■裏側の事情
さて、ペロ君、世の中には裏と表がある。
「さいですか」
今回はその点を考えてみたい。
「まあ、止める理由はないけどね」
今回のお題はこれだ。
「えーと、前回来た時に見たケネディ大統領のお墓?」
正解。
注目は奥で燃えてる火だ。
前回説明したようにこれは1年365日、アメリカが滅びるその日まで、
永続的に燃やされる事になってる、象徴的な火なんだ。
「だったね。美しいシンボルじゃないの」
その点に異議はないし、このお墓の設計をした人の心意気もわかる。
「じゃあ、いいじゃん」
が、このお墓には恐るべき秘密があったんだ。
実は帰国後に写真を見て、この写真にも、
その秘密の一部が写ってたのに気がついた。
「秘密?」
この左後ろに木が見えてるよね。
「見えてるね」
その横に、何か二つの白い物体があるの、わかるかい。
「ああ、言われてみれば…何これ?」
正解はお墓を後ろから見るとわかるんだ。
これがその正体だね。
「なんだ……あ、ひょっとしてガスボンベ?」
そう、プロパンガス(LPG)のボンベなんだよ。
ここからあの火を燃やすガスが送られてるわけだ。
「むき出して置かれてるんだ…。
あまりみっともいいもんじゃないね」
このお墓、非常に凝った設計で、とても美しく整備されおり、
その中で燃える火はとても印象的だ。
が、どうもどうやって火を燃やすか、よく考えて無かったらしい(笑)。
「そうらしいなあ…。普通ボンベの収容庫を造るだろうからね」
それどころかホースもむき出しで適当に地面に置かれてるだけだ。
実は最初の写真を見てもらうと、
灯火台の後ろに、何かを隠してるようなカバーが見えるが、
それがこのホースを隠してる部分なんだ。
つまり、この灯火台、まともな配管すらされてないんだよ。
「誰も完成まで気がつかなかったのかね」
ついに完成だ、実に見事なものだ、とか言ってる時に
ところでこの灯火台、どうやって火を燃やすの?と聞かれて、
突然、関係者全員が無言で見つめ合ってしまう構図が
目に浮かぶ気がするぞ。
「当初はガスで燃やす予定ではなかったのでは?」
なるほど、その可能性もあるね。
当初はロウソクかオイルランプで行けると思ったのが、
予想以上に消えやすかったか、管理が大変だったかで、
途中からガスに切り替えられたのかも。
まあ、いずれにせよ設計ミスという点は弁解できないが。
「アメリカのこれほどの施設でも、こういった事があるんだねえ」
まあ、このお墓が造られた1960年代後半から後の1980年代にかけては
アメリカのモノづくりの質が史上最低だった時代だったからね。
例えば当時の品質管理と生産者のモラルの低下問題は
このケネディ大統領のキモイリで始まった
アポロ月着陸計画でも悲惨な結果を招く事になってる。
有名な13号の事故も最初のミスは
パーツ交換作業行程の過失による人災だし。
さらに事故に繋がらなかったら意外に知られて無いが、
その直後の14号も最後まで機器故障の連続だった。
この時はあまりのトラブルの続出に、
怒った宇宙飛行士が装置を横から叩いたら正常に動作し始めた、
という人類史上最大の精密な科学計画とは思えない事態も生じてるのさ。
「まあ、それに比べれば、
お墓の裏にガスボンベが隠してあるくらい、カワイイものなのか」
うむ、そうだと思うよ。
なんとなく、お祭りの屋台みたいで微笑ましいし。
「それはどうかなあ」
はい、という感じで今回はここまでだ。
BACK