■前の方からグルっと一周




ではさっそく見学に入りましょうか。
U-505の展示棟は、なんか秘密基地っぽくてカッコいいのですよ。

あと10年もすれば、21世紀も30年近くであり、さすがにそろそろ宇宙人とかが
アンドロメダ星雲あたりから攻めて来ると思われます。
その危機の最中に、地球防衛軍の精鋭がこの施設に集められ、
「博士、もうすぐここまでアンドロメダ星人が…」
「フフフ…大丈夫、こんな事もあろうかと、このU-505を用意した」
「しかし、こんな骨董品で…」
「まあ、見たまえ、ポチっとな」
「こ、これは…博士、やる時はやるじゃないですか!」
「まあね。ところでワシの博士号、文学博士だって知ってた?」
「…初耳なんですど」

といった展開が、当然あるかと期待されます。ワクワクしますな。



ちなみに軽いとはいえ、1000t はあるこの船を、どうやって建物の中に運び込んだのか、
そもそも入り口はどこ?と気になって夜も寝れないあなたのために
博物館ではこの展示棟の建築過程を動画で展示してます。
というか、半分自慢話じゃん、とも思いますが(笑)。

それまで屋外展示だったのですが、博物館に来てから50年を超えた2004年に、
より保存環境が良い屋内展示にするため、この場所に移動された時のものです。
(公開開始は2005年)

まずは右側に見えてる展示室用の穴を掘り(この展示施設は地下にある)、ここの基礎が完成すると、
博物館の建物を挟んで反対側にあったUボートをジャッキで持ち上げ、
スペースシャトルを発射台に運ぶ時のトレーラーのような車両で、ゆっくりとここまで運びました。
その後、この地下に降ろし、後は上からフタをして完成、という事になります。
つまり、このUボートは、未来永劫、ここから出る事ができませぬ。
ただし博士(文学)によって、いざとなったら注水可能、秘密の発進トンネルがミシガン湖の湖底まで
こっそりと掘ってあるはずだ、と私は信じてますが。

…信じてますよ?



正面、やや斜め前から。
上の薄い灰色の部分がカバー、下側の恋色、否、濃い色の部分が耐圧殻の本体部分。
カバー部と、両者の接合部に開いてる穴は、潜水時は隙間に素早く注水するためのもの、
浮上時には素早く水を抜くためのモノ。

甲板の上に見えてるハッチは、手前が魚雷室に入る、例の魚雷運び込み用のもの。
その奥のは、VII(7)型などで厨房ハッチ、と呼ばれてる厨房室の上のハッチだと思います。
手前の艦首まで伸びてるのはアンテナケーブル。

波長が長いほど、遠くまで届くのと、10q(笑)を超える波長の超長波(VLF)なら水中でも届くのとで、
ドイツ海軍はUボート相手には、極めて長い波長の電波を使ってました。
当初、1943年までドイツUボート部隊が使っていた無線システムはナウェン(Nauen)と呼ばれており、
23KHzと16.5KHzの二種類の周波数の使い分け型でした。
そして1943年から登場した(後半から?)新型、ゴリアテ(Goliath)では
15KHzから25KHzまで自由に周波数を設定できるように進化してます。

ちなみにゴリアテでなら世界中のどの海に居ても、深度10m前後でなら受信が可能だったそうですが、
なぜかノルウェーのフィヨルドの入り組んだ湾内の海中に居ると、受信できない事があったとか。
ただし、このVLF通信は本土からの指令伝達のみの一方通行で、潜水艦側からの発信はできませぬ。
ただし、逆に言えば、アメリカ本土でもこれを受信できたので、
暗号装置、エニグマの暗号コードが破られてしまうと、全て情報は筒抜けだったわけです。

ついでに10q近い周波数の電波を、最大で70m前後の長さしかない艦に取り付けられたアンテナで、
どうやって受信するだろう、と思ったのですが、電気関係はよく判らんので、パス。



上の発射管から魚雷発射状態が再現されてる艦首部。
ここはちょっとややこしくて、魚雷発射管のある位置辺りまでが耐圧殻、そこから上と先はすべてただのカバーです。
前部魚雷発射管は左右二門ずつあり、それぞれ単体で発射ができました。
写真では下側はカバーが閉じられた状態。
ただしこのカバーは水密ではなく、単に水中での抵抗削減のための整形カバーです。
ちなみにこれは、胴体に貼りつくように前方にスライドして開きます。

ついでに、前回も指摘しましたが、妙に有機的な、生物的な印象がある前翼も見て置いてください。
潜水艦は基本的に前後の重量バランスを取って、ヤジロベエのように水平姿勢を保つのですが、
潜航、浮上などで艦の姿勢を変える必要がある時は、これと艦尾の舵で艦首を持ち上げたり、下げたりします。



艦橋部分。
この辺りの艤装は鹵獲後に捨てられてしまったので、全てオリジナルではありませぬ。
それでも参考にはなるかと。
艦橋の根元から横にかけて、変な所に複数開いてる妙な穴は、鹵獲作戦時の弾痕、との事。
この辺りは確かにただの薄い鉄板のカバーですから、いとも簡単にぶち抜かれたと思いますが、
さすがにF4Fやアヴェンジャーの12.7oや7.62oでここまでの穴は開かないので、
おそらく海防艦、USSシャトレイン(USS Chatelain (DE-149))の40oを食らった時のモノだと思われます。
(撃沈を狙って無かったので主砲の3インチ(76o)は使って無いらしい)

この艦橋も一種のハリボテで、中には下の方に耐圧殻に守られた司令塔が入ってます。
そこからハッチを通して、ここに出るわけです。
一番上が見張り台で、その下の張り出しは正面からの波除け。
艦橋下にあるNの字に潜水艦の絵がU-505の識別エンブレムらしいです。
ただし上に見えてる緑のものは何なのかよくわからず。
一つの艦に二つのエンブレムが付いてるのは珍しいのですが。
あるいは急な乗員後退でもあって、以前のエンブレムを消してる時間が無かった?


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