■金の出所
さて、今回のお題はこれだ。
「なんかの料金表?…って最低でも1000ドル(約10万円)ってなんだそれ」
いや、これは寄付金奉納者リストなんだよ。
日付は2010年6月になってるから3年以上前のもの。
「この戦艦を購入した費用?」
いや、この艦は軍から寄贈されたもので、お金は払ってないはずだし、
払ってもスクラップにした時の鉄屑代と同じだから、
それほどのものじゃないだろう。
そもそも2010年じゃ、ここに来てから10年近く経ってる。
おそらくこれは維持管理費の方の寄付だと思うよ。
「あれだけの入場料を取っていて?」
この手の戦艦の維持には相当な費用がかかるんだ。
ロンドンで見てきたHMSベルファストはここら辺りの費用を公開していて
一日あたりだと1000ポンド、2014年換算で17万円以上だそうだ。
年間だと6000万円を超えてしまう。
「ああ、あったね、そんな話」
戦艦だったら当然、より大きな金額がかかってるはずだ。
仮に倍近い30万円として、これを一人約2200円の入場料で賄おうとすると
1日180人近い入場者が必要だ。
今回は9月の好天の日曜日だったが、私が見学していた10〜13時半の間で
見学者は多めに見ても40〜50人だったから、
多くても1日100人前後なんじゃないかと思う。
しかもここ、冬場は閉鎖しちゃうから、より厳しいだろう。
「で、これか。最大で5万ドル(約500万円)てのもスゴイな」
正確には5万ドル以上なんだよ、それ。
ただし、さすがに個人はほとんどおらず、会社や団体ばかりだね。
「一番上のは?」
特別な友人と書かれてる部分には、
各種協会や州政府など、お金ではない貢献をしてくれた組織が載ってる。
ついでにVolunteer
corps
とあったので、一瞬、
志願兵の元乗組員たちの団体かと思ったが、
この場合は現在維持活動をしてる志願者の方のボランティアだろうね。
「なんだか日本の神社仏閣の寄進者一覧を思い出すなあ」
まあ、お金をくれた人の名前を貼り出す文化が
日本以外にもあったのだ、と驚いた部分もあったが、
同時に、なるほどここはアメリカだと思ったのがこの部分。
「これが?」
これ、両者ともフリーメイソンの団体なんだよ。
「…秘密結社からの寄進?」
いや、あれはオレたちはエリート階級だし、上層階級の仲間同志だよね、
とウヌボレたアメリカ人の友愛団体に過ぎないから、
それほどのもんじゃない。
興味深いのは上、より多額の寄進をした方の団体は、
元USSニュージャージーの乗組員だけでつくられたロッジで、
BB62にちなんで、わざわざ62番の番号を授かってるんだ(笑)。
「ロッジって何?」
前にも説明したぞ、それ。
ロッジはフリーメイソンの支部の事で、
本部から承認を受けて各地域に設立されるものだ。
ロッジというから建物を連想するけど、
基本体には団体を指すので、町内会とか氏子会みたいなものだ。
「それが二つもあるんだ」
そうなんだよね。
下のは普通にニュージャージー州のフリーメンソン組織。
ロッジナンバーがないので、各地のロッジをまとめる
事務所みたいのが州ごとにあるのかもしれない。
「USSニュージャージー乗組員はそれに属してない?」
それは私にはわからない。
が、軍、とくに士官はフリーメイソンの金脈といっていい組織で、
それこそ独立戦争時代から、
軍のエライ人たちはフリーメイソンの会員だらけだ。
いかにプライドとウヌボレが強烈な連中だらけなのか、
というのがここら辺りから想像できるだろう。
「なんか不気味だなあ」
それは考え過ぎが3/4、事実が1/4というところだろうね。
そもそも、それを言ったら歴代アメリカ大統領なんて
フリーメイソンの会員だらけなんだから、もっと怖い話になるぜ。
それでもフリーメイソンによる世界支配なんて起きてないでしょ。
あの団体は、自己利益には執着するが、
外への影響力の行使はそれほど執着しないのさ。
フリーメイソン陰謀説は、会員に入れてもらえなかった
単なる下層階級のやっかみ、という部分も少なくないだろう。
「そういうもんかね」
私も会員になった事はないので、あくまで外から見て、の話だけどね。
そして、そんなフリーメイソンのアメリカ総本山のような施設との決戦が
この翌日、現地最終日の山場の一つなるんだよ。
「そうなの」
うむ、という微妙な伏線を張ったところで、今回はここまで。
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