機首部アップ。
上に出っ張ったシリンダーヘッド収納用の凸部がよく判ります。
ついでに一番上のプロペラ見をるとこれも木製なのが見て取れますね。

この展示ではエンジン点検用のパネルを外してくれてました。
緑色の横長オムスビ型の部品は
エンジン固定用のもので、これもグリフォンスピット以降の装備。
(Mk.XII(12)は正直よく判らないが、Mk.XIV(14)からは間違いなくある)

マーリン時代は簡単な鋼管の骨組みに、
下半分に馬蹄型(Uの字型)の固定具があったくらいだったのが、
エンジン重量が30%以上増しとなったグリフォンでは、ここまで固定具が頑丈になったわけです。
一番手前に見えてる黒い円筒形の部品は何かのポンプのように見えますが詳細は不明。



参考までにほぼ同じ辺りのMk.XIV(14)。
スピナーが全く別物になってる(ネジ穴の位置に注意)以外は、ほぼ同じ構造に見えます。
ただし、主翼周りは先に書いたように全く別物ですが。



機銃周りとか。
上のMk.XIV(14)と比べると、銃身がやや大きく飛び出してます。

ついでに20番台スピットを見分けるのに最もわかりやすいポイント、
左側の車輪収納部のカバーも見といて下さい。

下に置かれてるのが外されたエンジン横のパネル。



機体下面、胴体中央部付近。
主翼は前縁部が直線的な構造に変更されてるのが判りますかね。
この主翼が新世代グリフォンスピットの20番台シリーズでもっとも変更された部分となってます。

従来のスピットでは、主翼の主桁は一本のみ、
すなわち主翼の重量はその一本の桁で全て支えていたのですが、
Mk.20番台の機体から主桁が2本になり、構造的に強化されてます。

ついでに戦闘機型としてはMk.VII(7)&VIII(8)以来となる主翼内燃料タンクを復活させてます。
これは航続距離延長というより、より馬力が上がったグリフォンエンジン対策でしょう。

馬力=仕事率=W(ワット)は仕事÷時間の事であり、仕事=エネルギーですから、
馬力は燃料(エネルギー)を消費する速度(消費エネルギー÷時間)をも意味します。
(全エネルギー量「10」を1秒で全て仕事に変換するなら=10÷1=10W(ワット)
2秒かけて全て仕事に変換する(つまり遅い)なら=10÷2=5W(ワット)
すなわちワット(W)=仕事率=馬力の数字が高いほうが一気に燃料を消費する。
当然、一気に仕事をしてしまうから仕事の速度も速いが)

当然といえば当然の理屈ですが、馬力が上がれば燃料消費が大きくなるのだ、という事です。
このためグリフォンスピットは極めて燃料大食いの機体になっており、
従来の燃料タンクだけでは、どうしようも無かったのでしょう。
(さらにエンジン、そして構造強化による重量増加が燃費の悪化に拍車をかけてる)

ここら辺りはデータの取り方でいろいろ数字が動いてしまうので比較は簡単ではないのですが、
一般的に流布してるデータでは(出所は間違いなくAlfred price著 SPITFIRE の第2版)
燃料最大搭載で(おそらく増槽付き)、通常運用時の航続距離は以下の通り。

初期マーリンの最終型Mk.V(5) 1135マイル 1826.6km
改良型グリフォンスピット2号のMk.XIV(14) 850マイル 1367.9km

ほぼ同じような燃料タンクの条件の両機(主翼内&胴体後部燃料タンク無し)で
25%以上の航続距離の低下が起きてますから、
その対策として搭載燃料の増加は必須だったわけです。


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