山道を登り切った辺りで何か気配がする。

笹薮を動く音で一瞬クマか、と警戒したのですがよく見れば鹿がそこに。キョーンと一声鳴いて逃げ去って行きました。野生の鹿を見たのは初めてでちょっと感動。そういや登山道入り口の横に鹿駆除中という表示板を貼った車が停まっていたな、と思い出す。後で調べたら近年になって尾瀬から日光一帯の鹿が増えているそうな。このため尾瀬地区では鹿の駆除を行い、令和に入ってからは年間200頭を駆除してるとか。

若いころには随分と山に入ってましたが、サル、ツキノワグマ、ライチョウ、カモシカなどは見たものの、鹿はこれが初めて。尾瀬辺りで見かけるという事は、近年になって日本中の山地で鹿は増えてるんじゃないかと思います。個人的には鹿が増えたのでは無く、かつての数に戻りつつあるのだろうと思っています。狂気の戦後の昭和時代を基準に考えて「増えた」というのは愚かでしょう。

ついでながら鹿が尾瀬の自然を破壊というのは個人的には疑問で、人間がここに入って無かった数千年、あるいは数万年の間に鹿は尾瀬とずっと付き合っていたわけです。すなわち尾瀬と人間よりよほど古い関係であり、その間にも個体数の増減はあったはずですが、尾瀬は尾瀬として今もそこにあるんですよ。この辺り、どういったデータを元に駆除してるのか判りませんが、慎重に進めるべきじゃないかなあ、と。この狭い地区で年間200頭は普通に考えたら狂気ですよ。



その後、ほぼ登りは無くなって水平移動のまま三平峠に出る。標高1762m。ここを超えれば尾瀬沼までは下り道となります。

大清水から約2時間弱の行程でした。長い事山に入って無かったのでちょっと疲れましたが、なんとかなったな、という感じ。地上付近は酷暑が続いてましたが、この高度だとかなり涼しく、その点では楽でした。ちなみに左の看板に東京電力の文字があるのは、既に説明した理由によるもの。



そこからは整備された木道で下り道に入ります。湿原に限らず、こういったカタチで登山道が整備されてるのが尾瀬らしいところ。ちなみにこの先で二度目の鹿との接近遭遇があったのですが、こちらは慌てて逃げ出し、その後ザザザッと大きな音とともに「ケーン、ケギョ、ケギョ、ケギョギョギョギョー」という悲鳴のような声が遠ざかって行きました。…崖から落ちた?なんかゴメンね。



東に向かって下って行く経路のため、朝日が樹林の向こうから差し込む、幻想的な光景の中を歩く事に。こういった風景を見るたびに、これからは真人間になろう、世のため人のために生きようと決意するんですが、現在の筆者の生き様を見れば判るように、下山する段階ではキレイさっぱり忘れてますね、はい。

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