機体前半部と主翼上面。
コクピット横にある注意書きは水滴キャノピー(天蓋)を外から開ける取っ手は
反対側(機体右側)にあるよ、というもの。

ちなみに、水滴キャノピーになった後は、後方視界は十分らしく、
スピット名物のコクピット前、風防上のバックミラーが消えてます。

で、先に書いたようにこの機体から高速飛行に有利な
層流翼型の翼断面に変更されてるのですが、
主翼表面は凸凹が多く、むしろMk.XIV(14)より退化してるでしょう、これ(笑)。
機関砲のカバーパネルが浮き上がって段差になってる上に、
機関砲後部の給弾部の凸部が大型化してます。

さらにMk.VII(7)以降で消えたはずの車輪収容部、
機関砲より胴体側にある凸部が完全復活してるのも注意が要るところ。
Mk.21以降は重量増加に対向して脚の強度をあげてるんですが、
さらに車輪も大きくなってるんでしょうか?
それとも主翼を薄くした?
その奥、主翼付け根にも小さな凸部が追加されてますが、この正体は全く不明。

機関砲尾部のパネルもネジの頭が飛び出してるが見えますし、
さらに左側、弾倉部のパネルを固定してるのも頭が飛び出したネジです。
Mk.XIV(14)の綺麗な主翼表面と比べるとあまりにお粗末でしょう。

実機はキチンとしていてい、この機体の
レストアの技術がお粗末なだけ、という可能性も否定は出来ませんが、
どちらにしろ上面に大きな凸部が複数ある以上、
主翼上面の気流の流れにデリケートに反応する
層流翼の性能はあまり期待できなかったんじゃないか、という気もします。
どうもMk.20番代になって一新された主翼、必ずしも進化したとは言い切れない気が…。 

 

Mk.24最大の変更点、尾翼部。
最後のスピットファイア、Mk.24だけの改修が多く加わってる部分です。

とりあえず右のMK14と比べると舵面の前後幅が明らかに短くなってるほか、
これもMk.24だけの特徴として、方向舵面が途中で区切られていて、
その下部は胴体に固定されていて動かなくなってるようです。
(舵を固定する赤い部品の位置に注目)

さらに垂直安定版(動かない部分)の前部の角度も全く異なっており、
完全に作り直された、と言っていい変更内容です。

が、なんでこんな改修が入ったのかは全くわかりません。
垂直尾翼は、機体の中心線(尾部とプロペラ軸を結ぶ線)に対して
渦巻きのように流れてくるプロペラ後流がモロにぶつかるので、
それを嫌って小さくしたのか、という気もしますが…。

グリフォンエンジンのスピットファイアが
エンジン回転と逆、右に機首を振るクセが強烈なのは有名ですが、
この原因の一つがこのプロペラ後流による垂直尾翼への衝突だった可能性もあり、
ひょっとして、それに対応したのかなあ…。

さらに水平尾翼も延長されて長くなっており、こちらは翼面積が増大してます。
グリフォンエンジンで機首が重くなった対策でしょうか(より大きな力で尾部を動かす)
それに伴い、昇降舵(エレベータ)の形も全く別物に。

水平尾翼に関してははっきり見て取れる写真が少なく、断言はできませんが
(なにせ人気がないのだ、グリフォンスピット…)
少なくともMk.22からはこの形になっていたようです。
Mk.21も恐らくこの形だったはずですが、断言はできず。

ついでに生産された段階で最初から舵面の外皮が金属製だったのは、
どうもMk.24が最初だったようで、Mk.14などは後で近代改修されたか、
後期生産型から取りれられたか、のようです。

ただし以上で見たMk.24の特徴は、
あくまで最初からMk.24として造られた54機のみのもので、
Mk.21から改造された27機はこの特徴を持ちませんから注意。
逆に言うと、それらの改造Mk.24は既にMk.24じゃないよな、という気もします…。



ちなみにこの機体の左側の全体写真が無いのは、
この展示、博物館内の軽食堂に取り込まれる形で展示されてるから(笑)。
やっぱりグリフォンスピットはイギリスの愛が薄いなあ、と思いにけり。


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