■ほんとによく分からない
さて、ここからは日本軍の機関銃たちを。
実はスミソニアンは日本の機関銃コレクションが意外に充実してます。
ただし、なにせ秀才天才ぞろいの日本軍ですから、
並の人間では付いてゆけない部分があったりします。
例えば、彼らは同じような兵器に同じような名前を次々に付けて、
兵器、否、平気だったりします。
彼らは秀才天才ですから何とかなったでしょうが、
私のような凡人には非常に理解に苦しむ部分があります。
で、同じような感じらしいスミソニアンの学芸員の皆さんによる解説も、
完全に迷走しており、混乱に拍車がかかります(笑)。
今回の記事の作成にあたり、凡人なりに努力をしましたが、
恥ずかしながら結局さっぱりわからん、
というのが正直なとことで、これで戦争をやって、きっと圧勝したに違いない
日本軍の秀才天才に、今さらながら感服した次第です。
すげえぜ。
まずは下の長い銃、解説だと7.7mm八九式機関銃とだけ書かれてますが、
これは陸軍の旋回機銃、テ-4でしょう。
上に付くドラム式の弾倉が失われてるので、ちょっと判りにくいですけども。
しかしこの機関銃、対戦車ライフルのごとき長い銃身でバランス悪いだろうし、
そもそも取り回しが大変なんじゃないか、これ…。
で、この銃の正式名は例によって(笑)よくわかりませんが、
試製単銃身旋回機関銃というあたりでしょうか。
ただし、スミソニアンの解説が間違ってるわけではなく、
テ−4には八九式旋回機関銃の別名があり、
実際、展示の銃にも八九式の刻印があります。
それを元にスミソニアンはこれを八九式としてるわけです。
ところが困ったことに、日本陸軍には7.7mm八九式機関銃で溢れてるのだ、
同じ名前だらけなのだ、というのを後で見る事になります(笑)。
なんで?と聞かれれば、知りませんし理解できません、と答えます(笑)。
そもそも本来テ-4は別の7.7mm八九式機関銃の後継銃なんですよね…。
天才秀才の考えることはようわからん…。
とりあえず、これは爆撃機の旋回機銃として開発されたもので、
さらに試製の名を持ちながら正式な採用がされてます。
ただし、その年月日などはさっぱりわかりませぬ。
で、その上のが海軍の7.7mm九二式機関銃。
ザクマシンガンのようなドラム弾倉でわかる人はわかるように、
これは例のルイス機関銃のイギリス版を日本で生産したものです。
この時代にはもう空冷用(流れを調整する)カバーは付いてませんが。
さて、お次は
陸軍の12.7mm 一式機関銃 ホー103(上)
海軍の7.7mm 九七式機関銃(中)
陸軍の7.92mm 九八式機関銃(下)
一番上の12.7mm一式機関銃ホ-103は一目でわかるように
アメリカンなブローニングM-2 12.7mm機関銃の盗作です。
ライセンス生産ではなく完全な盗作のようで、しかも開戦前にやっちゃったようです(笑)。
このため、スミソニアン解説員の日本の機銃に対する心証は極めて悪く(笑)、
上で見た九二式機銃(ルイス機銃)もコピー製品として解説されてました…。
こっちは私の知る限り、ちゃんと現物を買って輸入していたはずですが。
(ただし途中から国内生産となったが、それがライセンスを買っていたかは不明)
とりあえず、このホ−103は大戦後期の陸軍戦闘機に
よく積まれていた12.7mm機関銃となります。
真ん中の海軍九七式7.7mm機関銃は
ゼロ戦の機首に積まれていた機関銃として有名なもの。
これはヴィイカース機関銃の構造をコピーしたものらしいですが、
銃身部はブローニングの.30口径のM2、あるいはM1919の盗作でしょうかね。
最後、一番下の陸軍7.92mm九八式機関銃は一目でわかるように、
すでに見たドイツのMG15のライセンス生産品です。
これはちゃんとお金を払ってるみたいですが(笑)。
ちなみに海軍も同じMG15を一式旋回機銃の名で採用してるので、
陸海軍共に7.7mmと7.92mmの航空機関銃が混在する事になります。
ここに12.7mmがさらに加わるわけで、生産性、補給の容易さを考えると、
あんまりアタマがいい展開には見えませんねえ…。
さらに7.7mmに関しては、陸海軍で規格が違い、互換性はなかったそうな。
まず奥に見えてるのが陸軍の7.7mm八九式機関銃。
さて、来たぜ八九式地獄(笑)、先に見たのと同じ名前の機関銃ですよ…。
どう見ても別の機関銃なのに。
が、これも間違いではなく、この機関銃も7.7mm八九式機関銃です。
なぜかは知りません(笑)。
ともかくこっちが先に開発、採用された旋回機関銃で、
爆撃機などの銃座に採用されていました。
で、この機関銃の不備を修正しようとしたのが
先に見たテ-4の八九式のようなのですが、
正直、何がなにやらよくわかりませぬ…。
ちなみに陸軍には、さらにもう一つ7.7mm八九式機関銃があります(涙)。
ただし、こちらは固定式となってますから、多少、判別が楽ですが…。
これは陸軍戦闘機、一式戦 隼や二式戦 鍾馗に搭載されていたもので、
普通に7.7mm八九式機関銃と聞いて思い浮かべるのはこっちでしょう。
ただし、スミソニアンではこの“固定式の八九式機関銃”のみ
展示がありませんでした…。
その手前のが海軍の爆撃機、彗星などに積まれた7.92mm一式機関銃…
とされてましたが、これは間違いです。
先に見たように“海軍の”一式機関銃はMG15の日本版ですから、
7.92mm口径とはいっても、まるで形状が異なります。
展示のものは陸軍の方の一式機関銃でしょう。
まあ、日本人ですらようわからん、という部分ですから、
ここら辺り仕方のないところだと思いますが…。
ちなみにこれは奥の八九式機関銃の後継機なので、展示の並びは
偶然かもしれませんが極めて適切になってます(笑)。
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