さて、今回は大阪と裸像の話だ。

「はい?」

まずはこれ。長堀通り沿いのビルに建ってる像だ。前回の旅行記でもちょっとだけ紹介してるが、まだ健在だったのよ。



「…愛ですか」

愛だね。素っ裸のお姉さんに「愛」の一文字。大阪で愛とかヌカしてると、身ぐるみ剥がされるで、という警告だろう。

「大阪ならではの親切心?」

日本を代表する商業地区の真ん中で、素っ裸のお姉さんを愛と共にさらし者にする理由はそれ以外に見当たらないだろう。というかそんな所で手を組んでないで下を隠せよと思った。

「さいですか」



でもって11年ぶりに再会したお姉さんの向こうにさらに裸像が増えていた。もしかしたら前からあったのかも知れないが、少なくとも私は初めて気が付いた。せっかくだから、それらも紹介して置こう。

「さいですか」



こちらはサウナで砂時計をひっくり返そうと立ち上がったアポロン像だ。

「水着に着替えてる途中でロッカーの海パンを取る田中君にも見えますが」

いや、まるで別物だよ。両者は「食材の旅」と「贖罪の旅」くらい異なる。

「おっしゃってる意味が判りません」

少なくとも人間の筋肉はこんな構造になってないんだよ。よって神様であり、裸で神様である以上、ギリシャ神話だろう。

「ローマ神話でもいいじゃん」

いや、下の銘板に「ζ 啓」と書いてあるから、間違いなくギリシャ神話だよ。ゼータ啓、なんとも意味が深い含蓄に富む言葉だ。

「どういった意味?」

そりゃもちろん、全く判らん。

「さいですか」



こっちはアンドロメダ星雲からうっかり大阪に来たら身ぐるみはがされ、近くのビニールシートで下を隠してハトに愚痴をこぼす女宇宙人だ。

「おっしゃってる意味が全く理解できません」

何しろ下に書いてる文字が宇宙語であり、全く読めないから私も詳しい所はよく判らないけどね。

「さいですか」



ちなみにアメリカ村の三角公園にはこれまた身ぐるみ剥がされてウサギに愚痴をこぼす少年像がある。よほど大阪は裸が好きなんだろう。

「身ぐるみ剥がれたら、とりあず動物に愚痴をこぼすのね」

よく判らんが、どうも大阪ではそれが常識らしい。ちなみに個人的にはゲルハルト・フルチングラー像と呼んでいる。

「なんで?」

いや、なんかゲルマン系な雰囲気ないか、この子。

「なんで?」

という感じで、今回はここまでだ。

「なんで?」

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