■毎日2隻がノルマでヤンス

というわけで勝手気まま船と訳せなくも無い
リバティーシップ(Liberty ship)が今回のお題だ。

「さいですか」

2007年のサンフランシスコ旅行記でも書いたが、
第二次大戦中にアホみたいに量産され、
アメリカが世界中で戦争するための物流をささえたのが、
戦時輸送船、リバティーシップだ。

これは1941年の秋から終戦の1945年まで、
実に2700隻以上が建造されてる。
年間平均だと675隻、月間平均56.25隻、
一日平均1.8隻で、最盛期には1日6隻とかのペースで完成してたんだ。

「軽く狂ってるね」

全くだ。
13000トン級の貨物船の建造ペースじゃないよなあ、これ。
そもそも日本のあらゆる双発爆撃機より、
この13000トンの貨物船の方が生産数が多いんだぜ…。

ちなみに排水量トンの数字はメートル法だと思われてる事が多いが、
ヤード・ポンド法でもトンという重量単位があるから要注意だよ。
リバティーシップの場合はメートル法だと12923トンで、
アメリカ式だと(いわゆるShotr ton)14245トンになる。

基本的にアメリカ艦船の排水量トンはメートル法のトンより1割近く小さいんだ。
なので同じ質量なら、アメリカ式の方が数字が大きくなるので要注意だぜ。
戦艦大和とアメリカの戦艦を本気で(笑)比較したいなら、
キチンとこの辺りの換算をしないと、妙にトンチンカンな問答になる。
未だにここら辺りの数字は適当な日本語資料が多いのさ。

「はあ、さいですか」

ついでにイギリス戦艦のトン数もヤード・ポンド法のトン数なんだが、
こちらはイギリス式ポンドなので、誤差は1%程度にしかならない。
よってこちらは考えないでも大丈夫だろう。



で、ようやく今回のお題の展示だ。

「例によって、なによこれ」

ジャーン!リバティシップ進水カレンダーシステムー!

「はい?」

1941年の秋から1945年まで生産が続いたリバティーシップだが、
最盛期の1943年から44年にかけては、ほぼ毎日、
どこかのドックでいくつもの船が進水していたんだ。
なので、この装置で、1年365日の好きな日を選ぶと、
その日に進水したリバティーシップを教えてくれるのさ。
いわゆる日刊リバティーシップという感じだね。

「この画面がそれ?」

うむ、とりあえず夕撃旅団において最も聖なる日とされる
1月5日の記録を見てみた。

「…ナチスの結党日じゃん。…あんたもしかして…」

ここは筆者の誕生日として記憶して欲しかったなあ。
とりあず、この日に進水したリバティーシップは1942年と45年は0なんだが、
最盛期にあたる1943年には3隻、44年には6隻も進水してるんだ。

「1日6隻、13000トン級の輸送船が進水…」

こんな国と戦争しちゃダメだよねえ。

さらにはこれ、データベースにもなっていて、
艦名を指定すると、そのデータが出てくる。
画面は1944年1月5日進水のエルウッド ミード号のデータだ。
どっかで聞いた名だと思ったら、元アメリカ水利再利用局(USBR)の局長さんで、
例のラスベガス近所のフーバーダムで造られた人造湖、
ミード湖の名前の基になった人だね、この人。

で、この船は戦後まで使用されて、
1968年に日本の糸崎で解体されたとされるから、
もしかしたら日本の海運業者に売却されていたのかもしれない。

「2700隻全部に名前が付いてたんだ」

そう、驚くべき事にほぼ全て故人の人名だけで2700確保されてるんだ。
なんらかの功績があったとされる人物はかたっぱしから採用されており、
その中には女性の名前も100前後あったらしい。
女王や女神以外で、女性名がこれだけ艦艇に付けられたのは
リバティー船が最初らしいので、そういった意味でも
第二次大戦はアメリカの女性の地位向上に大きく貢献したのさ。

「2700人もよく探したね」

まあね。
ただし、例外があって、戦時国債(War bond)を200万ドル以上購入したら、
リバティー船に好きな名前を1つ、付ける権利がもらえたんだ。
この結果、生きてる本人や本人ゆかりの土地の名前がついてるのもあるらしい。

「200万ドルって、すごい金額ジャン」

1944年の消費者物価比較で2014年だと約27億円だ。
なので、実際に命名件を与えられたのは、
おそらくごく少数だったと思われるが、さすがに確認できなかった。

ちなみに、大戦中に戦死した軍人さんの名前まで使った結果、
戦後、日本で捕虜として生きてるのが確認された例もあったそうだ。

「へー」

といった感じで、今回はここまで。


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