■アラド Ar-234B (ブリッツ)

Arado Ar-234B (Blitz) 

ドイツが大戦末期に運用した双発ジェットエンジンの
一人乗り偵察機であり、戦術爆撃機でもあった機体。
今回紹介するのは戦術爆撃機型の方。

偵察機であり、かつ戦術爆撃機である、というのは
パトカー兼ダンプカーみたいなムチャクチャな組み合わせですが、
本来は純粋に高速偵察機で、
その高速性に目をつけたドイツ空軍が、
後から高速爆撃機(Schnellbomber)にしてしまったものです。



一人乗り双発ジェット機、という点では同じドイツのMe-262と同じ、
使ってるエンジンもJu-004だから、全く条件は一緒。
が、Me262とは似ても似つかないスタイルなのがこの機体で、
これは長距離偵察機としての能力が要求されたためでした。

偵察機に最新のジェット機とは贅沢だな、という気もしますが、
敵地に乗り込むわけですから、敵戦闘機の追撃を振り切る速度が無いと、
何機飛ばしても、一機も帰ってこない、という事態になりかねないのです。

Ar234は当初、イギリス海軍の本拠地、スコットランドのさらに北の海の中、
スカパフローあたりまで飛んで行って帰って来れる、
という性能が求められたため、より多くの燃料を積む必要があり、
効率よくタンクを積める四角く長細い胴体が採用されたわけです。
さらに偵察機として前方と下方の視界を確保するため、
ご覧のようなあまり他に例を見ないコクピットとなっています。

さらに横長で細めの、アスペクト比の高い主翼で航続距離を稼ぐ、
という高速化とはやや別の方向に重点が置かれた設計になってます。

ついでに、このAr-234B型では車輪が付いてますが、
最初に開発された先行試作型、Ar-234V型では
車輪をあきらめて胴体内を全て燃料タンクにしていました。

よって離陸時には台車に乗って滑走、離陸と同時に切り離し、
着陸時には胴体とエンジンポッド下の簡単なソリを使っています。
それはどういうことか、というのを日本語で言うなら、
まあ、ムチャクチャの一言でしょう(笑)。

ただし、ブレーキの無いソリの着陸対策として着陸時の減速用パラシュート、
後ろ向きに開くドラッグシュートが搭載されていました。
これは量産型でも残されて、恐らく世界初のドラッグシュート搭載軍用機の
名誉をこの機体に与えております。

が、さすがのドイツ空軍もそりゃどうか、と思ったようで
量産型のB型以降ではこういった車輪つきに改められました。
というか、胴体中心部下とジェットエンジンの下に
着陸用のソリがあったため、高速爆撃機型にする場合、
爆弾を積む場所がどこにも無くなってしまうのです。
こうしてAr-234に脚が生え、これが最初の量産型のB型となり、
ソリと台車で離着陸する予定だったA型は生産されずに終わってます。

その分、燃料タンクが減らされて航続距離が落ちてるのですが、
部隊配備が進んだ1944年の夏以降は、
もはやノルマンディーに上陸されており、イギリス本土なんか
かまってられない、という状況でしたから、
なんとかなったんでしょうかね。

最初のAr-234Vは、1943年6月に初飛行したものの、
部隊配備はかなり遅く、1944年の夏からとなっています。
それも最初に出撃したのは偵察用の試作機V型が配備された部隊で、
1944年8月2日にノルマンディ周辺の写真偵察に出撃しています。
結局、量産型のB型の配備はさらに後となり、1944年の秋以降となりました。

よってMe-262と同じように、大戦末期に登場した
ドイツのジェット機と考えて問題ありませんが、
その生産数は200機前後と見られ、
事実上、戦力になって無かったと考えていいでしょう。

でもって車輪無しの試作のV型を別にすると、
量産されたAR-234にはB型とC型しかありません。
(ただし十数機造られた試作V型をA型と呼ぶこともあるらしい)

B型はジェットエンジン2発搭載の写真のような機体、
C型はエンジン4発搭載の機体となっていますが、
こちらは極めて少数の生産に終わったようです。
ただしエンジンはそれぞれで別物で、
2発のB型は先に書いたようにJumo004(Me-262と同じ)、
4発のC型はBMWの003エンジン(He-162と同じ)を搭載しています。

…あれ、となると同じ2発エンジンの爆撃機型と偵察型の区別はどうなるの、
というところですが、両者ともにあくまでB型で、
偵察機がAr234 B-1、爆撃機がAr-234 B-2となるようです。
さらに爆撃型のB-2には緩降下爆撃用の機体と
水平爆撃用の機体があり、コクピットに搭載された
爆撃照準器が異なったようですが、詳細は不明。


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