■萌えは西から

さて、今回のお題はアーリントン墓地の売店からだ。
萌えと軍事のルーツについて、21世紀日本の見地から検討してみたい。

「…帰っていいですか」

まあ、聞きたまえ。
いわゆる萌え要素と軍事はどういうワケか日本では親和性が高い。
おそらく他者との優位を決定する力、暴力と屈服に対するコンプレックス、が
一種のカギなんだろうが、まあそれはいい。

「さいですか」

で、これがアメリカだと萌えというよりは、単なる世界観オタクになって、
スタートレックやスターウォーズにはまって行くわけだ。

「はあ」

実際、アメリカで名の知れた航空機研究家とかが、
自分で考えたスタートレックの小説なんかを
そのホームページに掲載してたりするのは何度か見た光景なのさ。

「で?」

が、それでも軍事と萌えを最初にくっつけたのは、
私の知る限り、1918年のアメリカ海軍なんだよ。

「なんでそう思うの?」

その証拠がこれ。
アーリントンの売店にあった復刻ポスターだ。



「左は、例のアンクル・サムだね」

そう、第一次大戦の時にアメリカ陸軍が造ったポスターだ。
が、これはあくまで陸軍の志願兵募集のポスターなのさ。

「だから?」

当時のアメリカには海軍もあるんだよ。
でもって、当然、こちらも志願兵を募集してるのさ。
こっちはアンクルサムの、お前が欲しいポスターほど有名ではないけどね。
で、ここで掲示されてる右側のがそれなんだ。

「へー。で、誰なの、この女の子」

知らん。つーか特定の個人ではないだろう。
問題はこのカワイコちゃんが、海軍の志願兵募集を象徴してる、という事実だ。
陸軍の迫り来る男色家のサムと比べ、何たる差であろう。
アメリカ海軍おそるべし、実に今を去ること100年前、1918年に
世界で最初の萌えパワーの軍事利用に踏み切ったんだ。
その最初の実戦使用例がこれだよ。

「そうかねえ…。で、なんて書いてあるの、これ?」

ちぇ、アタシが男だったら海軍に志願できたのに!
と、このカワイコちゃんが言ってるのさ、ハニーベイビー!
ひゃっほう、後はまかせな、せっかくだからオレは海軍に入るぜ、と思った、
世間知らずのイリノイ州あたりの農家の息子は星の数だったに違いない。

「どうだかねえ」

幸か不幸かこれ以降、萌えパワーの軍事利用を
アメリカ海軍はやめてしまうんだけど、
実は海軍のポスターは洒落たものが多いんだ。
陸軍との差がどこから来たのかはよくわからないけども。

「さいですか」

はい、という感じで今回はここまで。
次回からいよいよ、あのウドヴァー・ハジー センターに突入だぜ。
ひゃっほう。


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