■Uボートの基礎知識

ドイツ海軍は試作艦を含めると第二次大戦期に1250隻前後のUボートを就役させたものの、
大戦を通じてのUボートの全損失は765隻にもなります。
すなわち損耗率60%以上、10隻の内6隻が損失、という凄まじい数字が残ってるのです。
特に1942年夏から連合軍側の対艦レーダーの発達により、その損害は恐ろしい勢いで増えてゆき、
さらにアメリカが護衛空母を量産して(約130隻…)、対潜任務に投入すると、一層悲惨な事になって行きます。
さらには電波探知機もこのころから対潜水艦艦隊に搭載され始め、
徐々に彼らは追い込まれてゆく事になるのです。

実際、765隻の損失の内、676隻、約88%が1942年の7月から終戦までの約3年間で失われており、
これは開戦後の1939年9月から1942年6月までの初期の約3年間の損失、
約90隻に対し、ほぼ同じ期間ながらで7.5倍近い損失となってます。

ちなみにアメリカ海軍でもっとも損耗率が高かったのも、実は潜水艦部隊でした。
それでも334隻(第一次大戦世代の艦で第一線では運用されなかったSクラスなど約50隻を含む)の潜水艦の内、
未帰還52隻(アメリカ海軍では未帰還ではなくStii on patrol、任務続行中という詩的な表現をする事がある)
すなわち損失率は15%でしかなく、実戦任務に就いてた艦のみ、約280隻で見ても20%を切りますから、
いかにドイツのUボートの損耗率がスゴイか、というのが判るかと。
(ただし100隻以上建造された艦種での比較の話。
単純な損耗率で言ったら日本の戦艦なんて80%を超えるし、事実上では損耗率100%だ)

ただし潜水艦、といっても第二次大戦時のものは、“潜水できる艦”といった程度のもので、
その航行時のほとんどは浮いてました。
潜ってしまうと速度は最大出力で7.3ノット、13.5q/hしかでませんから、
これでは目標である輸送船より遅いので敵を追いかけることすらできません。
しかもこの速度だと大量に電気を食うため、あっという間に電池が切れます。
(戦時に安価に大量に造られた輸送船リバティーシップでも11ノット、20.5q/hは出せた)

そもそも空気が取り込めない海中では電池とモーターでスクリューを回すのですが、
この時代の蓄電池の充電能力は褒められたものではないので、
できるだけ潜航せず、電気を無駄遣いしないようにする必要があります。
なので、通常は水上航行し、その間はディーゼル機関で推進、同時に発電機も回して充電してます。





最後にUボート、というか当時の潜水艦の構造を軽く見て置きまましょう。
本体は耐圧殻、分厚い鉄板で覆われた水圧に耐え得る殻の中にあり、居住区もエンジンも蓄電池も、
そして魚雷発射管もこの中に収められてます。

その左右に付くのがタンクで、浮上中は当然、空気を詰めて浮きとします。
ここに注水する事で船体を重くして潜水するので、
水圧がかかる状態ではこの中は水で一杯となり潰れず、このため耐圧構造にはなってません。

で、最後に水の抵抗を減らすためのカバーが上から付けられます。
これはレーシングカーやバイクのカウルと同じようなもので、あくまでカバーでしかなく、
耐圧殻の上に鉄骨で固定されてるだけです。
なので潜水すると耐圧殻との間はこれも海水で満たされるため、水圧を受けず、これも耐圧性はありません。
なので、潜水艦のダメージで、この部分がどれだけやられても、それほど深刻ではないのです。
ただし、水の抵抗が増えて、速度は出なくなりますが…。

といった感じで、いよいよ本編に入りましょうかね。

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