■命を懸けた判りやすさ

さて、今回は最後のUSSニュージャージーネタの落穂拾いだ。

「さいですか」

記事中で何度か触れたように、アメリカ海軍のダメコン、
攻撃で被害を受けたときの対応は見事で、
エセックス級空母のUSSフランクリンとか、なんでそれで沈没しないの、
というようなダメージを食らいながら沈んでいない。

そんなアメリカのダメージコントロールの一貫というか、
維持管理の秘訣を見た気がするので紹介しておこう。



「これが?」

よく見てごらん、このヤヤコシイ配管の一つ一つに何の配管なのか、
キチンと説明が書き込んであるんだ。
さらにはどっちに流れるのかも矢印で示されてる。

手前から冷却水の戻り、艦内用の換気、冷却水送水のパイプで、
これが数mおきに、書き込まれてるのさ。
なので、もしここが吹き飛ばされて途中のパイプが失われても、
左右のパイプの文字を確認して、同じものを繋いでやれば応急処置は済む。
イチイチ艦内配管図を引っ張り出して来ないでも現場で対応できるわけだ。

「へー、よく考えられてるね」

いや、これは実際ちょっと感動したよ。
日常の整備点検の効率もよかったろうしね。



よってどれが何の配管かわかってしまうため、妙な事に気が付いたりする。

「妙な事?」

これ、以前に紹介した海兵隊の居住区なんだが、上のパイプに注目。
まず、左の黄色いのは燃料の配管で、その手前の太いのは蒸気の配管だ。

「それが?」

両者とも何かあった時に致命的な損害を与える配管なんだよ。
燃料の重油はそう簡単には燃えないが、それでも火災の危険は伴う。
手前の蒸気の正体が不明だが、普通の高温高圧蒸気だとすると、
これが吹き出したら大やけどは必須だし、致命傷になる可能性も高い。

「めちゃくちゃ危ないじゃん」

そんな場所に海兵隊は入れられてたんだよ(笑)。

「…嫌われてた?」

かもしれないが、万が一、人員が失われても
艦の運行に支障がない集団として、
ここに入れられていたのかもしれない。
そこら辺りは謎だね。

ついでに言うなら、この海兵隊の居住区は
船体内でもかなり上の場所で、
通常は燃料やら高温蒸気やらが通るような場所じゃないんだ。
もしかすると、この燃料は給油用で給油口から
艦艇のタンクまで繋がってたものかもしれない。
蒸気のほうは全くわからんが…



最後は艦尾にあった床屋さんの横の壁の配管。
配水関係が多いのだが、さらに柱の部分にも注目だ。

「柱?」

お客さんが座ってるイスの横の柱の上にFR190の数字があるでしょ。

「これが?」

これが戦艦の主構造の一つ、桁なんだよ。
これが艦首から艦尾に向ってあばら骨のように連なり、その構造を支えてる。
それにも全てナンバーが書き込まれてるんだ。
なので、損害を受けた時、この番号を確認するだけで、
どこが損害を受けたのかを的確に把握する事が可能だ。

「なるほど、考えられてるね」

でしょ。というわけで今回はここまで。


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