■アメリカ側は散々だった

さて、今回からは5月8日の空母艦隊決戦の内、
アメリカ側攻撃隊の動きを見てゆきます。

ついでながら前回書き忘れたので追記を一つ。
アメリカ側は前回最後を迎えたUSSレキシントンを始めとする、
1942年の空母艦隊決戦で沈んだ4隻の空母、
USSレキシントン、USSヨークタウン、USSワスプ、USSホーネットを
後の17人姉妹(戦時中就役分)エセックス・シスターズ空母の命名で復活させてます。
(厳密にはUSSワスプはまともに戦わずに沈んでるが…)

このため1944年以降の空母機動部隊にも
USSレキシントンやUSSヨークタウンが居ます(笑)。
それどころか、21世紀に至ってもアメリカではUSSレキシントンやUSSホーネットが
保存艦として現存するんですが、これらは全て二代目、エセックス級の方です。
この辺りは、アメリカ人でも混乱してるのを見かけるので、要注意。
もっとも空母番号は完全に別物なので、
そっちを見れば判断は簡単なんですけどね。
(例えば初代USSレキシントンは空母2号、CV-2で、二代目は空母16号、CV-16)

古い艦の名を新しい世代の艦が引き継ぐ、というのは世界的に珍しくないのですが、
これだけ短期間で次々と復活させてしまったのは、あまり例がないでしょう。
日本で言ったら、新型空母の信濃に赤城、大鳳に加賀と名前を付けるようなものです。

ついでに、二代目の空母はレキシントンIIとかにすればいいのに、と思ってしまうところですが、
そもそも初代のCV-2の空母USSレキシントンも、
その名の艦としては既に4隻目(笑)だったらしいので、
今さら名前の後に数字を付けるわけにもいかなかったんでしょうか。



サンフランシスコの隣、アラメダ基地(ドゥーリトルが東京爆撃に出かけた海軍基地)に展示されてるUSSホーネット。
当然、南太平洋海戦で沈んだ初代(CV-8)ではなく、エセックス級の二代目(CV-12)の方ですが、
二代目とはいえ、USSホーネットがここに居るのはドゥーリトル繋がりでしょう。
ちなみにこの艦はアポロ11号の地球帰還時にその司令船の海上回収をした事でも知られます。




はい、話を戻しますよ。
まず、最初にもはやおなじみのこの地図を。



日本側の記録を見ると、アメリカ側攻撃隊の来襲は11:00頃からの第一次攻撃と、
11:45頃からの第二次攻撃に分かれてるのがわかります。
ただし、これは攻撃が二波に分かれて構成されていたわけでは無く、
単に後続のUSSレキシントン隊が迷子になってしまった結果です(笑)。

全機が一度艦隊上で編隊を組んでから目標に向かう日本側と違って、
アメリカの攻撃隊は発艦後、順次敵に向かいます。
その途中である程度の編隊は組むものの、母艦が違うと通常は連携しないので、
両者が編隊を組む、共同で攻撃する、というのは
少なくとも1942年の段階ではあまりやりません。
(ミッドウェイ海戦では到着時間の関係で結果的に共同攻撃に近いものとなるが)

とりあえず前日の祥鳳攻撃では、先に発艦したUSSレキシントン隊がまず到着、
その攻撃が終わるころに続いてUSSヨークタウン隊が到着する理想形になってました。
これは祥鳳を擁するMO主隊が快晴海域、しかも目印になる島から近距離に居て、
その発見が容易だったため、アメリカ側の攻撃隊に特に混乱が無かった結果です。

ところがこの8日の場合、日本側の艦隊は雲の多い、発見が困難な海域に居たため、
やや経験が浅い後続のUSSレキシントンの攻撃隊はこの発見に手間取ってしまい、
その到着は先行したUSSヨークタウン隊より大幅に遅れ、40分以上時間が開く事になります。
この結果、見かけ上(?)第二波攻撃まであったようになってますが、
実際はほぼ同時に発艦してる攻撃隊が、別々に到着しただけです(笑)。

さらに言うなら、USSレキシントン隊のSBDと、それに付いて行った戦闘機隊は
(何度か書いてるが単座の戦闘機では、何の目標もない海の上で
航法をやりながら飛ぶことはできないから必ず艦攻、艦爆と組んで飛ぶ)
そもそも目標に到着する事すらできない機体があり、
攻撃に参加することなく引き上げる事になっていたりします。

既に見たように日本側の迎撃戦闘機は
全機が上空に上がってない、という不意打ちに近い状態で
TF17攻撃隊からの空襲を受ける事になってました。
が、アメリカ側の戦闘機がそもそも数の上で劣勢の上、
このように分散してやって来たので、その対処には意外と苦労してません。
まあ、それでもその対応の遅れから翔鶴への爆撃を許してしまうんですが…。


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