お次はGM系の高級ブランドであるキャデラックの60スペシャル 1938年型。従来からあったシリーズ60に対し、より高級な「スペシャル」として開発されたのがこの車です。アメリカの要人専用車両としても使われる事が多い、高級車の代名詞とも言えるのが60スペシャルです。

アメリカ自動車メーカー御三家の中では最後の流線形デビューでした。ただしこちらは未だにヘッドランプは車体の外に置かれたままで、旧世代の匂いが残る設計となっていますけどね。



この60スペシャルは少しでも広い車内を実現するためにコラムシフトを初めて採用した車でもありました。さらに車体後部に大きなトランク、荷物用の空間を搭載した最初の車でもあったようです。それまでの車にはスペアタイヤくらいしか無かった自動車後部の革命的な進化でした。



ちなみに追い出されたスペアタイヤはこんな場所に。当然、反対側にも同じでっぱりがあり、左右で二つのスペアタイヤ付きです。なんでそこまでしてスペアタイヤを、と思うんですが、当時はまだ未舗装の道路も多い上にタイヤの品質も決して良くなく、パンク対策のスペアタイヤは必須の装備だったようです。

ちなみに博物館の解説板だと「シリーズ」60 スペシャルとなっていましたが、「シリーズ」が付くのは先に販売されていた60の方で、そこから差別化を計った「スペシャル」は60スペシャルであり、その名に「シリーズ」は付かないんじゃないかなあ。



なんじゃこりゃと思ったフランス車、プジョー402。初めて知りましたこの車。1935年の販売開始で(博物館の解説板にある1938年は例によって誤り。1938年以降は402Bと改名したらしいのでその点で勘違いしたか)、ヨーロッパ車として最初に流線形ボディと埋め込み式ヘッドランプを搭載した車だったそうな。

さらにそれまでは常識的な装備だった車体側面下の足掛けを排除した事でも革新的で、このおかげで車内が広くなったのです。実際、この時代の車は既に車高は十分に低いので要らないよね、と思うんですが。この点、伝統と言うか保守性と言うのは恐ろしい物で、大戦直前まであるのが普通だったんですよ、側面の足掛け。

これも車体にヘッドランプを埋め込んでいるんですが、フロントグリルの後ろに入れてしまったのは実用性としてもデザインとしてもどうかなあ、と個人的には思いますけどね。この独創的なヘッドランプと足掛けの廃止以外は先に見たクライスラーのエアフローに酷似しており、実際、これをプジョーはこれを購入分解して研究していたようです。



横から見るとエアフローの影響が強く感じられます。

この車、当時としては車体バリエーションが異常に多く、ショートホイルベースのオープンカー型もあり、かなり幅広い層を対象にした高級車だったようです。

この車も4ドアモデルは観音開き、さらに後輪カバーが付いてる当時の流行りが取り込まれています。すでにヨーロッパ車はアメリカの影響下にあったと思っていいでしょう。とっくの昔にフォードはイギリスを支配下に置いてましたし(1913年以降、売り上げとシェアで常にトップ)。


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