■フランスのおける回転翼機について






さて、さすがにそろそろ地獄のフランス航空宇宙博物館編も終わらせたいところ。
ちなみに、現在までの足取りはこんな感じで、入り口から本館右翼、1〜4の第一次大戦までのコーナーを突破、
そこから外に出て屋外展示を連覇、ロケット経由で5の第二次大戦、6のコンコルドと連戦、
そこから本館の左翼に戻って、8のアレな試作機とジェット機コーナーまで見たわけです。

今回は、上の地図だとえらくせまい9、回転翼機、ヘリコプターなどの展示棟からスタート、
ここから第二次大戦前までの民間機コーナーの10、宇宙関連の11まで行く予定です。
それでようやくこの博物館を一周した事になるわけです、はい。



で、その回転翼の展示棟は、こんな感じ。
えらくゴチャゴチャで判り難いですが、ビルの3階建てくらいの高さの建物を吹き抜けにして、
天井付近までいろいろぶら下げてある、という状態。
この位置から全部見るのは不可能で、階段で上の見学フロアに登れるようになってます。

ちなみに回転翼というのはヘリコプターのように、
翼自体をぶん回して、揚力を発生させて飛ぶ航空機のこと。

普通の飛行機は胴体の横に主翼を付け、エンジンの推進力で前進し、
主翼に高速の風をあてて揚力を産み出し、飛んでます。
が、回転翼機の場合、主翼をぶん回す事で必要な空気の流速を確保し、
それで揚力稼いだれ、という発想で造られているのです。
つまり機体が高速移動してなくても、常にブン回されてる主翼に揚力が発生しますから、
極めて低速、ヘリコプターなんて対気速度ゼロでも飛行が可能なわけです。

自分で翼をブン回して飛ぶ、というとヘリコプターが真っ先に思い浮かびますが、
実際は色んな飛行装置がありますので、そこら辺を中心に見て行きましょう。
なぜならば、ここの展示、解説板が全く無く、
そっち方面にウトい私には、どれが何だかさっぱりわからん、という状態だからです(涙)。

ちなみにヘリコプターと言うと、レオナルド・ダビンチのスケッチが有名ですが、
あれは螺旋形の板を回転させ、斜め下(傾きの内側)から風を受け、
その反発力で飛ぼうというアイデアで、おろらく元ネタはネジ(笑)でしょう。

確かに、それも揚力による飛行ですが、現代の回転翼機とは全く別系統のものでして、
あれを現代のヘリコプターの元祖とするのは、無理があります。
ついでに、ダビンチのアレはそのままじゃ天地がひっくり返っても飛びませんが、
竹とんぼサイズで飛行可能に改良したものが売られてるのを見たことがあるので、
まったく荒唐無稽、というわけでもないようです。



で、入り口から上を見上げるといきなりこれ…。
ああ、フランスやな…。

ついでながら、この機体のローター(プロペラ)が左右二つに分かれてるのは、
トルクの打消しを狙ったものでしょう。
回転翼機の最大の問題の一つが、
エンジンの力で回転する翼が発生するトルク(回転力)で、
これによって機体が振り回されてしまうのです。

単発エンジンのヘリコプターが尾翼の先っぽに
横向きの小さいプロペラ(テイルローター)をつけてるのは、
この機体の回転を押さえつけるためです。
あれで機体が回ろうとするのと反対方向の力を発生させ、
機体が回転せず、まっすぐ(中立)の姿勢を維持できるようにしてます。

で、それ以外にも、メインのローターを二つにして、
それぞれ逆方向に回してしまう、という方法があり、
全く同じ出力、大きさのローターを二つ、逆向きに回転させることで、
それぞれが発生させるトルク(回転力)を相殺してしまうのです。
これは小型ながらも、その方式を採用してるのでしょう。

…ところで、このマネキンのお兄さんが被ってるの、
市販のオートバイ用ヘルメットのような…。



その先にあったヘリコプター。
恐らくアルエット(Alouette) III だと思います。
1960年代から70年代にかけての、フランスのベストセラーヘリコプターですね。

フランスは国内にピレネー山脈、ヨーロッパアルプスを抱える山岳国であり、
この機体は、その遭難救助のためのヘリコプター。
車輪についてるソリは雪上やぬかるみなどに着陸する場合、
車輪が沈んで抜け出せなくなるのを防ぐため、
接地面積をひろげて、沈み難くするためのもの。

アルエットIIIは比較的初期のターボシャフトエンジン(ガスタービン)搭載機で、
高高度飛行性能が高く、4000m級の山岳を抱える
フランスの山岳救助機として、導入されたものと思われます。
(ちなみにフランスの最高峰がイタリアとの国境にある4810mのモンブラン)
機首のアンテナは遭難者のビーコンの信号をキャッチするためのものかな。



その横には山岳救助隊員(正確な名称は知らんので念のため)
のお兄さんと、助けられたピエール(仮名)が無言で見詰め合うマネキンの展示が。

実際の山岳遭難救助の場合、このように水平に持ち上げるのは危険なので、
ガンジガラメに固定した遭難者の上半身辺りにフックをかけ、
カツオの一本釣りのように引きあげるようです。

NEXT