■今度の敵は共産党だよ



さて、対日戦が終わった以上、お次はこれ。
中国内戦ですが、展示室の名は直訳すると反乱鎮圧戦と台湾海峡の戦い。
内戦では無く、反乱鎮圧戦、なのですね。

…まあ、負け戦ですから、展示内容はショボいんですが(笑)、
対共産党の内戦の敗北に加え、その後、優勢勝ちに終わった台湾海峡の戦いを
展示する事で、オレらもがんばった、よくやった、的な展示になってます。
負けたよ俺たち、なんてどこにも書いてない、的な内容です。

まあ、これは万国共通、アメリカの博物館でもヴェトナム関連とかはこうですから、
人間がいかに自分の失敗を認めたがらない生き物かよくわかる部分となっております、はい。



とりあえずアメリカ軍のおかげで、ほとんど何もしないまま(笑)
第二次世界大戦の戦勝国になってしまった中国の国民党政府。
が、当然、政治は腐敗しきってる上に、豊富な兵器、物資の補給を受けながら、
1944年(昭和19年)以降の日本軍相手にすら勝てない
人類史上最弱に近い軍隊では、中国本土を維持できませんでした。

この結果、毛沢東率いる(途中からだけど)共産党軍に中国本土から駆逐されてしまうのです。
なのでまずは、その中国共産党に関する展示でございます。
展示スペース赤いのは縁起がいいからではなく、共産党カラーだから。

ここら辺りも、本来、台湾の人たちにとっては縁もゆかりも無い話で、
あくまでここが“国民党軍の博物館”なのだ、という事なんでしょうね。
正直、ズレてるなあ、と思いましたが。

ただし展示は極めて適当な内容でしたから、紹介はパス。
かといってここら辺りをキチンと説明したら
F-22の道を超える長期連載になる世界ですから、これもこの記事では詳細はパスします。
そもそも、未だにキチンとした資料は極めて限られる時代ですしね。

とりあえず、第二次大戦終了後、共産党が本土で一気に攻勢に出て、
国民党政府はあっという間に追い出され、台湾に逃げ込む事になります。
1949年10月に中国共産党は事実上の本土統一を成し遂げ、国家の建国を宣言してますから、
わずか4年で、アメリカの支援を受け続けていた国民党軍を駆逐してしまったわけです。

…中国本土で同じ国民党軍と8年間戦って(当初の約3年はアメリカの支援なし)、
最後まで全土占領、統一のメドが全く立たなかった
日本陸軍はどうもマヌケなんじゃないの、というのはこの数字からもうかがえるかと。

この内戦は悲惨、凄惨の一言に尽きるのですが、未だに両者がその資料を秘匿してるため、
(そもそもまともな記録を最初から採ってない無い可能性が高いが)
よく判らない部分も多い、というのが特徴の一つです。
スペイン、フランス、ロシアの内戦が悲惨だったことはよく知られてますが、
死んだ人間の数では中国内戦の方が圧倒的なはず。

例えば共産党による長春包囲戦では、70万近い人口の都市が
外部からの食料と断たれた結果、一般市民だけで最低でも15万人、
軍人と合わせると30万人近い餓死者を出してると見られます。
当然、中国全土で考えた場合、その数字は相当なものになるはずで、
同じ国の同じ文化圏の軍隊が、
これだけ大量の同胞を殺した例は極めて稀だと思わます。
(独裁者が国民を殺した例ではポルポト、スターリン、内戦後の毛沢東などが居るが)
毛沢東は、掛け値なしに狂人なんですよ。



でもここの展示はそんな事はお構いなし(笑)。
例によって蒋介石先生が使ったお品の数々が展示中です。

いや、もう頭が痛くなる、という内容ですが、まずは右端。
五星マント、と書かれていて、なんだと思ったら襟に五つ星の階級章が付いてました。

…元帥って事ですが、政府の最高権力者が、
自分を自分で元帥に任命してどうするの、という感じですね。
ちなみに解説だと、アメリカのマーシャル、アイゼンハワー、マッカーサー、ニミッツなどに
並び称させる五つ星である、と書かれてましたが、マッカーサーは別として(笑)
寝言は寝て言え、という世界でございます。
1000人の蒋介石でも1人のマーシャルに敵わないでしょう。
0はどれだけ足し算しても、掛け算しても0のままです。

ついでに解説だと、いかにもアメリカからもらった元帥の地位、みたいな
あえて誤解を招くような書き方してましたが、そんな事はないんで要注意。



蔣ちゃんの権杖だそうな。
これ、元帥杖(Marshal baton)の中国版でしょうか。
軍で極めて高い地位の将軍、主に元帥に与えられる指揮権のシンボルみたいな杖ですね。
世界最大の元帥大量生産に成功したナチスドイツ下のドイツ軍ではこれ持ってウロウロしてる
お茶目な軍人さんの写真が大量に残っていて微妙な笑顔を呼び起こしていただけます。

民国55年というと1961年製で、もう台湾海峡の戦いもメドが経った時期に、
なんでこんなものをわざわざ作ってるのか、よくわかりまぬ。
イギリスの王室で自分用の元帥杖を造っちゃった連中とかもいますが、
20世紀後半にもなって、こんなもの造ってた国家指導者はこの人くらいでしょう。
(純粋な軍人相手ならインドやデンマークとかでまだ支給してるらしいですが)




こちらは台湾海峡の戦いで活躍した第九師団へ蒋ちゃんが贈った記念の旗らしいです。
栄誉虎旗というもので、よく判らんのですが、師団単位(海軍は艦単位)で活躍が在った場合、
それに贈られる一種の栄誉の品、らしいです。
これは複製品らしいですが、もう少し絵は何とかならなかったの、という気もしなくもなく。
いや、今の萌え、カワイイ系では、それはそれでちょっと困りますが。


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