■アメリカ軍は日本機に親切なのか

本題に移る前に、余談をちょっと(笑)。
米軍による日本機の試験データは、日本国内で試験したのより一般に優秀な数字が出ている。
その点について、多少の解説をしたい。

まず、よく言われるガソリンは、各エンジンの規定の燃料を使っており、
米軍お得意の高オクタンガソリンは、その必要があるエンジンにしか使われてない。
 実際、高オクタン用に設計されてないエンジンに使っても何の効果もないので、意味がないのだ。
くわしくはスピットファイアの所 で解説してるので、そちらを参照してくださいませ。
 
今回のテスト機の中では、ハ45(誉)エンジン搭載の疾風が、それを必要とした可能性があるが、
そもそも高オクタンガソリンがなかった日本は、
誉を低オクタンのガソリンでも使えるようにチューンして使用していたらしい(過給圧を下げた)。
なので、その状態の誉エンジンに高オクタンのガソリンを入れても意味があったかはよくわからない。
 米軍が親切にも高オクタンガソリン用のエンジンセッティングに戻してくれたとも考えにくく、
 結局、オクタン価の高低は日本機のテストにとって、ほとんど意味はないように思える。
 ただし、それ以外の要素による「ガソリンの品質」というものはあり、
硫黄分やら蒸留性状やらの面で高品質のガソリンが、その試験に影響を与えた可能性は残る。
また、マーリンなどと違い、簡単に過給圧をあげる手段があったのなら、話は変わってくるのだが…。

ついでに脱線するが(笑)、アメリカの高オクタンガソリンというと100オクタンが有名だが、
実際の米軍はその上を行っていて、米陸軍では、グレード104/150のガソリンが、
44年ごろから投入されている(44-1燃料)。
ちなみに海軍のF6Fはグレード100/130のガソリンを使っているのだが、
これってただの100オクタンに比べて高温耐性は上なんでしょうかね?



2000馬力エンジンが欲しい人、この指、ホマレ!と言ったら
陸軍と海軍がフライングボディプレスで飛び込んできた、
という古事記の神話で有名な2000馬力エンジン 誉(ほまれ)。陸軍名はハ45ですね。
限りなく「なんちゃって2000馬力」なエンジンだったりするが、
キチンと動けば確かに世界レベルのエンジンだったろう。
ちなみに2000馬力と言っても年がら年中2000馬力ではなく、
空気の濃い地上付近で全力運転(離陸時とか)に出るだけだ。
当然、空気の薄い高空に行けば行くほど、出力は落ちる。
ここら辺はターボが付いてようがガッツがあろうが実家が金持ちだろうが関係ない。
ただ、過給器が付いてる場合、その落ち方が急激にならないだけだ。
そして、一度高高度に上がってしまえば空気は薄いので、
空気抵抗にサヨウナラして高速で飛べるのである。

あ、あとついでに日本とドイツはメートル法馬力(PS)だから、
英米の2000馬力(HP)と比べると、ちょっとパワーダウンするぞ!
ついでに日本はメートル馬力なのに、なぜか表記はHPだ!
これは正式な規定に基づくらしいが……なんでやねん?

あと、誉、米軍テストでも2000馬力出てませんので、これも念のため(笑)。
(離昇1970HPでした)



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