に離脱(First in ,last out)の活動のモットーでも有名ですね。

こういった任務は当初、例の複座型F-100を使用した対空陣地制圧作戦、
アイアンハンド作戦として行われていました。
それが後により進化した電子装置を使用したワイルドウィーゼル作戦になり、
その使用機もF-105に機種変更されて行ったのでした。
(アイアンハンド作戦時代にも一部、F-105は投入されていたが)



そのワイルドウィーゼルが使用した対空ミサイル基地制圧用兵器、AGM-45シュライク。
後には他の部隊でも使われたようですが。

Shrikeはモズの事で、地上のミサイルを狩る、という意味でしょうか。
スパローから改造されたもので、対空ミサイル基地が照準に使うレーダー波を補足、
それに向かって突っ込んでゆく、というもの。
なので対空ミサイルそのものを破壊するのではなく、誘導レーダーを潰して撃てなくする兵器になってます。

 ただし潰しに行った相手であるSA-2ミサイルより射程が短く、
これをぶち込むには敵の射程距離内まで接近する必要がありました(少なくとも10q前後)。
さらに速度も遅いため、もし目標が先にミサイルを発射したら、どうしようもない、という弱点がありにけり。
(ただしSA-2は撃った直後に回避を開始すれば逃げるのは難しくなかったらしいが)

さらに補足できる範囲が狭い上に、記憶装置が一切ないので、
追尾中に相手がレーダーのスイッチを切ってしまうと、もう追尾できません、という欠点もありました。
この点は直ぐに北ベトナム側にバレてしまい、シュライク積んだ機体が来ると、
すぐにレーダーを切る、という対策が取られるようになってしまいます。

が、逆に言えばレーダーを切ってしまった対空ミサイルサイトは事実上無力化されたわけで、
そういった状態に追い込む、というのもワイルドウィーゼルの主要な任務の一つになって行きます。



で、これがベトナムの空でアメリカ軍の最大の脅威になったSA-2ガイドライン地対空ミサイル。

ちなみにSA-2ガイドラインはNATO&米軍呼称で、ソ連での正式呼称はS-75となります。
マッハ3を超える速度が出せる2段式の高高度ミサイルですね。
発射後はまず第一弾ブースターで加速しながら一定高度まで上昇、そこでブースターを切り離し、
そこからは二段目、というかミサイル本体が目標に向かって飛んでゆきます。
その最大射的距離は40qを超えており、その守備範囲は極めて広かったのです。

SA-2によるミサイル基地は、その照準用レーダーシステムに4〜6機のSA-2が設置されたもので、
その周囲には近接用の対空砲が並び、攻撃する側からすると極めて危険なものでした。
ちなみに、この発射装置とミサイルは本来車輪付きの台車に乗っており、
最速だと4時間で基地を畳んで、次の展開場所に向えたと言われてます。


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