■アラドAr234B (ブリッツ)

Arado Ar 234 (Blitz) 

ジェットエンジンによる、ものすげー高速偵察機として造られながら、
いつのまにやら爆撃機となっていたのが本機。
設計開始は1941年頃らしいから、まだドイツ絶頂期だが、
プロトタイプ完成後も、エンジンがちっとも形にならず、初飛行まで1年以上かかってる。
どっかで聞いたような話ですが(笑)、これはMe262と同じパターン、
だって同じユンカース ユモ04エンジンなんだもん。
ユモエンジンの使用優先権がメッサーシュミットにあったため、プロトタイプの初飛行がようやく1943年6月、
Me262に遅れること実に1年、さらに爆撃型量産機の生産開始が1944年6月、初出撃は8月以降だ。
だからね。
残念ながら、この機体はよく言われるように世界最初のジェットエンジン爆撃機ではない。
メッサーシュミットMe262の爆撃型の方が全てにおいて2ヶ月以上先なのだ。
Me262は戦闘機じゃん、という意見もあるだろうが、Ar234だって本来は偵察機で、
実際に偵察任務にも使用されている。
機内に爆弾収納スペースは無く、胴体下にブラ下げて飛んで行くのだから、
「爆弾つんでりゃなんでも爆撃機かよ」という突っ込みはどうしても入る。

余談だが、この飛行機をヒットラーが見た記録はない、とかつて佐貫亦男さんが書いていたが、
1943年11月に東プロイセンのInsterburgであったMe262のテスト飛行の会場に、
この機体も持ち込まれ、地上展示ながら、ヒトラーはこれを見ているようだ。
飛行展示ではなかったようだが、開発にあたって高い優先順位を与えている。
ついでに、この段階では、すでに空軍は爆撃機への転換を決定していたので、
ヒトラーはこの機体の存在をしりながら、Me262の爆撃型にこだわったことになる。
なぜか、はわからない。

■2005年7月 アメリカ ワシントン スミソニアン航空宇宙博物館別館 ウドバー ハジーセンターにて撮影

機体ナンバー140312のB-2型。現在、世界で唯一の現存機と思われる。
この機体、双発のジェット爆撃機、というからB25 のジェット版みたいなのを
想像していたのだが、実機は驚くほど小さかった。
そもそも1人乗りということを、このスミソニアン別館、ウドバー ハジーで見て初めて知った…。
爆撃機で1人乗りって…。
これ、爆撃機つーより、攻撃機だろ、というのが第一印象。
まあ、爆撃機と攻撃機の明確な線引きはよくわからないけれども。
しかし、全長12mちょっと、全幅14mちょい、すなわち双発戦闘機のP38ライトニング より小さく、
日本で言えば月光 クラスの大きさで、爆弾搭載量は1.5トン。
これを「爆撃機」と呼ぶのはさすがに抵抗がある。
まあ、爆弾搭載量については、日本人がとやかく言う権利はない気もするが…。

そもそもドイツ空軍が欲しかったのは高速偵察機だった。
偵察、であるから、敵の制圧地区をの上を飛ぶわけだ。
自分の仲間の上を飛んでたら、それはノゾキでありデバガメであり、
何やってんだ、あのアホは、ということになる。
でもって、敵軍と言うのは、ほとんどのケースにおいて底抜けのマヌケではない。
そうだったら、偵察機を飛ばす前に戦争は終わってるだろう。
だから偵察機が上を飛べば「何見てるんだ、てめえ!」と対空砲をバカスカ撃ってくるし、
敵の占領地、ということになれば制空権が相手にあることも多い。
戦闘機なんざに追いかけられたら、せっかくの情報は持ち帰る前に灰燼となる。

結果、偵察機に要求される性能は、時代の最先端のものとなるのだ。
てーさつきぃ〜?とか言ってナメてはいけない。
そこらへんの時代遅れとなった、適当なスクラップ前の機体を飛ばしときゃいいじゃん、
なんてのは無知のさいたるもんだろう。
着弾観測に毛が生えた程度の任務とはわけが違う。
そして、その偵察機の持ち帰る情報が勝敗を大きく左右するのは当然の事で、
これから行く先に敵がいるのか、いないのか、それすら知らないでは話にならぬ。

よって、敵の迎撃機を振り切ることができ、対空砲火にも簡単につかまらないほど高速なのは当然。
さらに敵陣というのは、たいていの場合、隣の家よりも駅よりもミヨちゃんの家よりずっと遠くにあるので、
十分な航続距離が要求される上、機内には大判カメラのスペースもいる。
まともな偵察機なら、カメラは複数積むのだ。
その結果、かなりシビアな機体の仕様が要求されるのである。

意外に無視されているが、1941年の段階でAr234のような偵察機を考えてたドイツ空軍は、
それなりにほめられてよいのではないだろうか。
だから、この機体は、爆撃機にした意味がMe262以上に薄い。無意味だったとすら思う。

例えば、偵察について事実上考えてなかったに等しい米軍は、実際に戦線が拡大するにつれて
戦場を見渡す「目」を持っていないことに気づき、高速で航続距離もあるP38を偵察機に改造した。
最後の方ではP47とかも偵察機に改造している。まあ、ここら辺は思い切りがいい。
英軍もどっこいどっこいで、たまたま出来た(といっても開戦後1年以上たってるが)
モスキートがそこそこの高速だったので助かったものの、計画的な開発ではない。
その後、航空機の高速化にともない、なんだか使い道のなかった
グリフォンエンジンのスピットを大量改造したり、あげくは虎の子のミーティアなどまで偵察機として投入している。

どんどん横道にそれて行くが、偵察の重要性に目覚めた米軍は、
さすがというか、ガンガンにエスカレート、アホみたいに高価なB29にまで偵察型を造ってしまい、
戦後はU2SR-71、さらには偵察衛星から無人偵察機 にいたるまで、
常に時代の最先端技術を採用して「情報収集」に力を惜しんでいない。
かつてはソ連が、最近では中国がアメリカの仮想敵となるのだろうが、
核兵器を使わない戦争なら、インテリジェンスの面で、戦う前から勝負はついているだろう。
まともな偵察システムの開発を考えていない国が、勝てる相手ではない。
ハードウェアの開発もできてない国が、その先の情報の整理、分類、分析ができるはずもなく、
「戦闘」に限っていえば、これは勝負にならないだろう。

今度は少し横から。
主翼の前縁が斜めにカットされており、これは後退翼と同じ効果を狙っているのかも。
音速レベルの高速飛行で重要な技術となる後退翼、要は空気と真正面からぶつかる翼の前縁に、
進行方向に向けて斜めの角度がついていればよいわけで、
F86のごとく翼全体が斜めになっていなくても、その効果は得られるのだ(デルタ翼なんかがそう)。
もっともAr234は角度がかなり浅いので、どの程度の効果があったのか(いや、計算すればいいのはわかってるのだけどね…)、
そもそも最高速度が750kmぐらいと言うから意味あったのか、という疑問は残りますが。
DC3等も結構な角度が主翼前縁についていますが、あれはたしか機体の重心位置の調整のためだったかと。
本機が機体の重心の調整を主翼で取った、という話はあまり見ないし、そういうイビツな翼形でもない。
また、Ar234では前進翼の実験機までつくっているので、
とりあえず衝撃波発生に対する効果を、設計陣は完全に理解した上でのカタチと思われます。



斜め前方から。
ジェットエンジンのポッド、さすがに同じエンジンだけにMe262によく似てます。
その外側にさらにエンジンみたいなのがぶら下がってますが、
あれは離着陸距離を縮めるための補助ロケット、
RAT(Rocket Assisted Takeoffの略だがboostersが最後に付くのでは?)ですね。
あのロケットでグワーっと加速させて離陸距離を縮め、離陸後はこれを切り離します。
が、高価な装置ですから、そのまま使い捨てにはできません。
これの先端についてる白い固まりはパラシュートで、
これを使って地上で回収、再利用する、というシステムでした。
近年、スペースシャトルをはじめとする宇宙ロケット打ち上げの際、補助ロケット回収に使われるのと同じやり方。
この機体、アメリカの航空関係者がテストをしてますから、もしかしたらこれがルーツかも。
機体下面に爆弾を積んでるの、わかりますかね。



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