■フランスも回るよ



さて、では上の見学コースに上ってみましょう。
下に見えてるのはおなじみのシコルスキーS58でしょうか。

でもって、その上には2機のオートジャイロが。
前にも説明しましたが、これは普通の飛行機に、固定翼の代わりに
回転翼をつけてしまったもので、ヘリコプターとちがって、上のローターに動力はありません。
あくまで、前面についたエンジンで普通の飛行機のように前進、
その時受ける空気抵抗により、上のローターを回して飛びます。

なので、空中で静止するホバリングは不可能なんですが、
普通の飛行機に比べればはるかに低速で飛べ(逆に高速は出せない)、
かつごく短い滑走距離で離着陸可能だったため、各国で連絡用の航空機として使われました。

このオートジャイロという新しい航空機をを開発したのが
スペイン人シエルバ(Cierva)が設立したシエルバ社で、
彼の会社のオートジャイロは、イギリスやフランス、
さらにドイツでもラインセンス生産されました。
(ちなみにシエルバ社はイギリスで設立されてる)

余談ながら、英語圏の資料の多くが、日本もこれをライセンス生産した、
としてますが、極東の某国のアレことカ号観測機は、無断生産だったような(笑)…。
ちなみに日本が元ネタにしたピットケーン(Pitcairn) PCA-2は
アメリカでシエルバの特許を買ったピットケーン社が生産したもの。
特許だけ買って、独自開発したよ!としてますが、
正直言って、シエルバの機体、ほぼそのまんまです(笑)。

とりあえず、この展示機で手前の機体は
シエルバのC-30をフランスがライセンス生産したLeO C.301だと思われます。
(解説板がないので断言はできないが)
シエルバのC30は、水平尾翼の翼端が上に跳ね上がってる、
という特徴があるのですが、フランスでライセンス生産されたこの機体は
普通の水平尾翼に代えられています。理由は不明。





その奥にあったもう一つのオートジャイロ、シエルバのC8 LII(2)。
上のC.30よりはるかに若いナンバーからわかると思いますが、
シエルバが製作していた初期のオートジャイロ実験機の一つ。
どうも英仏海峡横断(ドーヴァーか否かは不明)もやってるようです。

が、残念ながらこの機体の来歴はフランス語の壁に阻まれ(涙)、
1997年にこの博物館が購入した、という事しかわかりませんが、
どうもレプリカのようだ、という感じですね。
もともと8機しか造られてないはずですし。

とりあえず、この機体が飛んだ1926年にシエルバさんはイギリスにおり、
アヴロ社と共同でオートジャイロの開発にあたってました。
後にイギリスのオートジャイロ生産をアヴロが担当するのは、ここら辺が理由のようです。

で、この機体、実は胴体部はアヴロ552という複葉機から流用してます。
えらく太い上のローターが印象的ですが、揚力的にはまだ不十分だったのか、
かなり本格的な主翼が付いてるのも注意したいところ。

で、この主翼の断面形が教科書に載せたいような見事な翼断面なんですが、
途中でパーツが分かれてますから、これエルロンが付いてますね。
となると、機体のコントロールにもこの主翼を使ってたのかも。



その上にぶら下がってた冗談のような接地装置を持つ回転翼機。
この角度からだと上部構造がよく見えませんが、恐らくヘリコプターでしょう。
車輪は車輪で別にあるので、あのネコパンチ型のアレは着水用のフロートか、
あるいは雪面のような柔らかいとこに着陸するためのものでしょうか。
どっちにしろ、猫にとっては悪夢のような条件ですね。

詳細は一切不明ですが、誠に勝手ながら
ここにワガハイはネコでRZIIと命名させていただきます。



その横。
いろんなヘリコプターが見えてますが、もちろん、一切よくわかりません(笑)。

注目は手前の青い機体。
これ、初期の山岳救助ヘリだと思うんですが、この時代の機体では、
機体に遭難者を収容するような余裕は無く、救助された人はご覧のような
機体横に付けられた担架に入れられて運ばれたようです…。
これ、突風とかで揺れたら、落ちたりしないんでしょうか…。




その先にあったドイツUボートのビックリドッキリメカ、フォッケ・アガリス社のFA330。

世界的に見ても珍しい、潜水艦で使われた観測機なんですが、
ご覧のように小型で、動力はありません。
どうやって飛ぶのか、というとドイツのUボートが浮上航行中に、
これを引っ張って飛びました(笑)。

まあ一種の凧ともいえ、低速でも飛べる回転翼機の特徴を活かしてる、
といえば、確かにその通りなんですが、うーん。
実用性は極めて低かったように思います…。

ちなみに、このUボートの罰ゲーム装置、やはりもの珍しかったのか、
各国が戦後に押収して持ち帰っており、イギリスのダックスフォード、
アメリカのスミソニアン航空宇宙博物館別館(ウドバー・ハジー)そしてここ、
とかなりの現存機があります。


NEXT