■戦争と娯楽

さて、今回はアメリカの政治宣伝映画、プロパガンダ映画についてだ。

「ああ、前に言ってたディズニーとか?」

まさにそれだね。
まずは、これ。



アメリカの場合、スーパーマンが戦争協力で
日本相手に戦っていたのが有名だ。
が、ディズニーの場合、白雪姫やピノキオに
ナチスや日本と戦わせるわけにもいかず、
もう少しおとなしい内容のものとなっていたんだ。

「おとないしいって…戦争協力映画で?」

何も戦うばかりが戦争じゃない。
何しろ金がかかるんだよ。
アメリカの場合、財政支出の総額に対して、1942年以降は
7割以上が軍事費であり、1945年に至っては総支出927億ドルのうち、
829億ドル、89%が戦争費用だったんだ。

「すさまじいね」

当然、税金だけでは間に合わない。
なので国民への借金、国債が大量発行されるんだ。
いわゆる戦時国債で、多くは額面の8割で購入でき、
払い戻し時に全額支払われる、というものだった。
これの購入キャンペーンに白雪姫やピノキオは投入されるんだ。

「白雪姫には似合わない気もするぜ」

だよね。
実際、上の写真のように主に活躍するのは7人の小人の方なんだ。
彼らがハイホーハイホー歌いながら戦時国債を買って行くのさ。

「それもスゴイ話だな」

さらにすごいのは、上の“7人の賢い小人”の映画、
これの前半は白雪姫のオリジナルフィルムをそのまんま流用、
画面の左右をカットして、ニュース映画用に合わせてるんだ。

「…それって」

おそらく通常のアニメよりはるかに安く出来ていたろう。
もし映画一本分の制作費を政府からもらってたら、詐欺だね(笑)。

「さすが金に困ってたディズニー…」

ちなみに、同じディズニーでも武闘派のドナルドダックなんかは
対日戦に実戦投入されてるぞ。
ただし、ディズニーキャラの特権で、弾に当たっても、
イテッ!で済ましちゃって事実上不死身だが。

「すげえな、ドナルド」

ただ彼が実戦投入されるのはかなり後期で、おそらく1943年後半くらいからだ。
それ以前は、ナチスドイツの工場で働いたり、
陸軍航空軍のキャンプに参加するもダメだしされてたりする。

ただし、どの作品も意外にキッチリとエンターテイメントしていて、
そこら辺りはさすがと言っていいよ。



「これもディズニー?」

いや、これは前に紹介したワーナーブラザーズのカートゥンの一つで、
ルーニーチューンズ(Looney tunes)だろう。

「…これ、誰よ?」

最初は我らがトージョーかと思ったんだが、
メガネもないし、出っ歯でもないので、どうもヒットラーらしい。

「似てないよ」

似てないよねえ。
まあ、ヒゲがあって、手を上げて敬礼すれば、
それがヒットラーなんだろうな。

こんな感じで、戦争中はいろんな宣伝アニメが
造られていたんだよ、というお話だ。
はい、今回はここまで。


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