■無限の光

MK.V(5)照準器をのぞくとこんな感じにレティクルが見えます。
ちなみに黒い丸は展示棚のガラスに書かれたもので、
照準器の一部ではありません。

このreticle とういう単語は普通の英和辞典などでは出てなかったりしますが、
ラテン語で網目状のことで、あのクモの巣のような照準円を指す言葉です。



レティクルの目盛りのどの位置に敵機が納まっているかで距離がわかり、
射程距離内で、この輪の中に納まっているなら、
撃てばほぼ確実に当たる、という事になります。
ただし旋回中など相手が直進してない場合は
進行方向から未来位置を先読みして、
敵の鼻先に弾を撃ち込まないと当たりません。
これを自動的にやってくれ、とにかくレティクルの中に敵がいる時に撃てば
ほぼ確実に命中する、というのが第二次大戦後期に登場する
ジャイロコンピューティング照準ですね。

ちなみに、なんでわざわざガラス板に反射させて使うの?
といえば人間が狭いコクピットの中で戦闘するからです(笑)。

狭いコクピットの正面に照準を置くと、人間の目はそこにピントをあわせます。
よって、遠くに見えてる敵機はボヤけてよく見えません。
逆もまたしかりで、敵機を見てると手前の照準がよく見えません。
これは目の前10cmぐらいの位置に透明なプラスチック定規を置き、
10m以上遠くのものを見るとよくわかります。
定規の目盛りと、遠くにあるもの、両者を同時にはっきり見る事は人間、
というかレンズを媒介に光を見てる限り不可能のなのです。

が、これでは精密な射撃は不可能で、どんなに遠くまで届く機関銃が登場しても、
狙いがつけられないんじゃ当たりませんから、意味がなくなってしまいます。

そこで光学王国のドイツ人が考え付いたのがこの反射式照準器でした。
これは下側にある照準を照明でガラスに反射させているのです。
透明なプラスチック定規のようにガラスに目盛りを書き込んでるのではなく、
下から光で反射させてる、のがポイント。
光像なら、レンズを使って人間の目をだますことが出来ます。

つまり、このレティクルは単純に照明で照らされてるわけではなく、
間にレンズが挟み込まれているのです。
このレンズによって光を全て平行光、
つまり遠距離からくるのと同じ状態に変換します。
この結果、遠くの敵機と、手前のガラスに映ってるレティクルは
同じ光線の状態になるため、人間の目でも両者にピントが合うのです。

上の写真でも、手前の照準器のピントがボケてるのに、
奥の展示とレティクルには完全にピントが合ってるのに注意してください。
本来なら、照準器に表示されてるレティクルも
ピンボケするはずなのです。

これがレンズで無限距離の平行光に変換した成果で、
これによってキチンとレティクルを見ながら
照準することが可能になったのでした。




こちらは、F-14唯一の自慢とも言える(笑)1981年8月にリビアのSu-22を2機、
シドラ湾上空で撃墜した時の演習地図と、F-14の活躍想像図。
地図は撃墜事件後に作られたものらしく、中央付近に、
警戒エリアから南下してリビア機を撃墜した位置まで書き込まれています。

この事件はシドラ湾周辺におけるリビアが主張する領海が広すぎて
沖合いを航行する船舶に危険を与える、としたアメリカがリビアに圧力をかけるため、
シドラ湾で艦隊演習を敢行、それにチョッカイを出してきたリビアのSu-22を
空母ニミッツ搭載のF-14が撃墜してしまったもの。

先にリビアのSu-22が手を出してきたんだよ、とアメリカは言ってますが、
リビア側のパイロットに生存者が居ないので、ここら辺りは微妙です。

ちなみに上の地図で青い範囲が演習エリアらしいのですが、
空母機動部隊はこの外にいるので、基本的には航空演習だったようです。
(1隻だけレーダー警戒任務らしい艦が枠中に入ってるが)

ついでに、よく見るとリビアの軍港にアメリカ側の潜水艦が
完全に張り付いているのが書き込まれており、
これってアメリカ海軍による領海侵入の証拠になるような気もするんですが、
誰も気にしないんですかね(笑)。



その当時のパイロットの作戦準備室。
どの空母にもこういった作戦前にパイロットへの指示と説明を行なう部屋があり、
1980年代はこんな感じの部屋だったそうです。

ちなみに、演台前にいる説明者役のパイロットが
ヘルメットまで被った上に外を向いちゃってるのが気になるところ(笑)。



なんだか唐突に飾ってあった海兵隊のトップエース、ボイントンの写真。
この人は例のフライングタイガースに所属してたり、
終戦時には捕虜として日本に居たりと、不思議な経歴を持った人でもあります。

海軍エースを差し置いて、なんで海兵隊のボイントンの紹介が…と
思ってしまいますが、これは多分、この博物館が完成した1976年から2年間に渡り、
彼の自伝を基にしたテレビドラマ、 Baa Baa Black Sheepが
アメリカでは放送され、それなりにヒットしたのが関係してるんだと思います。
(ただしドラマは、ほとんど独自のストーリー展開となっている)

ちなみにさすがアメリカ、という感じでこれはテレビドラマなのに、
飛行可能なF4Uをバンバン飛ばして撮影しており、
(この年にスターウォーズが公開される。まだ特撮という発想は無かった)
さらにトラトラトラの映画で使ったと思われる
テキサン改造ゼロ戦もイヤンてなくらい登場します。

ついでに物凄くアタマの悪そうな英語をしゃべる日本人パイロットに、
当時のアメリカ人が考える日本人像がよく出てます(笑)から
興味のある人はYoutubeなどでBaa Baa Black Sheep F4U
と検索をしてみてください。


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