■電気と蒸気
こちらは1920年代のキンキラ家電コレクション。
手前の三つは全てトースターです。
エジソン閣下の電球販売計画に伴って、
アメリカ社会の電化は一気にすすみ、
20世紀に入ってしばらくすると、電球だけではなく、
さまざまな電化製品が家庭に入りこむわけです。
で、こういったキンキラキンにメッキされたものは“クローム”と呼ばれ、
手前のトースターのような流線型の形状とあわせ、
1920年代の大流行となります。
このカラス並にキンキラ大好き、
という趣味は戦後、ほとんど収まるのですが、
後に黒人系の皆さんにその文化が根付いてしまって現在に至ってます。
で、その先はなぜか蒸気機関の展示となっておりました。
基本的には発電機としての蒸気機関、という括りのようでしたが。
こんな感じで19世紀から20世紀初頭にかけて開発された
発電用各種蒸気機関が展示中。
が、これをイチイチ全部紹介しても誰も興味ないと思うし、
何より私が大変なので、ここでは軽く流し、
数点だけを選んで紹介しておきます(手抜き)。
なんじゃこりゃという巨大なピストン。
1904年、ニューヨークの地下鉄用発電機に採用された
蒸気機関に使われていたものだそうな。
ちなみにこれだけ巨大でも上半分だけだったりします。
下半分は地面下に埋め込まれていて、
奥に見えてるガラスの床板からその下半分を見れました。
20世紀初頭の蒸気エンジンすげえな、という感じですが、
実は採用直後に、ピストンもクランクも要らない、
小型で高出力な蒸気タービンがアメリカにも導入されます。
イギリスの科学博物館で見たパーソンズのスチームタービンが
アメリカにもやって来たわけです。
これ、イギリスでは1890年代後半から実用化されてましたから、
どうもここら辺り、アメリカはやや遅れていたのかもしれません。
よって新車を買った翌日に新型が発表されました、みたいな感じで
ニューヨーク地下鉄は泣く泣くこれを1950年代まで使っていたそうな。
当然、アメリカ中を探してもこんな巨大で旧式機関は他に無く、
恐竜の生き残り呼ばわりされながら使われていたんだとか。
このピストンを使用した蒸気機関は1日100トンの石炭を消費して
ニューヨークの地下鉄に必要な電気を維持していたとの事。
その後、廃止になった時に、こんなの他では見れないぜ、と
ニューヨーク市の交通局からスミソニアンに寄贈されたようです。
で、こちらがピストンとクランクを捨てて、
より効率の高い蒸気エンジンとなった蒸気タービン。
展示のものは1927年のGE(ゼネラルエレクトリック)社製で、
小型ながら100馬力出たものだとか。
この時期まで来ると、現在の蒸気タービンと、
基本的な構造はほぼ同じな感じです。
ちなみに展示の表記だと
Curtis-General
Electric 社製となってましたが、
カーチス ゼネラルエレクトリック社なる名前は初めて聞きました。
帰国後にちょっと調べてみたのですが、詳細は不明です。
ここらの説明はロンドンの時にも書きましたが、
蒸気の爆発的な膨張力(水から気体になると約1800倍前後に膨張)を
使ってピストンを上下させ、これを回転運動に変換するのが、
初期の蒸気ピストンエンジン。
が、それじゃ効率悪いよね、って話で回転軸に羽根をつけて
(上でカットされた中に見えてる円盤の縁についてるもの)
これを膨張する蒸気の力で直接回してしまえ、という構造にしたのが
蒸気タービンとなります。
ついでに蒸気タービンは意外に現代にも生きてまして、
火力発電も原子力発電も、どちらも熱で蒸気を発生させて
タービンを回してる蒸気機関です。
ついでに熱を出すだけ(膨張しない)エネルギー源である
原子力で動いてる軍艦の皆さんも、水を媒介に熱を運動に変換する
蒸気タービンで回転軸とスクリューを回して動いてるわけです。
NEXT